成敗する撲殺魔っ
後に「血の礼拝堂事件」と呼ばれた悲劇を起こした聖女様御一行、当然ながら、このままで済む筈も無かったのじゃった。
「ちゃんと生き返らせはしましたが……」
「ま、あの子供あって、似た親があり……なんじゃないかな」
わたくしとリブラとでそんな会話をしていましたら、聞き込みから戻ってきたリジーとモリーが肯定してくれました。
「心配しなくてもリブラの姉御の言う通りだったぜ」
「親、それはそれは真っ黒な経歴。当然ながら、あんな子供が育って当たり前と思われ」
「……つまり、何らかの報復は100%あると思っておいた方が」
バタバタバタッ
そんな話をしてる側から、もう異変が起きてますわね。
バァン!
「巡回説教者様、早くお逃げ下さい!」
宿屋の店主様が、息を切らせながら駆け込んでいらっしゃったのです。
「何事ですの?」
「町長が、警備兵を引き連れて、ここに向かっていますっ」
やっぱり。わたくし達を捕まえるつもりですのね。
「ご忠告ありがとうございます。ですが、わたくし達は逃げません」
「えっ」
「捕まるような事をした覚えはございません故に」
撲殺はしましたが、復活させましたから。
「……普通だったら捕まるレベルだけどうびゅ!?」
余計な事を言わないで下さいまし。
「し、しかし、町長の野郎はあんた達を裁判にかけるつもりは無さげですよ!?」
抵抗されたからやむを得ず、とか言って斬り捨てるつもりなのですね。
「大丈夫ですわ。わたくし、その方が都合が良いですから」
逆に来ると分かっているのでしたら、何とでもできます。
「都合が良いって……町長は百人近い警備兵を連れてきてるんだぞ!?」
「大丈夫大丈夫。私達も居るし」
「まあ、俺も援護くらいなら」
「私は間違い無く一騎当千」
「し、しかし」
ドドドドドド……!
「あああ!? も、もう来てしまった……!」
どうやらお馬鹿さん達が到着したようです。
「ご心配して頂き、ありがとうございます。ですが大丈夫ですので、危険が及ばないように隠れていて下さい」
「っ……あ、危なくなったら逃げなよ!」
店主様は奥へと駆けていかれました。よし、これで憂いはありません。
「では、わたくしから参りますわね」
「我が息子に危害を加えしサーキットライダー! 今すぐ出て来て、神妙に縛に就け!」
「あらあら、神妙に縛に就くのは、貴方ではありませんの?」
「何ぃ!?」
ビキニアーマー+αとモーニングスターの装備で、お馬鹿さん達の前に立ちます。
「貴方や息子さんが如何に暴虐の限りを尽くしてきたかは、町の皆様から全て聞き及んでましてよ?」
「ふん、だから何だ! 儂はこの町で一番偉いのだ! だから何をしてもいいのだ!」
「そうだそうだ!」
……これだけのお馬鹿さん、よく今まで問題にならなかったものです。
「失礼しました。お馬鹿さんと同列に並べるのは、お馬鹿さんに失礼でしたわね……おクズさんと言うべきでしたわ」
「な、クズだと!?」
「クズっ……うがああ!」
あらあら、おクズさんが怒り狂ってますわ。
「皆の者ぉ! この無礼者を斬り捨てぃ!」
シャキ! シャキシャキ!
警備兵の皆様、迷い無く剣を抜き放ちます。
「剣を持っているという事は、討死する覚悟がおありなのですね……」
うふふ、良いですわ。そうでなくては。
「つまり、全員撲殺しても構わないのですわね……あはは、あはははは、あっはははははははははは!」
ブゥン! ズズゥン!
「来なさい! 格の違いを見せて差し上げますわ!」
「か、かかれぃ!」
「「「うおおおっ!」」」
「うふふ……天誅!」
ブゥン!
「え、ひぃ!」
グシャア!
「ごぶぁ」
「一人目ぇ…………ふふ、うふふ、くふふふふふふふふ!」
「な……あ、あんなに軽々とモーニングスターを……」
「隙ありぃ、天罰!」
ブゥン! グチャ!
「ぶふぅ」
「ふーたり目。くふふふふふふふふふふふ!」
「な、何なんだ、この女……!」
「つ、強いぞ……!」
「怯むな! 取り囲んで四方から攻撃するのだ!」
「「「はっ!」」」
あら、おクズさん、案外馬鹿ではありませんわね。
「行けぇ!」
「「「やあああ!」」」
素早く包囲し、一気に距離を詰めてきます。
が。
「甘い。甘い甘い甘いですわ、滅殺!」
ビュウウン! パキャキャキャキャキャ!
「うびゅ」「ぐひゃ」「かはっ」「ぶごっ」
高速で一回転した鉄球が、警備兵の皆様の頭を弾かせていきます。
「三人四人五人……くふふふふ、あはははははははは! 真っ赤なスターマインですわ!」
「う、嘘だろ……」
「こいつ、化け物だろ……」
「あらあら、女性に対して化け物だなんて、失礼ですわよ……抹殺!」
ブゥン! ゴパァン!
「あら? 断末魔すら残せず、木っ端微塵になってしまいましたわねぇ……あはははははははははははははは!」
「ひ、ひぃ! 駄目だ、逃げろおお!」
「勝てねえよ、こんなの!」
逃げていった方々は……モリーとリジーが追いかけていきましたから、お任せしますわ。
「さぁ、残ったのはおクズさんだけですわね」
「ひ、ひぃぃ!」
真っ先に逃げていった息子さんは……あ、リブラが立ちはだかりました。
「リブラ、斬り捨てなさい」
「はいはい」
ザンッ!
「ぎぃああ!」
「さて……町長さん。貴方で最後ですわ」
「お、お前、お前は一体何なんだ!?」
「何なんだと言われましても……」
町長さんくらいは、聖女の杖でも構いませんわよね?
「わたくし、こういう者ですわ」
「そ、その杖は…………まさか、本物の!?」
「はい、その通りですわ。撲殺!」
バカァン!
「がはあ!?」
血の礼拝堂事件を軽く超える惨劇を、すぐに起こしたのじゃった。
真っ赤なスターマイン、あっはははは!




