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番合体キツネ娘っ

「では周りに被害を及ばさないようにする為、地下を結界で覆います」

 ブゥン!

 パアアアア……


 聖属性の魔力が地下の壁を伝って広がっていき、一分も経たないうちにネズミ一匹逃がさない程の結界が出来上がります。


「さあ、リジー。舞台は整いましてよ」


「う、うん」


「呪具コレクションの運命、自らの手で変えてみせなさい!」


「……んん? ちょっと待ってと思われ」


 はい?


「リファリス、何故に私のコレクションが浄化される前提?」


「……? 何かおかしい事を言いまして?」


「リファリスは『呪具コレクションの運命、自らの手で変えてみせなさい!』と言った。その言い方だと、私が負けるのが必然的に聞こえる」


「そう……でしょうか?」


「そう思える。つまりリファリスは、私が負けると思ってる」


「そ、そういう訳ではありませんわ」


「リファリス……酷い」


「ほ、本当にそんなつもりはっ」


「……本当に?」


「本当ですわっ」


「だったら、私が勝った場合は、リファリスからご褒美が欲しいと思われ」


 ご褒美!?


「な、何が欲しいんですの!?」


「そうねぇ…………二人だけの熱い熱い夜のめくるめく冗談冗談お願いですからモーニングスター仕舞って」


「冗談であったとしても、八割は本気でしたわよ」


「の、残り二割に感謝を」


「では、それ以外の願いを仰って下さいね。先程と同じ系統だった場合、問答無用で撲殺対象と見做しますのでご注意を……あ、但し」


「た、但し?」


「モーニングスターか聖女の杖かは、選ばせてあげましてよ?」

「どちらもノーセンキューです!」



 術式も組み立てましたので、準備完了です。


「では、封印を解除なさって下さい」

「うん…………ムラマサよ、もういいよっ」


 リジーが刀を抜き放ちます。


 グググ……ズボッ!


「っ…………来ますわ!」


 ッ…………バシィィィ!


 くぅぅ! ふ、封印されていた間に、随分と呪いを増幅させましたわね……!


「これは……少々本気を出さないと、押さえられませんわね……!」

 パアアアア……

 ビキビキビキビキ!


『ぬっ。この小賢しい魔力は…………儂を封印しよった小娘の!』


「お久し振りですわね」


『やはりお前かああああ! 斬る! 斬る! 斬る斬る斬る斬る斬る! 斬り捨てるぅぅぅううああああっ!!』


 わたくし、相当恨まれてますわね。


「リジー、後は貴女の仕事ですわ」

「うむ、頼まれた」


 女郎蜘蛛の衣をひらめかせ、リジーが刀を構える。


『む……? その刀は……それにその衣は………………お前が我が番か?』


「…………はい?」


『そうかそうか、我が番が失われた我が刀を探し出してくれたか』


「あ、あの?」


『その意気や良し。ならば我が番よ、供物として其方を斬り殺してくれようぞ!』

「ええええええ!?」


 ……要約しますと、リジーが封印呪具の番認定され、我が刀……つまりムラマサですわね……を返してくれたお礼に、番であるリジーを斬り捨てる、という事ですか。


「つまり『番=生け贄』と言う事ですか?」


『年に一回、若い娘を番として献上するしきたりがあった。それが今回は其方だ』


 やはり生け贄ですわね。


『そして、何十年も繰り返された結果が……これよ!』


 ついに姿を現した封印呪具……と、周りを漂う幽霊達。


『恨めしいですぅ……』

『何で私が生け贄に……』

『こんな奴に……』


『見よ! これが我が番達なり!』


 番と言う割には、完全に恨まれてますわね。


「でも前回の封印の際には、貴女方を見かけませんでしたわよ?」


『だって、あの頃は』

『私達も存在が希薄で』

『実体化もできなかったから』


「今はできるのですね?」


『『『だって、貴女を恨み続けてたから』』』


 …………はい?


『貴女が私達ごと封印してくれたお陰で』

『今の今まで、あんな奴と同じ場所に居続ける羽目になって』

『ずっと欲しくもない愛を叫ばれ続けた……!』

『その果てしない恨みが、私達を体現化させる程に強くした!』


 うわああ……それは申し訳ありませんでした。


「でしたら、わたくしが引き剥がしてあげましょうか?」


『『『……え?』』』


「貴女方は封印呪具に縛られていて、離れられずにいます。でしたら違う呪具に縛り直す事により、ここから離れられますわよ」


『ほ、本当に!?』

『だったら今回の恨みは忘れてあげる!』

『あのクソ呪具から離れられるんなら、何だっていいわ!』


 でしたら、ちょうど良い呪具がそこに。


「あの娘が羽織っている『女郎蜘蛛の衣』でしたら、相性抜群ですわよ」


『女郎蜘蛛の衣!?』

『私達が生け贄にされる際に着させられた、花嫁衣装じゃない!』


 え…………花嫁衣装?


『確かにこれなら、相性抜群だわ!』

『喜んで取り憑いてあげる!』

『一緒にあのクソ呪具をぶっ飛ばしましょ!』


 ぜ、全会一致と見做しますわ。


「では……『縛られし御霊よ、新たな寄り代へと移れ』」

 パアアアア……


『ふははははは! 我が番達が、そんな簡単に我から離れる筈が』


『さようなら~』

『やっとおさらば~』

『不幸になってしまえ~』

『と言うより滅べ~』


『な、何ぃ!?』


 封印呪具の周りを飛び回っていた幽霊達は、女郎蜘蛛の衣に吸収されていき……。


 ビキビキビキビキ! バキィ!

「お、おおお!?」


『私達の力を得た衣は』

『お前の一撃を防ぐ壁となる!』

『呪いが糸を鉄に変え』

『究極の鎧となる!』


 女郎蜘蛛の衣は、鎧へと姿を変え。


『『『番の恨み、思い知れえ!』』』

 バガッ!

「あ痛!? な、何故わたくしを殴りますの!」


『『『貴女にも、多少なり恨みはあったから』』』


 そ、そうですか。

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