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元親分を矯正する撲殺魔っ

 一時間程度待っていますと、元親分さんの身体は更に変化を続けました。


「うーん……だいぶ骨が固まってきたっすね」


 少し前の面影があった顔も、小顔な猫系美少女になり。


「……うっわ、私より大きい……」


 リブラが悔しさを滲ませるくらい、胸は大きさを強調していました。


「うぉーう、細い。リファリスに負けずとも劣らぬ」


 腰の括れ、お尻の大きさはわたくしに並ぶ程の……オホン!


「うーん、長い髪が邪魔でさあ」


 腰まで伸びた少しウェーブのある金髪は、見事なくらい元親分さんの美少女っぷりのプラス作用になっていました。


「いやはや、ここまで変化するのですね……わたくしも妖精族の羽化を目にするのは初めてです」


 そう言われた元親分さんは、わたくしに振り返ってニコリ……いや、ニヤリですわね……と笑い。


「これからお願いしやすぜ、親分」


 と宣いました。


「……お待ち下さい。貴女、わたくし達に付いて来るおつもりでしたわね?」


「へい」


「…………」


 見た目は美少女そのものですが……中身は元盗賊の親分なのです。


「うっわ、歩く度にバインバインと……おっぱいって重いんでやすね」


 歩き方はがに股、素っ裸な自分を恥じる様子も無く……。


「そのままでは連れていけませんわ」


「え? な、何ででやすか!?」


「当たり前です。貴女、そのまま裸でいるつもりですの?」


「あ……」


「それと口調と所作。どちらも粗野で女性らしさが一切感じられません」


「そ、それは仕方ねえだろ。元男なんだし」


「会う人会う人全員に『自分は元男だ』と宣伝なさるので?」


「う……」


 はい、決まりですわね。


「先を急ぐ身ですので、貴女にはわたくし直々に教育致します」


「きょ、教育!?」


「はい。馬車……いえ、熊車での移動ですので、荷台を活用すれば教育できます」


「ええええ!?」


「そういう訳ですので、リブラとリジーは」

「「はい、御者席に居ます」」


「それとリブラ、町に着いたら女性の服と下着を見繕ってきてもらえませんか?」

「分かったわ。どこかで採寸しなきゃね」

「さ、採寸!?」


「…………元親分」

「な、何でやすか?」

「地獄の一丁目にようこそ、と思われ」

「不安を煽る歓迎は止めて下せえ!」



 ガラガラガラッ


「……では、今から女性の所作について学んで頂きます」

「お、おう」


 緊張しているのか、変に力が入っているようです。


「おう、ではありませんわ。はい、です」

「おう。は、はい」

「宜しくてよ」


 まずは…………致命的に不味い所作から矯正しましょう。


「元親分さん、立って下さいな」

「あ、ああ」

「はい、ですわ」

「は、はい」


 揺れる馬車……熊車の中でも、難なく立ち上がってみせます。どうやらそれなりに鍛えているようです。


「立ってみて、少し股関節に違和感がありませんか?」


「……そういやぁ……いつもより立ち難いっすね」


「女性になった事により、以前より内股になったのです。男だった頃の動きをしていると、足腰に負担がかかりますわ」


「負担が……そうなると、矯正しないと不味いっすね」


「ですね。それと座った時に大股開きになってしまってますから、それも不味いですわ」


「え? それの何が不味いんで?」


 わたくし自身が元親分さんと同じ座り方をしてみせます。


「元男の貴女から見て、この座り方はどう見えます?」


「…………だらしないような?」


「そうですわね。それに、スカートが短ければ……どうでしょうか?」


「短ければって……あ」


 分かったようですわね。


「く……見える分にはラッキーなくらいだったのに、見られるのがこんなに嫌だったなんて……」


「そういうものなのですね。でしたら元男であった点を活かして、所作を正していきましょう」


「元男の点を活かす?」


「男性視点で好まれるものが、女性には不快なものが多いのです」


「……成る程」



 これがきっかけで、所作はかなり改善されていきました。三日経った頃には、自然に内股で歩けるようになる程に。


「細かい点をあげればキリがありませんが、それくらいでしたら『男っぽい女性』くらいで済みますわね」


「……親分のレベルが高すぎて、届く気がしねえんでやすが……」


「とりあえずは合格ですわね。次は……やはり口調でしょうか」


「口調、すか」


「流石に女性が『あっし』や『~でやすね』とかは言いません」


「……『俺』は良いんで?」


「誉められたものではありませんが、『あっし』よりはマシかと」


「……つまり、俺が普段話してる程度なら、問題ねえと?」


「まあ……『男っぽい女の子』程度に思われるでしょうね」


「つまり、徐々に改善してけばいいんだな?」


「そうするしかありませんわね。一朝一夕でどうにかなるものではありませんし」


「……分かった。敬語を意識しなけりゃ、『~でやす』ってのは出ねえから、タメ口でいいか?」


「構いませんわ」


「だったら宜しく頼むぜ、親分」


「……ですから、親分は止めて下さい」


「だったら姉御」


 ……まあ……親分よりは……。


 ガラガラガラ キキィ


「リファリス、町に着いた」


 あら、早かったですわね。


「でしたらここで服を揃えましょう」

「だったら……採寸ね」

「私、捕まえておくと思われ」


「え? な、何で二人揃ってにじり寄ってくるんだよ?」


「それは、まあ……ねえ。採寸という名の、スキンシップじゃない」


「スキンシップって、ちょっと!?」


「あ、逃げるな! リジー、捕まえて!」

「らじゃあ」


「え、な、どこを触って……や、止めろ、止めてええええ!」


 あら、意外と女性っぽさもありますわね。



モブが意外に仲間に。

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