女郎蜘蛛のキツネ娘っ
ドドオオオオン!
「な、何だっ!?」
「地震か!?」
「女郎長! 女郎ちょおおおおおおおおおっ!」
「何だ! 何があったんだ!?」
「た、た、大変です! ち、地下から! 地下から何か出てきやした!」
「地下からって……ま、まさか、魔物か!」
「へえ! 上半身は女、下半身は大蜘蛛の化け物でして!」
「……はあ?」
「リジー、もっと恐ろしげな表情をして」
「~~っ!!」
真っ赤なリジーは、ずっと俯いたままです。やはりバンドゥビキニでも恥ずかしかったのでしょう。
『さ、三角ビキニ!? 私に死ねと言うの!?』
『ですが、呪具ですわよ』
『………………どのような?』
『身に付けると、周りからは中が全て透けて見えてしまう呪い』
『のおおおおおおおおっ! 却下却下却下!』
『でしたら、このバンドゥビキニですわね』
『そ、それもちょっと』
『無論、呪具ですわ』
『………………どのような?』
『装着者の顔回りに常に霞がかかり、誰か分からなくなる呪いですわ』
『それにするっ!』
……というやり取りの末、どうにかビキニを着せたのですが……どうやら「呪いを無効化する」という呪剣士の特性を今頃になって思い出したようで、ビキニ姿の自分を恥入っているようなのです。
『装着主様、ファイトー!』
『装着主様、素敵ですわ!』
『装着主様、可愛いです!』
「~~っ……や、止めてぇ」
ますます縮こまるリジー。ふう、仕方ありませんわね。
「リジー、女郎長の呪具コレクションは浄化せずに貴女に進呈」
「うっしゃあ、ばっちこーい!」
……変わり身のお早い事で。
『では行きましょう! 鎧ガールズ、ふぁいっおー!』
『『『ふぁいっおー! ふぁいっおー! ふぁいっおー!』』』
ズズゥン! ズズゥン! ズズゥン!
下半身が妙に巨大な女郎蜘蛛は、地響きを立てて進み出しました。
「リジー、予定通りに!」
「あ、はい…………じょろーちょー、でてこーい。わがうらみ、はらさずしておくべきかー」
棒読み! どうしようも無いくらいに棒読み!
「リジー、もっと真に迫って下さいな!」
「え、あ、はーい。じょろーちょーは速やかに出てきなさーい」
犯人に投降を促す警備兵ですか、貴女は!
『聖女様、聖女様、あまり声が大きいと聞こえますよ』
「あ……し、失礼しました」
女郎蜘蛛の足元で指示を出していたのですが、少し声が大きかったでしょうか。
『この際ですから、聖女様が声を担当されては?』
「え、わたくし?」
『魔術で声を大きくできますよね?』
「え、ええ。できますけど……」
その後、リジーは口パクだけし。
「この花街全てを破壊しつくして差し上げ……いえ、しつくしてやるわああ!」
わたくしが声を担当する羽目になったのです。
『聖女様、もう少し悪そうなお声で』
「は、はい…………み、皆殺しにしてあげますわ!」
『全然駄目です!』
うう、どうすれば……!
「リファリス、目の前に撲殺すべき悪人が居ると思って」
リジーのアドバイスを参考に……撲殺、撲殺、撲殺…………。
「……撲殺、撲殺、撲殺…………真っ赤な花火ですわ、真っ赤な花火を咲かせてあげますわ! 女郎長の頭が派手に砕け散る様、皆様に見せてあげますわ、あははははははははははははははっ!」
『え、聖女様……?』
『キャ、キャラ変わってない……?』
「女郎長、出てきなさいな! ついでに花街全体を真っ赤に染め上げて差し上げましてよ……あははは、あははははは、あははははははははは!」
『こ、怖い……』
『封印呪具より怖い……』
「その前に、この辺り一帯を火の海で包んで差し上げますわ!」
『え、火の海!?』
『誰か、火の魔術使える!?』
『ゆ、幽霊には無理だよぉ』
「≪火炎放射≫」
ゴオオオッ!
『『『うっそおお!?』』』
ボオオオッ!
「わああ!」「きゃああ!」
『装着主様が火を吹いた!?』
『装着主様が口から火を!?』
「今ですわ! 誰も居なさそうな建物を、どんどん踏み潰してしまいなさい!」
『『『は、はい!』』』
「あっはははははははははははは!」
ズシーン! ドーン! ガシャーン!
ゴオオオッ! ボオオオッ!
「きゃああ!」「世の終わりだああ!」「世紀末だああ!」「ヒャッハー!」
……わたくし達、本物の魔物と化してますわね……。
「ひ、ひいい!」
『あ、居た! 女郎長だ!』
『今踏み潰した建物から転がり出てきた奴です!』
「リジー、程良く燃やしてしまいなさい!」
「らじゃ!」
ゴオオオッ!
炎の吐息が、女郎長らしき人物を取り囲みます。
「熱っ! く、逃げ場が……!」
今ですわ!
「鎧ガールズさん達、成敗!」
『『『はーい!』』』
女郎蜘蛛の胴体が消え、それぞれに鈍器を手にした幽霊さんが女郎長に襲いかかります!
『『『覚悟おおおお!!』』』
ボガッ!
「へぶっ!」
バギャ!
「ぐはっ!」
ボカメキグシャメコボッコンボッコン!
「ぐああああああああああああ!」
「あら、わたくしとした事が」
「どうしたの?」
「うっかりしてました。わたくし自身が撲殺する面子に入ってませんでした」
「……今から行ってきたら?」
「勿論ですわ……それと、もう一つ」
「何?」
「下半身の変身が解けていますから」
「だから、何?」
「リジー、貴女パンツ丸見えですわよ」
「うっぎゃあああああああああ!?」
この後、わたくしも撲殺をたっぷりと堪能しました。うふふ。




