恨みを晴らす鎧ガールズっ
可憐な女武者へと姿を変えたリジーは、ムラマサを封印呪具に向けます。
え? 封印呪具って一体何なのか、ですって?
それは……ええっと……リジーの士気に関わりますので、今は秘密にしておきます。
はい? 知りたい? そう駄々を捏ねられましても…………はあ。
滅殺瞬殺撲殺!
バガッ!
ふぅ……静かになりましたわ。他に何か仰りたい方は居らっしゃいます? 居ませんわね?
「リファリス?」
「あ、はい。何か?」
「いや、何かブツブツ言ってるみたいだったから」
あらやだ。
「気にしないで下さいまし。オホホホ」
「……戦うのに気になるから、できれば止めてと思われ」
分かってますわ。
『ゴゥラアアア! 儂を無視するでぬゎいわああああ!』
あら、封印呪具さんが怒ってますわ。
「ちゃんと斬り捨てるから、黙って待ってて錆太郎」
『さ、錆太郎だと!?』
封印呪具さんの見た目は錆々のリビングアーマーなのですが……確かに錆太郎……ぷっ。
『誰が錆太郎だああ!』
『錆太郎、ピッタリな名前だわ』
『錆太郎で充分よ』
『やーいやーい、錆太郎錆太郎♪』
『うっがああああ! お前達全員みじん切りにしてやるうう!』
それを聞いていたリジーは、女郎蜘蛛の鎧をパシンと叩き。
「私の指示に従って。分かった?」
『勿論よ、呪剣士様!』
『私達は貴女の下僕よ!』
『好きなように指示してね。大概は従うから』
それを聞いたリジーはニッコリ微笑んで。
「うい。ならば、貴女達は今から鎧ガールズ」
『『『はい、装着主様!』』』
鎧ガールズに……装着主様?
「じゃ、行くよ……第一陣、錆太郎に一番槍!」
『はい、光栄ですわ』
鎧から飛び出した人魂は、薙刀を持った女性へと姿を変え。
『錆太郎。積年の恨み、思い知れ』
『錆太郎では無い!』
『はあああ! ちぇい!』
ザグン!
『ごぶぁ!?』
薙刀は肩口に深々と刺さりました。
『ふふ、我が恨みはこんなものではありませんが、まだまだ鎧ガールズは居ます。ですので私はこれで終わりです……次!』
薙刀の女性が消えて、次は大鎚を持った女性が現れます。
『よくぞ私達の願いを聞いて下さいました! 私も含め、装着主様のご恩には必ず報います!』
『お、お前は、最後まで我に抗い続けた……!』
『待ちに待った今日という日、全力の一撃で応えさせて頂く! はあああ!』
ブゥン! ガィィン!
『げぎゃあ!』
脳天に直撃した大鎚により、封印呪具の身長は若干縮んだようです。
『お、おのれえええ! 好き勝手にさせてたまるかあああ!』
流石に封印呪具もやられっ放しではありません。念によって作り出した刀を振り上げ、リジーに向かってきます。
『そうはいきません!』
ジャララッ グン!
『おぅわ!?』
ビタアアアン!
しかし足に巻き付いた鎖分銅により、見事に転ばされました。
『鎧ガールズその三! 鎖鎌でお相手します』
鎖鎌とは、また扱いにくい武器を……。
『ぐ、ぬぅ! は、外せん!』
『鎧ガールズその四参上!』
『鎧ガールズその五推参!』
『よろいガールズその六ばくたんですぅ!』
『今のうちに!』
『『『はい!』』ですぅ!』
バキガキザクザクザクズバズバメキミシガギャア!!
『うごおおおおおおおおおおっ!?』
様々な武器が次々に振り下ろされます。
『最後の〆ですわ!』
鎖鎌が消えますと、最後に杖を手にした女性が現れました。
『…………錆太郎……斬』
シャキィィィン!
ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!
……カチャ
『……またつまらぬ物を斬ってしまった』
スパスパスパスパ!
『ぐはあああああああああ!?』
身体のあちこちから血を噴き出し、封印呪具は苦しみます。
ちなみにあの杖、どうやら仕込み杖だったようです。
『がは、は、はあ、はあ……』
『装着主様、私達はこれだけ殺らせて頂ければ充分です』
『後はお任せします』
「うい。ならば鎧に戻って待機」
『『『はーい!』』ですぅ!』
よ、鎧ガールズさん達、なかなかに濃い面子ですわね。
「では最後に……私、参上!」
『しゃ、洒落臭いわ! これぐらいで我に勝てるつもりかああ!』
「勝てる! 必殺≪呪われ斬≫!」
ザグンッ!
『ぐぎゃああああああああ!!』
封印呪具は半分に分かれ、左右に……。
『あああ……なんてな!』
ギシィ ガチャン!
あら? 元に戻りましたわね。
『我が身体は不滅! よって、幾ら斬られようが殴られようが、痛くも痒くも無いわ!』
「え、ええぇぇ……不滅~!?」
いくら強力な呪具であっても、不滅で意思付きでは……。
「う、う~~ん……どうしようもできないか。仕方無いと思われ」
リジーは諦めた様で、わたくしを半泣きで見て。
「リファリス、お願いしますです」
「分かりましたわ……『穢らわしき者を浄めよ』」
パアアアア……
『ぐ…………がああああああああああ!?』
封印呪具を……いえ、錆太郎を覆っていた鎧が剥がれて霧散していきます。
「以前のわたくしではありませんから、貴方を浄化するのは簡単ですわ」
パアアアア……
『うがあああああ! ち、ちくしょおおおお!』
パアアアァァァ……ジュワアアア……
『この恨み、いつの日かぁぁぁぁ…………けきゅ!』
浄化完了、ですわ。
「リファリス、ありがとう~」
「いえ。リジー達があそこまで弱らせていましたから、浄化も簡単だったのです」
それを聞いたリジー、涙目だったのに一気に喜色満面に。
「なら、私達は浄化に貢献MAXでおk?」
ま、まっくす?
「え、ええ。貢献してくれましたわ」
「だったら、コレクション浄化は回避おk!?」
ああ、そういう事ですか。
「はい。回避で構いませんわ」
「ひゃっほおおおおおおう!」
狭い地下空間に、リジーの雄叫びがこだましました。
リジー、セーフ。




