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新たな仲間と撲殺魔っ

 どうやら上手くいったようじゃの。見ていてヒヤヒヤしたわい。

 シスターの必死の努力が実を結んだ訳じゃが……さて、まだ課題は残っておる。どうするんじゃろな。



 厳かなパイプオルガンの音が礼拝堂の中に響き渡り、空気を神聖なものへと変えていきます。


「主よ。貴方様の元へ、リブラ・リブラ侯爵夫人の魂をお返し致します。願わくば来世においても、貴方様の聖なる加護の下に在らん事を」


 黒い服で身を包まれた方々がリブラを収めた棺に歩み寄り、手向けの花を入れて行かれます。


「皆様、お別れがお済みでしたら、我が友リブラの為に、もう一度お祈り下さいませ」


 ……リブラの葬儀は滞りなく終わり、彼女は新たな輪廻へと旅立って行かれました……。



「良いお葬式でしたわ」


「良くないわよ! バレないかと思ってヒヤヒヤしてたんだから!」


 わたくしが淹れたお茶を啜りながら、リブラは悪態を吐きます。


「でもビックリ。まさかリブラがパイプオルガンを弾けるなんて」


「私だって()侯爵夫人よ。音楽の教養くらいあるわ」


 似合わない修道服に身を包んだリブラは、元侯爵夫人とは思えない行儀の悪さで、足を組むのでした。



 リブラのお葬式は終わりましたのに、リブラはここに居ます。どういう事なのか、と言いますと。


「仕方無いわ。侯爵夫人だった私は、あの公園で発見され、警備隊に死亡が確認された。公式には死んだ事になっちゃった以上、もう侯爵夫人には戻れない」


 意外とサバサバした様子で、リブラは新しい身体を自在に操り、人造の右手をヒラヒラさせました。

 結論として、リブラの頭とホムンクルスの身体は、驚く程の親和性を見せました。以前の侯爵夫人の時と、まるで変わりが無く見える程に、です。


「……あー、そろそろ身体の魔力が切れてきたわ。リファリス、ちょっと魔力補充していいかしら?」


 そう問われたわたくしは、リジーさんに視線を送ります。


「おっけー。見えなくするよ」


 リジーさんが何かゴニョゴニョと呟くと、結界のようなものがわたくし達を包み込みます。


「はい、もう見えない見えないと思われ」


「良いですわよ」


「はいはい……あー、肩凝った」


 そう言うとリブラは、自分の頭を持ち。


 ……ブチッ


 身体から外し、テーブルの上に置いたのです。


 キュイイイ……


 リブラの頭が離れたホムンクルスの身体は、首の断面から魔力を吸引し始めます。


「これこれ。これがあるから、デュラハーンは止められないのよ」


 どんどん集まる魔力を見ながら、頭だけのリブラはウットリしています。


「……魔力が流れ込むのを見て喜んでる?」

「違いますわよ。新鮮な魔力を味わうのが楽しみなのではなくて?」


 わたくしの言葉に、首だけのリブラは器用に頷きました。


「そりゃそうよ。どんな食材でも新鮮なものの方が美味しいでしょ? それと同じよ」


「熟成というカテゴリーもある」


「魔力は熟成させようが、魔力である事に変わり無いわ。だから新鮮が一番」


 ……熟成しないのでしたら、新鮮さも無いのではないでしょうか。


「……そろそろいいかな。リファリス、私の頭を戻してくれない?」


「あら、まだ離れてすぐは動かせませんの?」


 本来のデュラハーンでしたら、首が離れていても身体は自在に動かせる筈ですが。


「うん、まだ慣れてないのよ」


「分かりましたわ。ほら」


 リブラの頭を持ち上げ、身体の断面に首の断面を合わせます。


 ヒィィィン!


 磁石が引っ張り合うように首が繋がり、再び一つの身体になります。


「……ふはぁ……はい、接続終了」


「大丈夫ですの? まだ身体が慣れていないのでしょう?」


 わたくしの言葉を聞いたリブラがニヤリと笑ったのが気のせいでは無かった事は、後から思い知りましたわ。


「あ、あれえ。身体が、思い通りに、ならないなー」


 冷静に考えてみれば、異様に棒読みな喋り方だったのですが、焦っていたわたくしはそれにすら気付きませんでした。


「……落ち着いて下さい、リブラ。身体をちゃんと制御なさいませ」


 リブラは奇妙な動きをして、私に近付きます。


「リブラ、しっかりなさいな」

「あー、あー、あー」


 フラフラしながらリブラはわたくしの右腕に掴まります。豊かな双丘が押し付けられ、形を変え……あら?


「リブラ、本物みたいですわね、胸」

「この身体、創り物とは思えないくらい人間に近いのよ。このホムンクルスを創った人、天才だわね」


 そう言って胸の谷間をわたくしに見せて……一体何がしたいのでしょう?


「だけどリファリスも大きいよね」

「……わたくしは重くて邪魔なだけなのですが」


 そう言って自分のそれに視線を向けた瞬間。



 わたくしの唇に、温かな感触が交わったのです。



「……んふふ、頂きました」


 頬をほんのりと染めたリブラは、わたくしの耳元に唇を寄せ。


「リファリス、私の身体を壊した責任、ちゃんと取ってよね」


 そう呟いてから、スキップでわたくしから離れてんいきました。


「な、な、な……」


 それを見ていたリジーまで、顔を真っ赤に染めています。


「………………」


 その場で固まっていたわたくしも、顔を赤くしている自覚はありましたが……。


「…………」


 何しろ突然の事で、身体が言う事を聞きませんでした。



 おほほ、麗しき女性同士のそれも、絵になるもんじゃの。



 身体が動くようになったわたくしは。


「天誅! 天罰! 滅殺! 必殺! 撲殺!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいい!」

「わたくしの初めて! 返しなさい! 返しなさいな!」


 とりあえずリブラにお仕置きしました。



 シスターも、照れ隠しが下手じゃのう。聖心教では同性の恋愛も認めておるそうじゃから、さてさてどうなるやら。

 見ものじゃのう。

リファリスとリブラのこれからに期待なさる方は、高評価・ブクマを頂ければ、徐々に進展していく……かもしれません。

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