モブリーな元親分っ
元親分さんが(無理矢理)加入してから、わたくし達の周りは少し騒がしくなりました。
「ご飯ですわよ」
「何でえ何でえ、こんな精進料理で我慢しろってのか!?」
「シスターですので」
「あ、成る程……つーか、俺はシスターじゃ無いだろ!?」
「立ち位置は微妙ですわね」
「だろっ!?」
「つまり、同行者かどうかも怪しい次第ですわ」
「…………あ、ありがたく頂きます」
と言うように、見た目は美少女の割にこの口調ですので、いろいろと新鮮と言いますか、楽しみと言いますか。
「こらこら、元親分。リファリスを困らせちゃ駄目よ」
「べ、別に困らせてねえよ。ただ言いたい事を言ってるだけで」
ニコニコと笑いながら近付くリブラに、ジリジリと後退りする元親分さん。少し前の採寸後、どうもリブラとリジーから距離を置いているような……?
「んふふふ……ちゃんとあのブラを着けたのかなー?」
「ぶふぁ!? な、何を言いやがる!?」
「あらあ、まさか着けてないのかしらー♪」
真っ赤になってたじろぐ元親分さん。うふふ、反応が見ていて飽きませんわ。
「つつつ着けてるよ!」
「なら、確かめてみようそうしよう」
ぎゅむっ
「ひゃはああん!? リ、リジー!?」
「この感触……着けていないと思われ」
「あらああ? まさか、まだ着け方が分かってないのかしら?」
「ち、違う! 着け方はちゃんと」
「ちゃんと着けるのが約束だったよね?」
「うぐっ」
リブラとリジーがニコリ……いえ、ニヤリと笑い。
「仕方無いなあ、また実践ね、実践♪」
「ななななちょっと待ってくれ!」
「リブラがお手本を見せてくれるそうだから、しっかり見ておくように」
「え、また私? 今度はリジーが見せてあげなさいよ」
「…………嫌」
「別に同性なんだから、躊躇する必要無いでしょ?」
「待って。これ、中身男」
「確かに中身男だが、自分もこんな身体になった以上、別に何とも思わねえよ!!」
うふふ、賑やかですわね。
「ふぅ~ん……何とも思わねえ、ねえ……」
リブラはニヤニヤしたまま、元親分さんににじり寄り。
「その言葉、二言は無いわね?」
「な、何がだよ!?」
「何とも思わねえっての」
「あ、ああ。二言はねえ」
そのままわたくしに向き直り。
「だったらさ、今度はリファリスが教えてあげてよ」
「何をです?」
「お・ん・な・の・ひ・み・つ♪」
……はい?
「下着の着け方が、何故に女の秘密なのでしょうか……」
ちょうど水浴びしたいと思ってましたので、効率を考えて引き受けさせて頂きました。
『え……じょ、冗談だよ、冗談』
『リファリス、嫌な事はしなくていいと思われ』
『え? 同性なのですから、何か問題ありますか?』
……何故かリブラとリジーが慌てていましたが……どうしたのでしょう。
「まままままま待ってくれシスター! いくら何でも」
「あら、下着の着け方を知る為には、実際に着けるところを見るしかありませんわよ」
そう言いつつ法衣を脱ぎ、一旦胸の谷間に収納します。
「あひゃあ!?」
元親分さん、真っ赤になって向こうを向いてしまいました。
「いけませんわ。貴女はこれから女性として生きていくのですから、こういう状況も普通にあり得るのですよ」
「ひゃ、ひゃい!?」
「つまり、慣れなさい」
そう言って『茨』を発動させ。
ピシュルッ
「ひゃええ!?」
物理的強制的にこちらを向かせます。
「良いですか? 下はただ履くだけですから、難しくありませんわ」
「くるけえええ!?」
「但し、上はそう言う訳には参りません」
「きゃぴいいい!?」
「こう、寄せて、入れて……ちゃんと見てますの?」
「けるぴいいい!?」
「何なんですの、その意味不明な叫び声は?」
プチン ぶるんっ
「は、は、はぎゃふぃいいい!!」
ブシュウウウウ!!
あ、あら? 鼻血の噴水?
……チャプン
「し、死ぬかと思ったぜ……」
「申し訳ありませんでした。元盗賊という来歴を鑑みて、女性の身体は見慣れているものとばかり」
「お、俺は女を手込めにするようなゲスじゃねえ!」
「……どちらかと言えば、女性の免疫が無い方ですわね?」
「うるっせええっ!!」
あらあら、意外と純情だったのですね。
「それにしても出血多量で死にかけるくらい鼻血噴くだなんて、やっぱりリファリスのは強烈なのね」
「……それは否定しない」
「私の見ても、顔赤くなる程度だったのに…………微妙に複雑」
「それは……まあ……気持ちの問題って言うか……」
「「あ~……」」
何を納得し合ってるんですの?
「そうだ、リファリス。こいつも弟子にするんだよね?」
「ええ。出自が特殊すぎますから、まずはわたくしが面倒を見ますわ」
「だったらさ、名前はどうするの?」
「名前……」
元親分さんに視線を向けます。
「んあ、名前か? 俺はモブリゲスってんだ」
「「「モブリゲス……」」」
流石に女の子の名前としては、ちょっと……。
「だったら女の子っぽくして、モブリーとか?」
「リブラ、それは止めてあげて」
リジーがモブリーに異を唱えます。
「だったら何がいいのよ」
「せめてブを取ってモリーとか」
「「……モリー……」」
「……まあ……モブリーよりは……」
「では、モリーで決定ですわね」
こうして、わたくしに新たな弟子が増えました。元盗賊の親分で、元男性のモリー。面白くなりそうですわ。
モリーに決定。元の候補のモブリーは流石に……。




