盗賊な撲殺魔っ
「ふんふふ~んと思われ~♪」
町で食料等を買い足してから、その日のうちに出発します。
「リファリス、町で休んでいかないの?」
「先を急ぎますし、町に着く度に宿泊していては、幾らお金があっても足りませんわ」
「ああ…………うちは貧乏だしねぇ」
貧乏ではありません、清貧ですわ!
「つ~ま~り~♪ 食材は~♪ 現地で~♪ 調達~♪♪」
「ああ…………貧乏、じゃなくて清貧だから……」
ご機嫌なリジーの変な歌と、妙に悟った風な様子を見せるリブラの態度が……何とも苛立たせてくれますわ。
「……貴女達、シスターの一行が着く町着く町で宿泊していたら、信者の皆様に示しがつきませんわよ?」
「……へ?」
「何で?」
な、何でって……。
「か弱いシスター一行が野営してる事の方が、余程信者さん達に悪影響を及ぼしかねないけど」
うっ!
「その通り~♪ 普通なら~♪ 野営してるシスターなんて~♪ 盗賊の餌食~♪」
ううっ!
「ああ……か弱いシスターが盗賊達に無理矢理手込めにされ……」
「馬車からは悲鳴と~♪ ギシギ」
ズドオオオオン!
振り下ろされた聖女の杖が、地面にクレーターを形成します。
「さあ、続きを語りたいのでしたら、好きなようになさって下さい」
「「い、いえ、何もございません」」
「でしたら、わたくしの言う通りになさいますか?」
「「はい、聖女様の仰る通りにします」」
宜しい。
野営地を探しながら進んでいますと、ベアトリーチェとリブラが後方に気にし始めました。
みゅみゅん、みゅん
「リファリス、後ろに何か居る」
後ろに?
「ん~……≪見えない手≫」
リジーが何やらスキルを使ったようで、目を瞑って集中しています。
「……ベアトリーチェ、しばらく前をお願いしますね」
みゅん!
リジー、御者をしている間は、目を瞑らないで下さいね。
「~~…………間違い無く盗賊。最低でも三十人くらいは居る」
「やっぱり盗賊に狙われたじゃない!」
リジーの謎のスキルにより、わたくし達は盗賊達に狙われている事が発覚しました。
「三十人って……! いくら何でも多すぎるよ!」
「どうしようかな~♪ 退いちゃおうかな~♪」
盗賊……三十人ですのね。
「三十人でしたら、何ら問題ありませんわ。お迎えしてあげましょう」
「「えっ」」
「ベアトリーチェも宜しくて?」
みゅん!
「え、えええ。リファリスが殺る気満々だし」
「ベアトリーチェもノリノリだ~♪」
「リジー、歌ってる場合じゃないから、さっさと馬車の速度上げて」
「らじゃ~♪」
盗賊との距離を空けるつもりだったのでしょうが、わたくしはさっさと荷台から飛び出します。
「え、リファリス!?」
そのまま馬車との距離は離れていきました。
「へっへっへ、シスター御自らお出で下さったぜ」
「そのお身体で、俺達に慈悲を下さいませ……ひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「…………ふふ……あは、あははは、あはははははははははははは!」
「な、何だぁ? このシスター、気が狂ったかあ?」
「あはははははは! こういうのもいいですわぁ……ただ単に撲殺するのでは無い、死と隣り合わせの緊張感!」
「はあ? 何を言ってるんだ?」
「ま、待て。何か様子がおかしいぞ」
「あはははは…………さぁて、死合いましょう」
ボガッ!
「ぐひゃあ!」
「な……い、一撃で頭を」
ボギボギィ!
「ぎゃああ! あ、足が」
ゴキャゴチャバチャア!
ゴトッ
「な、何だ、このアマ!?」
ゴシュウ!
「ぐ、ぐぴ、げぴ」
「あ~ら、お口に杖を突っ込んだら、後ろまで突き抜けてしまいましたわねぇ」
「な、何なんだ、このシスターは!?」
「あらぁぁ、名乗ってませんでしたわねぇ。わたくし、セントリファリスの聖リファリス礼拝堂をお預かりしております、シスターリファリスと申します」
「え、ちょっと待てよ。セントリファリスって……」
「しかも町の名前と教会の名前に冠されてて……」
「白い髪なのに、毛先だけ赤く染まった美人で……」
「背後に太陽が重なると、紅い月が浮かび上がって……」
「はい、よくご存知ですわね。わたくしが貴方達が仰りたいであろう……〝紅月〟ですわぁ!」
「な、あ、紅月ぐしゃ」
はい、これで四人目ですわ。
「や、やべえ! 逃げろおお!」
あら、四人程逃げ出しましたわ。
「ですが逃がしませんわ。聖女の檻『茨』」
シュルルルッ!
「い、茨の壁が!?」
「逃げられない!」
「ふふ、ふふふふ、あはははははははは! 盗賊さん達相手に、命懸けの撲殺ですわああああ!」
「うぎゃあ!」
「ぐふぁ!?」
「があああっ!」
「追い掛けて来てみれば……随分と楽しんでるわね、リファリスは」
みゅうん……
「ベアトリーチェはおそらく『私、参加できなかった』て言ってると思われ」
ピシュ! シュルルルッ
「あ、茨が消えた」
「リファリス」
「あら、リブラとリジー、それにベアトリーチェ。遅かったですわね」
リファリスの後ろには……怯えた様子で整列する盗賊達。
「……もう撲殺したの?」
「はい。で、もう復活済みですわ」
まあ……一回殺されて生き返らせられた相手が目の前に居るんだから、怖いなんてレベルじゃないよねえ……。
「では盗賊さん達。わたくしの旅のお手伝いをお願いできますか?」
「「「はい、親分!」」」
……今度は盗賊の親分になっちゃったか……。




