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幸運な元親分っ

 巡礼の旅も中盤へと差し掛かった聖女様御一行、次は剣士達の憧れの地に足を踏み入れようとしていた。

 い、いいのう……! ワシも行ってみたいのう……!



「け、剣山? 華道でもするの?」


「あーら、リジーったら、剣の聖地〝剣山〟を知らないんだー」


「むっ……知らなくて何が悪い。私は元々異世界人、そういう地元ネタには疎い」


 地元ネタって……。


「いやいや、剣持ってる奴なら、誰でも知ってるぜ?」


「むぅぅ……! ど、どうせ剣の聖地だなんて言っても、剣がいっぱい突き立った山でもあると思われ?」


 何だか当てずっぽうな様子で言い放ったリジーですが。


「何だ、知ってるじゃないの」

「まあ、流石に知らないなんて事はねえわな」

「…………え?」


 当たってしまい、戸惑うリジーは少し可愛かったです。



「うわぁぁ……無限に広がる剣の墓標、本当にあるんだ……」


 墓標ではありませんわよっ。


「世界最強の流派・聖剣流の総本山がある地で、ここがその入口ですわ。突き立っている剣は修行を終えた剣士が残していった練習剣ですわね」


 ここに剣を突き立てていくと、聖剣の加護を得られるという言い伝えがあり、それが由来の風習なのです。


「知ってた……んだよな?」

「いや、知らなかった。赤く煤けた大地は近かったけど、歯車は回ってない」


 は、歯車?


「それよりリファリス」

「あ、はい」

「この剣の中に、呪われた剣はある?」

「「流石に無いでしょ」」


 リブラとモリーの声がハモります。


「いや、もしかしたら分からない。少し探してくる」


 探してくるって……ど、どこへ行きますの!?


「順路を外れてはいけませんわよ!!」

「大丈夫大丈夫、見つからないようにする」

「そういう問題では無くて……ちょっと、リジー!?」


 あっと言う間に見えなくなってしまったリジー。


「……はぁぁ……練習剣ばかりですから、呪具がある筈がありませんのに……」

「まあいいんじゃない。自由行動だって思えば」


 リジーの自由行動は後が怖いのですっ。


「さて、それじゃあ私も行ってこようかな」

「え、リブラも呪具探しですの?」

「何でそうなるのよ……聖剣流は他の流派にも寛容だから、他流試合なんかも受けてくれるのよ。それが目的で訪れる武芸者も多いわ」


 へえ……そうなんですの。


「良ければリファリスも来る?」


「わたくしが?」


「別に剣じゃなくても大丈夫だから、撲殺しまくったら?」


「あ、貴女はわたくしを何だと思っているのですか!」


「あははは、冗談よ……じゃあね、後から合流するから」


 そう言ってリブラもスタスタと先に行ってしまいました。


「…………モリー、貴女は?」


「俺か? なーんにも用事はねえな」


「そうですか……でしたら剣山でしたか、見て回りませんか?」


「別にいいぜ。ま、たまにはゆっくりのんびり観光するのもいいさ」


 そう……ですわね。今回は聖心教とも関わりが無い地ですし、わたくしには何の用事も無い場所です。


「……たまには観光して、ゆっくりのんびりしますわ」

「そうそう。たまには、な」



 意外にも何度か来た事があるらしいモリーが、案内を買って出てくれました。


「剣が突き刺さった場所から階段を上がり続けると、頂上に聖剣流の道場がある。リブラの姉御は間違い無くそっちに言ったな」


「見に行きますの?」


「まさか。あんなとこ行ったりしたら、誰彼構わず勝負を挑まれるぜ」


 そ、それは流石に願い下げですわ。


「シスター、日頃の鬱憤が溜まってるんなら」

「撲殺してストレス解消しないかって言いそうですわねっ」

「……あ、次な」


 誤魔化しましたわね?


「で、向こうが清廉の滝。水に打たれて精神統一する為の修行場だ」


「滝ですの。見に行きましょうか」

「汗臭い男達が列を作ってるけど」

「……並んでまで見たくはありませんわね」


 もう一方の道を行きます。


「で、こっちが納剣所。唯一の観光施設かな」


「納剣所って、あの剣が刺さってる場所ですの?」


「そう。聖剣流開祖が愛用していた剣が突き刺さってる岩があるのさ」


 ここが〝剣山〟で最も有名で、最も人々が訪れる場所らしいです。


「あ~……相変わらず大盛況だな」

「と言う事は、まだ抜けていないのですわね」

「あ、それは知ってるんだな」

「流石に。有名ですものね」



 う、羨ましいのう! ワシも一度試してみたいと思っていたのじゃ! 剣を握った事がある者ならば、誰もが憧れる聖剣流開祖の愛剣。我が手で引き抜いてみたいのぅ……!

 じゃが、何となくじゃ。何となくなんじゃが、シスターがアッサリと抜いてしまいそうな気がして怖いのぅ。



「ふんぬぬぬぬ……!」


「ふむ、やはり無理じゃのう」


 わ、わたくしまで並んでしまいましたが、どうしましょう。


「では次の方…………む、巡礼中のシスターですかな?」

「え? あ、はい」


 観光でしたので、いつもの法衣姿です。


「ふむ、シスターが抜く事ができますかのぅ」


「わ、わたくしは冷やかしだったのですが……」


「まあまあ、せっかく並んだのじゃ。一度試してみなされ」


 そ、そう言われるのでしたら……えいっ!


 グンッ


 あら? 何か魔力が引かれるような……?


 グンッ ググンッ


 …………はあ!


 パリィィン!


「あ」


 な、何かを壊してしまった気が……。


「ふむ、やはり抜けなんだか……では次!」

「あ、はい」


 い、今の感覚は一体……?


 ズズズッ

「なっ」

 ズボッ!

「あ、あれ?」


 あ、あら? モリーが抜いてしまいました?


「ぬ、抜けたああ!」

「聖剣が抜けたぞおおおっ!」

リファリス、やらかす。

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