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変装する撲殺魔っ

 旅は道連れ、世は情け。聖女様御一行はアルターシャより南、海沿いの漁村へと足を踏み入れようとしていた。

 ……って、何でワシがこんなナレーションをしなければならんのじゃ……。



「ようやく目立たない格好になったな」


 モリーが試行錯誤を繰り返し、ビキニアーマーに改良を加えて下さった結果、「ある程度は露出しているものの、ビキニアーマーとは初見では分からない」レベルにまで達しました。


「まあ……前よりは見つからなくなったわ」


 更に回復魔術の応用で肌や髪の色を変え、度の入ってないメガネを掛け……ようやくアルターシャからの追っ手をやり過ごせるようになりました。


「見た目は旅の剣士。うん、お揃」

「ちょ、リジー! お揃いったって、見た目剣士くらいしか共通点は無いからね!?」

「うっさい見習い」

「み、見習いは見習いだけど! 弟子って面から言えば、同じ立場でしょうが!」

「私は聖騎士兼見習い~♪ リブラは単なる見習い~♪ つまり、越えられない壁がある」


 ぶちぃ


「あっそう。だったら、その越えられない壁の内側に隠れるに相応しいか、ここで試してやろうじゃないの」

 シャインッ


 リブラが大剣を抜きました。


「上等。実力の差、見せてやる」

 シュインッ


 反った刀を抜き放ち、正眼に構えて……。


 ズズズゥン!


「はい、止めて下さいね」

「「申し訳ありませんでした!」」


 わたくしの象徴的な武器であった聖女の杖の代わりとして購入した、特大のモーニングスターがクレーターを形成し、リブラとリジーの喧嘩も収まりました。


「それよりさ、呼び名も考えないとね」


 呼び名?


「だってさ、リファリスって名前も珍しいわよ?」


「……そうですの?」


「そうだなぁ……俺はシスター以外には聞いた事が無いな」

「私も。リファリス以外にリファリス知らない」


 ……むぅ……。


「じゃあ……リファの姉御でどうだ?」

「「リファ…………の姉御」」


「ああ。リファリーヌやリーファって名前なら、まだ聞いた事があるからな。略称って思われるだろ?」


「リファ……姉、とか?」


 リファ姉。


「妙にしっくりきますわね……分かりました。今日からリファ姉でお願いします」


「うい、リファ姉」

「うっしゃ、リファ姉」

「う~ん、リファ……姉か」


 あら、リブラが納得してませんわね。


「別にリファだけでも構いませんわよ?」


「う、うん。私はリファって呼ばせてもらうわ」


「なら、次は設定だな」


 設定?


「リブラの姉御と俺は修道着だから巡礼者と思われるだけだが、リファ姉とリジーの姉御はそうもいかねえ」


「……まあ……」

「確かに」


 露出度高めのわたくしと、全身真っ黒なリジー。確かに巡礼者と一緒に居るのはおかしいですわね。


「でしたら……リブラに護衛として雇われた冒険者、という立ち位置で如何でしょう?」


「冒険者? リファリ……じゃなくてリファが?」


「はい。こう見えましても、わたくしA級の資格を持っています」

 ぶぶふぅぅっ!


 ……? 何故か全員吹き出したのですが。


「リ、リファ姉A級冒険者!?」

「マ、マジかよ!?」


「ええ、ほら」


 胸の谷間(空間魔術)から冒険者証を取り出して見せます。


「……リファリス……回復魔術士……」

「ランクA……ホントだ」


「わたくし、聖女認定される前は巡回説教者(サーキットライダー)でしたの」


「あ、そうか。サーキットライダーする場合は、冒険者登録してなきゃ駄目だったっけ」

「そりゃサーキットライダーなら回復魔術士だわなー」


 ……わたくし、ゴリゴリの前衛だったのですが……。


「なら、私は?」

「わたくしが推薦すればC級から始められますわよ?」

「なら頼み込む」

「ええ、頼み込まれましたわ」


 ……こうしてわたくしとリジーは、リブラ・モリーに雇われた冒険者……という立ち位置に落ち着きました。



 こうして聖女様御一行は巡回者として身分を隠し、旅を続けるのじゃった。やがて眼下に海と漁村が見えてきた頃、重大な事案に気付いたのじゃ。



「……ベアトリーチェは……不味いですわよね?」

「「「……あ」」」

 みゅうん?


 馬車を引っ張ってくれてるのが熊。目立たない筈がありません。


「だ、だからって、今更馬を買うの?」

「その前にベア子を何とかしねえとな」

「……自然に帰す?」


 何ですって?


「わたくし、ベアトリーチェを手放すつもりは、毛頭無くってよ?」

 みゅんみゅん!


「……だけどよ、どうすんだよ。いくらリファ姉が良くったって、周りの目がなあ……」


「大丈夫ですわよ、ほら」


 わたくしが指差した先には


 ガラガラガラガラ

 にゅんにゅんにゅん♪

 ズルズルズルズル


「な……ファ、ファンシースネーク!?」

「あっちにも」


 ガラガラガラガラ

 きゅんきゅんきゅん♪

 ドテドテドテドテ


「ファンシーリザード!?


「あらぁ、そちらはファンシーベアちゃんですか?」

「ええ。ファンシースネークちゃんも可愛いですわね」

「うちのファンシーリザードちゃんも負けてませんわよ?」


 ファンシー化はどの動物にでも起きるのですわ。


「ファ、ファンシー化……恐るべし」



 こうしてベアトリーチェは、再び聖女様御一行と旅ができるようになったんじゃと。めでたし、めでたし。

 ……と言うより、何でワシがナレーションしとるんじゃ? 最近扱いがおかしくないかの?

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