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蠱毒とキツネ娘っ

 それにしても、気にはなっていたのですが……。


「何故に封印呪具の地下空間の上に、わざわざ花街を……?」


「ひゃっはー! うひゃっひーぃ!」


「女性を生け贄に望むような危険な塚の上に、女性が沢山集まる花街を開くだなんて……まるでこれは……」


「あひゃっひー! ひょっほー!」

「五月蝿くてよ。静かになさって下さいな」

「ぽおおおおおおおおおおおう!」


 わたくしの言葉が届かないみたいで、リジーの雄叫びは徐々に人外な方面へと向かっています。


「おぅほ! おぅほ!おぅほっほ! ほぅほぅほぅほぅ」

「……鎧ガールズさんでしたか。少し退避していて下さい」


 すると鎧から人魂が沢山現れて、リジーから離れていきます。それと同時に女郎蜘蛛の鎧が元の衣へと戻っていきます。


「衣でしたら可能ですわね…………ごめんあそばせ」

 きゅっきゅっ

「はあああああああああああんっ!!」


 人外の雄叫びは艶やかな悲鳴へと変わりました。


「な、な、何をするかあああ!!」


「何をするかって、貴女が五月蝿かったからですわ」


「五月蝿いって…………ああ、喜びの舞と歌の事?」


 喜びの舞!? 歌!? あんな奇妙奇天烈なのがですの!?


「どうせ地下空間だから、騒音トラブルはあり得ないと思われ」


「わたくしにはひたすら迷惑でしたわよ!」


「ごめんごめんごめんご」


 全く反省の色が見られませんわね!


「……ん? 騒音トラブル皆無?」


「それはそうでしょう。地下空間の防音性能は抜群ですわよ」


「防音……抜群………………鎧ガールズ、全員集合!」

『『『はーい!』』』


 わたくしの忠告で四方に逃げていた鎧ガールズさん達が、リジーを中心に輪になって……?


「この中で知っている者が居たら教えて。ここに女郎蜘蛛が居たの?」


『女郎蜘蛛?』

『見た事無いわね』

『私も知らなーい』


「だったら、あの封印呪具、何の為に貴女達を生け贄にしていた?」


『分かんなーい』

『存じませんな』

『…………知らぬ』


「……むぅ……なら、生け贄同士で戦わされた事は?」


『あ、それはある』

『年に何回か、急に複数で戦うように強要された』


「ふむふむふむ、ふむううう!」


 ……また人外に?


 きゅっきゅっ

「はあああああああああああんっ!!」


 再び艶やかな悲鳴をあげるリジー。良かった、戻ってきましたわね。


「だ、だから何をするかあああ!!」


「いえ、今度はふむふむ叫び出したので」


「相づち打ってただけ! 叫んでないと思われ!」


 それは失礼。


「はあ、はあ……そ、それより鎧ガールズ」

『『『はい?』』』

「全員、脱いで」


 すざざざざざざっ!


 人魂さん達、全員一気にリジーから離れていきます。


『そ、装着主様、そういう趣味!?』

『シスターの【ぴー】責めで火が点いた!?』

『わ、私、装着主様の命令とは言え……!』


「すまそ、言葉足らずだった。身体のどこかに呪印が無いかと思って」


『呪印? でしたら奇妙な痣が太ももにあります』

『私は背中かな』

『私は二の腕』


 ……呪印……?


「成る程。それは驚き轟き山椒の木」


 …………?


 きゅっきゅっ

「はあああああああああああんっ!!」


 再びリジーの艶やかな悲鳴が以下略。


「だ、だから何をするかあああ!!」

「いえ、驚き轟き山椒の木だとか、意味不明な呪文を呟きだしましたから」

「呪文じゃなああああい! お願いだから止めて!」


 失礼しました。


「はあ、はあ……おほん! で、話の続きだけど、鎧ガールズ達は蠱毒に近い呪法を試されていたと思われ」

『『『……こどく?』』』


 蠱毒ですの!?


「まさか、人間で蠱毒を再現しようとしたんですの!?」


「うい。この地下空間、あちこちに呪法の痕跡がある」


 ……言われてみれば、確かに。


「呪法の痕跡を辿っていくと、何かしらの魔方陣ができる。こんなの」


 リジーが地面に描いてくれたそれは、確かに魔方陣でした。


『え、それって……』

『私達の身体の痣と同じ……?』


「身体の痣と同じですの?」


『はい、ほら』


 人魂さんが人間の姿になり、二の腕を見せて下さいました。


「……確かに同じですわね……」


「リファリス、この魔方陣の意味は?」


「増強と増幅ですわね」


「……呪いを増強し、更に増幅させる? それって……」


 ……何となく分かってきましたわ。


「つまり蠱毒の呪法と、魔方陣の増強・増幅効果を組み合わせて」

「リファリスの封印を破ろうとしていた?」


『私達を利用してそんな事を?』

『だから私達、しょっちゅう戦わされたんだー』


 でもおかしいですわね。


「それだけの間、蠱毒の呪法が行われていたのなら、もっと呪いが強くなっていた筈ですが?」


『『『ああ、それは戦いで発散してたから』』』


 ……はい?


『私達の呪う対象は、やっぱり錆太郎だったけど』

『たまーに本気でド突き合いさせてくれたから、結構ストレス解消になっちゃって』


 ああ、成る程。蠱毒は壺に閉じ込められた毒虫達の、命を懸けた戦い。幽霊になってこれ以上滅びようが無くなった鎧ガールズ達では、そこまで深い恨みは望めないわね。


『私達、殴り合いの末に仲良くなったんだよねー♪』

『『『ねー♪』』』


 ……こういう密閉された空間に居ると、奇妙な友情が芽生えてしまうのかもしれませんわね。


『それにしても、装着主様……ないすばでー』

『お守りし甲斐があるわ』

『私、胸当てを希望するわ』

『わ、私は……やっぱり【ぴー】の辺りを』


 リジー、装備してるの危険かもしれませんわよ。

装備してると貞操の危機。これが新たな呪い?

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