六人目と撲殺魔っ
メイド姿の魔人さんも回収しておきます。
「リファリス……何で死体の回収を?」
「それは勿論、始末した証拠という意味合い……」
「……殺し屋じゃ無いんだから」
「……と、もう一つは、復活させてからのお楽しみですわ」
「……絶対にまた撲殺する為じゃない……」
「……またか……またなのか……!」
「はい…………あの者も討ち取られた様子」
「伝説にある〝勇者〟でも来ているのか……!?」
「でしたら」
「どうか」
「我々に」
「お任せ下さい」
「……〝四重葬〟か」
「相手は二人」
「ならば、我らに叶う筈無し」
「必ずや、侵入者を切り刻み」
「御前にお届け致します」
「…………」
「そして、何より」
「「「「我ら、今までの前座連中とは格が違いますので」」」」
「確かに……相手が少人数でしたら、カルテットに負ける要素はございません」
「うむ……だが、我らの最大戦力を、こうも早く投入するのか……」
「相手は五人討ち取っています」
「これ以上数が減ってしまっては、十二神徒の名に傷が付きます」
「何より、あの方に味方した意義を汚しかねません」
「どうか、我らに出撃の許可をっ」
「……ふむ……」
「私も賛成でございます」
「……お前も、か……」
「「「「どうか、我らに戦う機会を!」」」」
「…………分かった、許可する。その代わり、必ず討ち取ってくるのだぞ」
「「「「御意!」」」」
一階を探索し終えたわたくし達は、二階への階段があるダンスホールに向かっていました。
「リファリス、どうしてダンスホールに?」
「どうしてって、階段に向かってるのですわ」
「階段なら、他にもあるわよ」
「え?」
「侍従がダンスホールの階段をバタバタしてたら不自然でしょ? だから裏方用に別の階段もある筈よ」
そ、そうなんですね……言われてみれば、確かにその通りです。
「でしたら、その階段を探しましょう。わざわざ玄関近くのダンスホールまで戻る必要は無いですし」
「何より遠いしね」
「我らの戦いには」
「このダンスホールこそ相応しい」
「さあ、愚か者に死の花を手向けよう」
「我ら、四人が一輪ずつ」
「ああ、ありましたわ」
「ほらね、近くにあったでしょ?」
「ここからでしたら、ダンスホールに戻るより断然早く二階に行けますわ」
「下手に体力消耗する愚を冒さなくて良かったんじゃない?」
「ふふ、リブラのおかげですわね」
「……来ないね」
「怖じ気づいたかな?」
「慎重になってるんだろう」
「堂々と待っていればいいさ」
「……待って」
手を引かれ、柱の陰に隠れます。
「誰か来る」
……絨毯ですから足音は聞こえない筈ですのに、よく分かりますわね。
「イヒ、ヒ、ヒ……」
笑い声?
「し、侵入者、殺す、俺、俺……イヒ、イヒヒヒ、ヒヒ……」
……どうやら虐殺砦の十三人の一人……ですわね。
(どうする?)
(無論)
ジャララッ バガァン!
「ケヒッ!?」
ドチャ
(始末しておきますわ)
(は、背後から不意打ちって……)
(あら、騎士にあるまじき行為だとでも? 残念ながらわたくし、騎士ではありませんので)
(……騎士団長じゃん)
(代理ですもの、関係ございませんわ)
虐殺砦の十三人、あと七人。
「…………逃げたか?」
「我らに気付いて、恐れをなしたか?」
「まだ慎重になっているか?」
「どちらにしても、まだ待つだけだ」
「……あら?」
「どうかした?」
死体を回収していましたら、廊下を反響する声が聞こえてきました。
「向こうから……声が」
「向こう? ダンスホールだね」
ダンスホールから声が……。
「つまり、ダンスホールで待ち構えているのですわね?」
「うわぁ、ダンスホール行ってたら、まともにぶち当たってたって事か」
ですが、わたくし達は二階……つまり背後に回り込めています。
「……このチャンスを逃す手はありませんわね」
「え、まさかっ」
「はい。気付かれる前に急襲しますわ」
「……リファリスが聖女らしくないよぉ」
「…………」
「…………来ない」
「…………来ないね」
「…………どうしようか」
居ましたわ。しかも厄介な四兄弟です。
(何あれ。私も会った事が無い十二神徒だわ)
(あれは〝四重葬〟と呼ばれています、集団戦法に特化した四つ子ですわ)
(四つ子…………確かにソックリだわ)
滅多に表に出て来ない切り札の筈ですから、相手もいよいよ本気ですわね。
(……強いの?)
(わたくし一人では勝てる気がしませんわ……魔術抜きでは)
(……魔術なら無双できるのね)
(ええ)
ですが、できれば魔力は温存しておきたいです。
(…………あら)
ちょうど良い場所に、巨大なシャンデリアがありますわ。
(四人は真下…………いけますわね)
(はい?)
「……こっちから出る?」
「どうしようか?」
「どうしようか?」
「うーん……」
ジャララッ ガギン!
「「「「ん?」」」」
ギギギ……バギィ!
「「「「え…………うわああああああ!?」」」」
ガッシャアアアアアアンン!!!!
「な、何の音だ!?」
「どうやら……ダンスホールからですな」
「ダンスホールだと!? 四つ子が待機していた筈だな」
「あれだけの音に衝撃の強さ…………おそらくシャンデリアが落ちたのかと」
「シャンデリアが? ま、まさか……」
「うっわ、ペチャンコだね」
「上手くいきましたわ」
「それとリファリス、今更だけどさ、モーニングスターは投擲武器じゃないからね?」
「……わ、分かってますわ」
虐殺砦の十三人、あと三人。
一気に五人減。しかも全て不意打ち。




