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十二人目と撲殺魔っ

「剣聖様、お見事でございました……ですが、ちゃんと後から話を聞かせて頂きますので」


 無論、死体は回収します。


「うん、うん。今だったら、リファリスにも勝てる気がする」


「へええ。わたくしに勝って、どうするんですの?」


「勿論、身体をギギギ」

 バチバチッ


 え、ギギギ?


「し、しまった。ちょっと無理しすぎたかな」


「どうしたんですの?」


「ど、胴体が……」

 ギギギ、ガギギギ

 バチバチッ バチン


 金属が擦れる音と、火花が散って…………あ。


「そう言えばリブラの身体、ホムンクルスでしたわね」


 初めて出会った際に襲ってきました、リブラをずっと付け狙っていたアンデッド狩りのホムンクルス。えーっと……色々ありまして、本当に色々ありまして、本来の胴体を失ったリブラは倒したホムンクルスの身体を一時的に使用しているのです。


「ギギギ……うぅ、なかなか悪くない身体(うつわ)だったんだけどなあ……」


「……修理できませんの?」


「まあ、本来のホムンクルス製作者なら、あるいは」


 錬金術士ですね。


「当てはありますから、今回の件が片付きましたら」

 バチバチンッ

「はううっ」


 ……あら?


「リブラ、貴女……」

「な、何よ」


 首筋をスーッと。


「ひゃあああああああああん!!」


 やっぱり。


「火花が散っているせいか、いつもより敏感になってますわね?」


「そ、そんな事無いぃ……ううっ」

 バチバチパチンッ


 ……うふ。


「耳とか」

「はひゃああああ!」

「脇とか」

「ふみゃああああ!」

「貴女の弱点とか」

 きゅっ

「はああああああああああん!!」

 バタッ


 刺激の連続でついに倒れ伏すリブラ。うふふ、主よ、たまには悪ふざけも良いですよね。


「さて、リブラ。一時しのぎにはなりますから、回復魔術を」

「……フフ」

「……?」

「フフフフ……ウフフフフフフフフ……」


 リブラ?


「ウフフフフ、アハハハハハハハハハ!」


「ど、どうしたんですの?」


「リファリス……」

 がしぃ

「きゃっ!? リ、リブラ?」


 こ、これは、相手に逃げられないようにする為の、格闘術の拘束技?


「リファリス……」

 ズルズルズル

「リ、リ、リブラ?」


 ギィィ

 ズルズルズル


 え、寝室?


 ギィィ ガチャ


「な、何故に鍵を?」

「何故にって、勿論……」


 リブラの目に、火花が散っているように見えるのは、気のせいでは無いでしょう。


「も、勿論……?」

「ウフフフフ、しーかーえーし♪」



 主よ……悪ふざけも大概にせよ、というお導きなのですか、この夜の痴態は……。



「…………」


「……枢機卿よ」


「ひっ!? は、はい!」


「侵入者はどうなったのだ?」


「は、はい。それが……」


「私に下手な言い訳は通用しないぞ」


「は、はい! そ、その……私以外の十二神徒で対応したのですが……」


「…………で?」


「はい、そ、その、ぜ、全滅しました」


「全滅……だと?」


「はい。申し訳ございません」


「全滅……お前は十二神徒では無いのか?」


「は?」


「お前も十二神徒であろう、と聞いている」


「は、はい。十二神徒でございます」


「では、お前も含めて、十二神徒は全滅したのか?」


「わ、私はまだ戦っておりません!」


「ならば行け」


「は?」


「聞こえなかったのか? お前も十二神徒なら、サッサと行って戦ってこい、と言っている」


「え、あ、は、はい!」


「ご自慢の十二神徒、アッサリと全滅するで無いぞ」


「む、無論でございます! 私めが十一人の分まで、しっかりと働かせて頂きます!」



「か、身体中が痛いですわ……」


「あはは、私は随分回復したよ」


 当たり前です! 【いやん】の間中、回復魔術をかけ続けたわたくしの苦労、無駄ではありませんわよ!


「いたたた……こ、腰が」


「自分で自分を回復すればいいじゃない」


「ま、魔力が残り少ないのです」


「ありゃ? 底無しの魔力を持つリファリスでも、枯渇する事があるんだ」


「前にも言いましたでしょ? アンデッドやホムンクルスを治すのは、普通の回復魔術と系統が違いますのよ」


 それに今回は「治す」と言うより「直す」方がメインでしたから……魔力の消費が激しくて……。


「でもさ、何で【いやん】中に回復魔術を?」


「…………身体が触れる面積が大きい方が、回復魔術を浸透させ易いのです」


「あ~……長い時間密着してたしね」


 それは言わないで下さい。


「…………ん?」


「どうかしましたか、リブラ」


「あ、うん…………廊下を走ってくる気配が」


 廊下を?


「もしや……枢機卿ですの?」


「そうかも。武芸を学んでる人の走り方じゃない」


「枢機卿ですか……厄介ですわね」


「強いの?」


「魔術はわたくし以上ですわ」


「魔術がリファリス以上!? それって化け物じゃない」


「はい。わたくしから見ても化け物です」


「……だけど、その化け物は、何で廊下を走り回ってるの?」


「わたくし達を探しているのでしょう」


「…………魔術の化け物なのなら、魔術で飛んだりできないの?」


「できますわ。わたくしでしたら」


「え? 魔術の化け物は?」


「魔術は魔術でも、攻撃魔術の化け物なのです」


「だ、だったら他の魔術は?」


「基本中の基本『明かり』さえ使えない筈ですわ」


「…………つまり攻撃魔術限定の化け物、つまりそれ以外はからっきし?」


「そうなりますわね」


「探査魔術も使えないのなら、不意打ちは……」


「され放題ですわね」


「「…………」」



 ジャララッ バガァン!

「うぎゃあっ」



 虐殺砦の十三人、あと一人。

ついに最後の一人。

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