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踏んだり蹴ったりのキツネ娘っ

「…………」


「リジー、おはようございます」


 朝、いつも通りに起きてみると、何故か呆けたまま廊下に座り込んでいるリジーを見つけました。しかもかなり危ない格好で。


「ご希望は叶いましたか?」


「…………」


「サマ様はああ見えても浄化のスペシャリストです。その甲斐あってか、大陸中の呪具が集まってきます」


「…………」


「きっと、貴女のお眼鏡に適う呪具も保有されてますわ」


「…………」


「……リジー?」


 話しかけても反応がありません。バスタオルを巻いた状態でほぼ裸ですのに、恥いる様子もありませんし。


「…………リブラ、ちょっといいですか?」

「ん?」


 ちょうど起きてきたリブラに協力してもらい、耳への対処を任せて、わたくしは胸の先端を。


「「せーの」」

 ふーっ

 きゅっ きゅっ

「はああああああああんっ!!」


 あ、反応しましたわ。


「な、な、何するかああああああ!!」


「何を言っても反応しないからですわ。で、どうでしたの?」


「どうでしたのって……何が?」


 ……わたくしの話、聞いてませんでしたの?


「何か頂いたのか、と聞いているのです」


「何かって……何が?」


 はああ、本当に何も聞いていなかったのですね。


「サマ様は大陸有数の浄化魔術の使い手です。なのでわたくし以上に、呪具をお持ちですわ」

 がしぃ

「そうだった忘れてた呪具貰えるんだった」

 タッタッタッ

「え、リジー? リジーィィ?」

 タッタッタッタッ……


 ……行ってしまいました……わね……。


「結局何だったの、あの呆けた顔」

「さあ……賢者何とか、でしょうか」

「シスター、それは男のやつだな」



 不覚。

 不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚っ。


「まさか【いやん、と思われ】に誤魔化されて、呪具を貰い忘れるだなんてっ」


 絶対に貰うっ。強力なヤツを貰うっ。いっぱい貰うっ。


 バン!

「サマー様!」


「……サマーでは無い、と言ったばかりじゃろ」


「ごめんなさい! だけど呪具くれる約束忘れてる時点で、お互いサマー!」


「ん? おお、そうじゃったの……其方に幾つかくれてやる約束じゃったの」


「くれくれくれくれ年の暮れ」


「分かった分かった……ならばもう一度」


「えっ」



「……リジー? リジー、どうしたんですの?」


「…………」


「仕方ありませんわね……えい」

 きゅっきゅっ

「はあああああああああああん!」

「あ、反応しましたわ」


 目の前には、何故かリファリスが居て。


「どうしたんですの? またバスタオル一枚の姿で呆けてるなんて」


 …………あ、ああああああっ!!


「しまったああ! またヤられたああ!」

「リ、リジー!?」


 まただ。また誤魔化された!


「もう乗せられない。誤魔化されない。初志貫徹、満願成就!」


 今度こそ我が野望を! 我が希望を! 念願の強力な呪具を手に入れるのだああ!


 バン!

「頼もおおおっ!」

「カモ~~ン」



「リジー? またですの?」


「…………」


「……えい」

 ふーっ

「ひゃはああああああああん!」


「おはようございます。どうですか、首尾は」


「…………ま、また」

「はい?」

「またヤられたあああああっ!!」


「あらあら……リジーも、ですのね」


「……リジーもって?」


「わたくしも、でしたわ」


 わたくしもって……。


「散々弄ばれたあげく、約束を反故にされかけましたわ」


 え、ええええええ!?


「ですが、何とかこの杖を手に入れたのですが」


 そう言って取り出したのは、聖女の杖。別の世界の競技で使われる「ばっと」みたいな杖だ。


「その杖、サマ様から?」


「ええ。長老樹から削りだした、特別製の杖ですわ」


 そう言ってスリスリと頬ずりするリファリス。前から思ってたんだけど、絶対に杖じゃないと思う。


「それって、杖じゃなくて棍棒じゃ?」

「杖ですわ」

「い、いや、形状から考えても棍棒」

「杖ですわ」

「……リファリス、絶対に棍棒だって」

「杖でいいんですっ」


 ……さいですか。


「っじゃなくて! リファリス、どうやってゲットしたの!?」


「……それは、どうやったら誤魔化されずに欲しいものを頂けるのか、という事で宜しくて?」


「宜しくて!」


「……そうですわね。教えてあげても良いかしら」


「是非是非是非是非是が非でも!」



 バン!

「頼もー!」

「カモ~ン」

「カモらない!」

「むっ」


 リファリスに教えてもらった事を、早速実践。


「あ、サマ様。あんなことろにナイスバディな美人さんが」

「なぬっ!?」


 リファリスの言った通り、こんな見え見えの手に引っかかった。


 スッ

「ぬっ!?」


 せーの、えい!

 きゅっ きゅっ



「【とてもR15では表現できない叫び声】ああっ!」



 ……パタンッ


 ほ、本当に一撃必倒だ。


「さあ、サマ様。もう一度ヤられたくなければ、素直に呪われアイテムを出しなさい」


「さ、触らないで、お願いだから」


 涙目で懇願されても知りません。


「背中をツーってのもありかな?」

「駄目ええええっ!」


 リファリスの言う通り、サマ様は刺激全般に弱いらしい、と思われ。



 ガッチャ ガッチャ

「うっふっふっふ」

 ガッチャ ガッチャ


「あらあら、禍々しい鎧ですわね」


「魔神の鎧、ついに手に入れた」


 んっふっふ、これなら並大抵の浄化にも耐えられる、はず。


「……試しに『浄化』」

 パアアア……

「駄目ええええっ!」


 ギュゥイイイン!


「あら? 浄化が弾かれましたわね」

「ふ……ふっふっふ! 流石は魔神の鎧! 浄化にも負けな」

 ガチャガチャン! ガランガラン

「…………あ」


 あ…………ああああああああああああ!


「ごめんなさい、リジー……つい、試したくなって」


 わ、私の苦労は何だったと思われえええええええええっ!!

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