お肉お肉なわたくし以外っ
でんでんでんでん
………みゅうううん
「……すう……」
でんでんでんでん
みゅみゅん、みゅん
「ん……んん……すう……」
でんでんでんでん
みゅうううん!
「すう……」
…………がぶっ
「いったああああああい!」
みゅんみゅん
「え? あ、ベアトリーチェ?」
みゅうううん!
「え、町が近いんですの? それはありがとうございます」
いけませんわ、わたくし眠ってしまっていたようです。
「ずっと町まで引っ張ってくれたのですね、偉いですわ」
みゅんみゅん♪
馬車……熊車から降りて撫でてあげると、甘えるように擦り寄ってきます。うふふ、可愛いですわね。
「はい、お肉を上げますわ」
みゅうううん!!
胸の谷間から取り出したお肉を、ベアトリーチェは一気に食べてしまいます。
みゅんみゅんみゅん♪
「え、まだ欲しいんですの? 仕方ありませんわねぇ」
みゅうううん!
頑張ってくれたんですもの。これくらい上げても、問題ありませんわよね。
問題ありありでした。
「リファリス、お肉は?」
…………あら?
「おかしいですわね……」
服に手を突っ込んで弄りますが、空間魔術の中にはお肉が残っている気配はありません。
「……申し訳ありません、もう無いようですわ」
「「………………え?」」
「もうありませんわ」
「え、だって、出発した時に」
「お肉いっぱい入れたって」
「申し訳ありません。ベアトリーチェの餌として消えましたわ」
「「え…………はああっ!?」」
ギロッ
二人がわたくしを睨み付け。
「……はい?」
ギロリッ
「「あ、何でもありません」」
わたくしに睨み返され、大人しくなります。
「「な、なら、食べた側に問題が……」」
今度はベアトリーチェが標的になりますが。
みゅん?
ほわあああ……ん
「「ふにゃあ……」」
ファンシーベアが放つ可愛らしさに当てられ、それ以上何もできません。
「く……仕方無い!」
「仕方あるけど無くさなきゃならないと思われ!」
二人は立ち上がり、そのまま森の方へ向かいます。
「どこに行くんですの?」
「「狩り!」」
ザッザッザ……
そう言って歩いていってしまいます。
「もう少しで町ですのに……我慢できないのですわね」
みゅんみゅん♪
スリスリッ
「え、まだ食べたいんですの? 先程もお話しした通り、もうお肉はありませんわ」
みゅうううん、みゅんみゅん
「え、まだ食べ足りない? 困りましたわね、後は雑穀と干し野菜くらいしか残ってませんわ」
みゅん!?
「……熊が『叫び』の表情をしないで下さい」
……みゅみゅ! みゅうううん!
「え、狩りに出掛けるんですの? でしたらリブラもリジーも行ってますわ」
みゅん? みゅうううん!
「あの二人には任せられないって……あ、ちょっと!?」
みゅうううん……
でんでんでんでん
「……行ってしまいましたわ……全く、ベアトリーチェまで」
お肉は無くても、お魚はまだまだありますのに。
ジュウウ……
「はふ、はふ、美味しいですわ」
焼き上がったばかりのお魚を頬張っていますと、匂いに釣られたのか、獣の気配が濃くなってきました。
「はふ、はふ、『食事中は邪魔しないで』」
キィン!
強力な物理結界を張り、近寄れないようにしてから、再びむしゃぶりつきます。
「はふ、はふ」
ウウウウ……
グルルルル……
現れたのは狼の群れです。
ガルルルル!
ガリガリガリ!
結界によって近寄れない為、涎を垂らしながらわたくしが食べているのを眺めるしかありません。
「モグモグ…………聖女の戒『茨』」
ピシュ! シュルルルッ
キャイン!
ギャーーン!
捕まえれるだけ捕まえ、そのまま地面に縛り付けておきます。
「……狼も美味しいらしいですから」
みゅんみゅんみゅん♪
しばらくすると、何匹も鹿を引き摺りながら、ベアトリーチェが帰ってきました。
「あら、大量ですわね」
みゅうん♪
口元が赤いという事は、もう何匹か食べたのですね。
「つまり、その鹿はお土産ですの?」
みゅうううん!
「あらあら、それはありがとうございます」
その場で捌き、ブロックにまで切り分けてから、胸の谷間に保管します。
「うふふ、これで次の町まで保ちますわ。ベアトリーチェ、ありがとうございます」
みゅうううん!
「ああ、それと、狼も大量に捕まえてありますわ。もう捌いてありますから、後で上げますわね」
みゅうううん!
中央山地でのサバイバルは、わたくしに色んな経験を積ませてくれました。
……ザッザッザッ
「「………………ただいま」」
ぐきゅるるる~……
「お帰りなさいまし……その様子では、坊主ですわね?」
「「お、お腹空いた……」」
チラッとベアトリーチェを見ますが、プイッと横を向いてしまいました。どうやらお肉を分けてあげるつもりは無いようです。
「雑穀と干し野菜で作ったお粥がありますから、それで我慢して下さい」
「うええ……薬草粥?」
「あまり美味しくない……」
失敬な。
「身体には良いんですのよ。文句を言わずに食べなさい」
「「……はぁい」」
ブツブツ言いながらも、二人とも全て食べきりました。
「ごちそうさまでした…………ああ、お肉ぅ」
「ごちそうさまでしたと思われ……じゅる、お肉ぅ」
……狼のお肉、分けてあげようかと思いましたが……。
「お粥を不味いと言う方には、やっぱり上げません」
「「…………へ?」」




