お決まりの撲殺魔っ
この時のシスターの発言により、「血のスターマイン事件」と呼ばれるようになった今回の惨劇は、これで終わる事は無かったのじゃった。
「ふふふふ、楽しかった、ああ楽しかった……ふふ、うふふ」
「結局ぜーんぶ殺しちゃったのね」
「凄い血の匂いだな」
「掃除が大変そうと」
大丈夫ですわ。血の匂いも汚れも、ちゃんと綺麗にさせますから。
「では……『彷徨える魂よ、肉体に戻れ』」
パアアア……
「……ぅ……あ、あれ?」
「俺、確か鉄球が飛んできて……」
「あれ、お前、死んでなかったか?」
「そういうお前も」
「お前も」
「静まれえええっ!」
生き返ってザワザワとしだした警備兵の皆様に、突然リジーが大声で語りかけました。
「静まれ静まれ、静まれえええっ!」
「な、何なんだよ……」
「一番騒がしいの、あいつじゃねえかよ……」
そこの警備兵様、その意見に同意しますわ。
「静まれ静まれ静まれ、静まれえええええええええあ痛っ」
「五月蝿いですわよ。言いたい事があるのなら、さっさと言いなさいな!」
「あ、はい…………えいっ」
ガボッ
「きゃっ!?」
突然リジーは、わたくしの胸の谷間に手を突っ込んできて……!?
ズボンッ!
「あった。この聖女の杖が目に入らぬかぁ!」
「え、聖女の杖!?」
「た、確かにあの杖は……!」
乱れた服装を直すのに必死で、リジーを止めるどころではありません……!
「こちらに居わす方を何方と心得る! 畏れ多くも聖心教の聖女様、シスターリファリスで在らせられごぶびぁ!?」
杖を取られていたので、モーニングスターで対処。
「痛い痛い痛い! 何すんのリファリ」
ガシィ
「うぶっ!?」
「……何すんの、はわたくしの台詞ですわ」
「え、え、お、怒ってます?」
「当たり前です! 公衆の面前で胸をさらけ出されて、怒らない女性が居るとでも!?」
「あ~……一人心当たりが」
ビュン ドスゥ!
「いったああああああああい!」
な、何故か空中からナイフが……?
「ま、まあ良いですわ。それよりリジー! 何故わたくしの素性を公表したんですの!?」
「え……あ、えっと、その…………」
「その……何ですの?」
「その………………一度やってみたかったの、てへぺろ☆」
ブゥン ゴスッ!
「はみゃぶっ!?」
……脳天への衝撃と弾みで噛んだ舌の激痛でのたうち回るのでした…………天罰です。
「えー、おほん。クズ町長さんとクズ息子さん」
「ク、クズ言うな!」
「馬鹿でも阿呆でも間抜けでも、いくらでも呼称はありましてよ?」
「く……!」
「パ、パパ! あの女、這いつくばらせてよ! 町長なんでしょ!?」
「ば、馬鹿者! シスターリファリスは聖女で在らせられると同時に、ロードで自由騎士団団長で自治領領主で……と、とにかく肩書きの固まりのような御方なのだ! 儂の権力は及ばないのだ!」
「えええっ!?」
「そこまでお分かりでしたら、わたくしのお話に耳を貸して頂けますわね?」
「は、ははーっ!」
あまり肩書きを振りかざしたくは無いのですが……今回は致し方ありませんわね。
「町長さん」
「は、はい!」
「わたくしの弟子の調査によりますと、貴方は相当な悪事を働いてみえるようですわね?」
「そ、そのような事は」
「無論、証拠はありましてよ?」
「は、ははーっ!」
悪役としても二流三流ですわね。
「貴方の事はこの地方担当のロードに処分して頂きます。厳罰は覚悟なさいな」
「ぅ……お、恐れ入ってございます……」
そして。
「町長さんの愚息さん」
「ぐ、愚息じゃない!」
「もう一度言いますわ。愚息でもクズでも馬鹿でも阿呆でも間抜けでも、呼称には不自由しませんわよ」
「う……」
悔しそうに唇を噛むクズ愚息さん。観念したのでしょうか。
「貴方には数々の強制性交疑惑があります。弁明しますか?」
「ご、合意の上で」
「これもキッチリと証拠がありましてよ?」
「ぐ……パ、パパァ!!」
「ど、どうしようもできん……!」
はい、言い逃れはできませんわね。
「町長さんと違って貴方はロードに裁いてもらう間でもありません。よって」
聖女の杖…………はリジーが持ったままですわね。仕方ありません、モーニングスターで……。
「わたくしが直々に成敗致します」
「せ、成敗って!?」
「リブラに斬り殺されただけでは、まだまだ足りませんわね」
「な、何が!?」
「勿論」
ニッコリ微笑み。
「苦しみが」
「え……ひゃ、ひゃあああああ!」
「逃がしません。聖女の戒『茨』」
ぴしゅるるっ
「う、動けない……!」
こんなクズさんの頭、砕く価値もありません。
「今回は貴方の遺伝子を永遠に地上から消し去ります」
「え、何を……」
「勿論、遺伝子を消すのですから」
両足を『茨』で強引に開かせ。
「え、待って。ちょ、待ってって」
「天誅天罰滅殺抹殺必殺……」
「え、え、ええええええ!?」
「撲殺……ではありませんね…………断種!」
ブゥン ズボオオオッ!
「☆※§¶◐△〒♯♢っ!!!?」
ガラガラガラガラ
でんでんでんでん
みゅんみゅんみゅんみゅん♪
「はあ……急いで離れなければ」
「リジーがバラすから……」
「リジーの姉御……」
「だ、だって……」
「あ、居たぞ! 聖女様だ!」
「も、もう見つかりましたわ……! ベアトリーチェ、全速力で逃げますわよ!」
みゅうううん!
秋空の下を聖女様御一行、にこやかに駆けていく。まだまだ世直しの旅は続く…………はあ、本当にいつまでナレーションしなくちゃならんのじゃ。




