禁を犯した撲殺魔っ
こうして、長年問題となっていたアルターシャの汚職事件は、無事に解決へと至ったのです。
「流石はリファリス、あっと言う間に解決しっちゃったね」
「いや、無茶苦茶な事してる割にはちゃんと理に適ってるって、正直意味分かんねえよ」
「うん、それこそがリファリス」
お望みの呪具を手に入れたらしいリジーが聖門より駆けつけたのは、昨日の事でした。
「……しかし……やはり……わたくしには修行が足りませんわ……」
「そうねえ。今回ばかりは私も何も言えないわ」
「まあ……庇えねえな。まあ、庇うつもりも無いが」
「リファリス、自らにも渇を」
分かってはいるのです、分かってはいるのですが……!
チャラララララン!
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ!
「きゃあああああ! また当たりましたわああ!」
「……まさか、接待目的で勧められたスロットで、初めての一回で大当たりを出すなんて……」
「しかもルーレットでも百発百中だぞ……」
「カードなんて信じられない。何、あの異常なまでの引きの良さは……あ、またディーラー交代した」
何故でしょうか? 交代されたばかりのディーラー様、涙目なのですが……。
「せ、聖女様! 申し訳ございませんが、出禁にさせて頂きます! これ以上は……本当に潰れてしまいます!」
「そ、そうですか、残念ですわ……」
「お、重い……!」
「ど、どんだけ入ってるんだよ、金貨……!」
「い、幾ら何でも、当てすぎと思われ……!」
どうやら相当な額を稼いでしまったようです。これも偏に主のお導きですわ…………ん?
「主の…………お導き……あ、ああああああああああっ!!」
「ど、どうしたの、リファリス!?」
「何となく想像はできるな」
「私も、と思われ」
「わたくし、禁を犯してしまいましたわああああ!」
「へ!? い、今更!?」
「やっぱりか……」
「やっぱりと思われ……」
「申し訳ございませんわたくしが愚かでした申し訳ございませんわたくしが愚かでした申し訳ございませんんん……」
「……あれから三日。まだ断食中か」
自分が賭博に嵌まりかけた事が相当ショックだったらしく、礼拝堂に籠もって断食を始めちゃったんだけど……。
「どうしたらいいのよ、この状況」
「もう解決したに等しいんだから、セントリファリスに戻るべき」
「そりゃあそうすべきなんだろうが……シスターがあの様子じゃ、な」
「申し訳ございませんわたくしが愚かでしたごめんなさいごめんなさい本当に申し訳ございませんでしたああああ」
何も飲み食いせずに三日目。それでも呪文みたいに懺悔を繰り返してるんだから、相当堪えたみたい。
「ここはリブラの姉御に任せるしか無いな」
はっ?
「な、何で私なのよ」
「確かに。私もリブラ生け贄案に賛同」
生け贄!?
「リジーの姉御から聞いたんだがよ、あんたとシスターは肌触れ合う仲なんだろ?」
っ!!!?
「精神的なショックは、そういうのがきっかけで払拭される事もあらあな」
「むぅ~……今は緊急事態故、特別に許す」
「ななな何を言ってるのよ!?」
「ストレートに言った方がいいか? 要はシスターに抱かれろって言ってんだよ」
はああああああああああ!?
「な、何でそうなるのよ!?」
「だけどなあ……食べ物はまだしも、水を飲まないってのはヤバいぜ」
「食べ物は一週間、だけど水は三日以上摂取しないと致命的」
致命的って、命の危険が!?
「背に腹は代えられないって言うだろ。どうせもう経験済みだったら減るもんじゃ無いんだから」
「サッサとヤられろ」
ま、待って待って待って! こ、こここ心の準備が!
「ほらほら」
「ほらほらほら」
「ま、待って! 押さないで!」
ギイイッ
「シスター、リブラの姉御が用事があるってよ」
「リファリス、リブラが用があると思われ」
ドンッ!
「きゃっ!」
「じゃあ、頑張ってくれ。礼拝堂からは離れてるから、安心して声を出してくれ」
「後よろ」
ギイイッバタン!
……ガコッ
「あ、あいつら、閂かけやがったわね……! こうなったら、ぶった斬ってでも」
「リブラ」
ひっ!?
「リリリリファリス!?」
い、いつの間に背後に!?
「……リブラ」
「ははははい!」
「扉をぶった斬ってはいけませんわよ」
「あ、はい」
…………あれ? リファリス、以外と普通?
「…………ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
まだ懺悔中だった!
「リ、リファリス、懺悔しながらでいいけど、聞いてくれない?」
「……何ですの?」
……とは言え……下手な慰めの言葉なんて、逆効果よね……。
「う~ん…………あ、そうだわ」
「だから、何ですの?」
「リファリス、もう懺悔止めよう」
「はい? 急に何なんですの?」
「いやね、リファリスが懺悔してる事で、結構周りにも迷惑かかってるのよ」
「迷惑……ですの?」
「そう。皆さ、水すら飲まないリファリスの体調を心配してるし」
「それは……」
「それにリファリス……臭うよ」
「はい!?」
「三日間お風呂にも入ってないんでしょ? だから体臭がそろそろ」
「いやああああ!!」
「リ、リファリス!?」
「あああ臭いだなんて臭いだなんて主にお仕えする者が臭いだなんてああああああ」
「リ、リファリス? だからってこんなとこで身体を吹かなくても」
「あああ臭いんですわ臭いんですわ聖女じゃなくて臭女ですわああああああ」
……まあ……しばらく放っておこう。




