表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

220/428

元獣王と交流する元親分っ

「よっしゃ、なら全速力で行くぜ」

 ブンッ バシィン!

 みゅううううん!?


「ベアトリーチェ!?」


 悲痛な叫び声を聞いて荷台から御者席を覗くと、そこには鞭を振り上げているモリーの姿が。


「あ、あ、貴女、ベアトリーチェに何て事を!?」

「へ? お、俺は普通に出発しようと」

「ベアトリーチェはわたくしの大切な友人ですわ! それを、鞭で叩いて馬車を引かせるだなんて……!」

「い、いや、聖門に来るまで、普通に熊公に引っ張らせてたんじゃ」

「ベアトリーチェは己の意思で自発的に引いていたんですわ!」

「ソ、ソーナンダ……」


 どうでもいい、という態度のモリーが許せません!


「リブラ、モリーを拘束して下さい!」

「えええ!? じ、自分でやればいいじゃん」

「んまあ!! リブラ、貴女までベアトリーチェ排斥派ですの!?」

「排斥派って何よ!? 三人しか居ないのに派閥もクソも無いでしょ!?」

「問答無用! 我が子も同然なベアトリーチェに手を出すのならば、リブラとて許しません!」

「待って待って待って! 聖女の杖を取り出さないで! 分かった、分かったから」


 そう言ってからリブラは、慣れない様子で魔術を使います。


「で、弟子の戒『蔦』」

 ピシュルル!


「…………蔦っつっても、アサガオのだな」


 モリーに巻き付きましたが。


 ブチブチッ

「あああ、私渾身の『蔦』がっ」

「…………まだまだですわね、リブラ」

「ううぅ……」


 ガクリとうなだれるリブラに、ベアトリーチェが寄り添い。


 みゅううん

 ポンポン


 優しく肩を叩いてあげるのでした。


「ううぅ、ベアトリーチェえええ、ごめんねえ。で、ありがとおおおっ」

 みゅううん


「ほ、本当に熊なのかよ……」


「私が悪かったわ。だからベアトリーチェ、鞭の恨みは一緒に晴らそ」

 みゅううううん!


「鞭の恨みって……ちょっと待て、何でリブラの姐さんまで武器構えてるんだよ!?」


「行くわよ、ベアトリーチェ!」

 みゅううううん!


 ああ、弟子のリブラと友熊のベアトリーチェが手を取り合って……!


「たああ!」

 ビュビュッ

「ま、待てって! マジで死ぬって!」

 みゅん

 べしぃ!

「へぶっ」


 ベアトリーチェの肉球が、モリーを脳天から叩き潰したのでした。



「……つまり鞭が無くても、俺らの言った事を理解して、勝手に進んでくれるんだな……」

「その通りです。ベアトリーチェはお利口さんですのよ」

 みゅん!


「…………普通さぁ、熊公が人間の言葉を理解するなんて、思わねえっつーの」


「説明していなかったわたくしの責任でもありますわ。許して下さいね、ベアトリーチェ」

 みゅんみゅん♪


「……まあいいや。出発すっから、ベア太郎頼むぜ」


 みゅううううん!!


「な、何だぁ?」


「モリー! ベアトリーチェは女の子ですのよ!」


「あ? あ、ああ、雌なのかよ……ならベア子でいいな」


 …………みゅん


「めっちゃ不満げだな」

「仕方無い、それで妥協する、と言ってますわ」

「熊と話せるのかよ!?」

「心と心が通じ合ってるんですわ」

 みゅんみゅん♪


「……さいですか。まあ、どうでもいいや」



 みゅんみゅんみゅんみゅん♪

 でんでんでんでん

 ガラガラガラガラ


「……普通の馬車より速えな」


「ベアトリーチェですもの」

 みゅん♪


「……理由になってねえんだが」


「モリー、リブラは中央山地を牛耳っていた熊なのよ」


「中央山地って……まさか〝獣王〟か!?」


「ええ。よく知ってましたわね、モリー」


「当たり前だ。〝獣王〟が居なかったら、あの山地はとっくに盗賊の巣窟になってるさ」


「盗賊の?」


「魔国連合との重要な通商路だからな。盗賊にとっちゃ美味しいさ」


「あー、そこに〝獣王〟なんてあだ名される熊が居たもんだから……」


「何故か盗賊ばっか襲うんだよ、この熊。だから『巨大な腕に捕まる』って意味で〝腕の王〟(アームキング)とも呼ばれていたのさ」


 成る程、そういう由来だったのですね。


「しっかし〝獣王〟をペットにしちまうなんざ、流石は聖女様だな」

「ペットではありません! 大切な友達ですわ!」

 みゅーん!

「……さいですか」



 ベアトリーチェの努力とモリーの道案内により、かなり早いペースでアルターシャに近付いています。


「言葉理解できるって便利なもんだな。分かれ道でも指図するだけで進んでくれるんだから」


「ベアトリーチェはお利口さんですから」

 みゅん!


「はいはい……そろそろ日暮れだ。野営する場所を探した方がいいな」


「近くに町はありませんの?」


「ねえな。少し前まで村があったんだが、もう誰もいねえ」


「……だったら、その村のマシそうな家を借りましょうよ」


「…………そうだな。野営するよりはずっと良い」


 リブラの意見にモリーも賛同します。無論、わたくしも反対する理由がありません。


「ではベアトリーチェ、その村へ向かって下さいな」

 みゅーん!



「…………待て、ストップだ」


 村が見えてきたところで、モリーがベアトリーチェを止めます。


 みゅん?


「ちっ、ついてねえ。シスター、どうやら盗賊が先にお邪魔してるみたいだぜ」

「あらら、先に拠点にされちゃったみたいね」


 放棄された村でしたら、盗賊さんには絶好の拠点候補になりますわね。


「……あまり争いたくありませんわ。モリー、やはり離れた場所で野営」

 みゅううううん!!

「え、ベアトリーチェ?」


 一鳴きしてから、単身で村へ突っ込んでいったのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=529740026&size=200 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ