表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

206/428

ファンシーが解けた元獣王っ

 急いで旅立ちの準備を済ませ、三時間だけ仮眠をし。


「さあ、出発ですわ!」

 みゅうううん!

「……くー」

「……ぐー」


 ほとんど眠っているリブラとリジーを荷台に乗せ、馬車ならぬ熊車を引くベアトリーチェが進み出し、どうにか出発しました。些か勇み足気味ですか、致し方ありません。


「くー……リファリス、そこはいやぁん……」

「ぐー……うへへへへへへ……」


 どんな夢を見ているのか、非常に気になりますわね。特にリブラ。


「ふう……ベアトリーチェ、とりあえず道沿いに進んでいて下さいな」

 みゅうううん!


 馬車……熊車の事はベアトリーチェに任せ、わたくしは御者席から空を見上げます。


「……教会は魔王の奥様が何とかして下さる、ルディもバックアップしてくれます……問題ありませんわ」


 既にもぬけの殻になっている教会に驚かれるでしょうが、逸る気持ちを抑えられません。


「……まさか、今頃になってリフターの名を聞く事になろうとは……」

「リフターねえ」

「ひゃい!?」


 背中越しに急に声を掛けられ、文字通り飛び上がってしまいました。


「リ、リブラ!? 起きていたのでしたら、一言言って下さいな!」

「いや、目が覚めたのは本当に今々」


 ……でしたら仕方ありませんわね。


「で、どうしたの、リフターが」


「……リブラ、リフターを知ってますの?」


「そりゃあ……ね。侯爵家に居た身だから、リフター辺境伯の事は知ってるよ」


 辺境伯……ですか。


「でもリフター家とリファリス、何の関係があるの?」


「……それは…………また、気持ちの整理ができましたら、お話しますわ」


「…………分かった、今は聞かないよ」


「ありがとうございます」


「まあ……リフター家ともなると、流石に……ね」


 リブラ侯爵家の出だけあって、リブラは多少なり事情を知っているようです。なので、それだけ気を使ってくれるのでしょう。


「……あれはタブーみたいなもんだから」

「…………」


 みゅうん?


 微妙な空気になったわたくし達を心配してか、ベアトリーチェが振り向きます。


「大丈夫ですわ。心配してくれてありがとうございます」

 みゅううん!


 わたくしの反応に満足したようで、再び元気良く歩き出します。


 みゅん♪ みゅん♪ みゅん♪

 でんでんでんでん


「…………リファリス、何でベアトリーチェが歩く時、あんな不思議な音がするの?」


 不思議な音?


 みゅん♪ みゅん♪ みゅみゅん、みゅん♪

 でんでんでんでん


「ああ、でんでんっていう音ですわね?」

「そうそう!」

「それは…………ベアトリーチェだからですわ、はい」

「ベアトリーチェだからって、説明になってないけど?」

「え、えっと…………そ、そうですわ! ファンシーベアだからです!」

「……そう言えばベアトリーチェって、ファンシーベアだったね」

 みゅうううん!



 ぐ、ぐふ……せ、説明するのじゃ……死んでも説明するのじゃ……。

 ファ、ファンシーベアとはの…………ぐふげふごふぁ…………ふはぁ!? はあ、はあ、はあ……。

 す、済まぬが、説明責任を果たせそうに無いでの、出征の章を読んで下され…………がくっ。



「…………あら?」


「ん?」


「あ、いえ。邪な老人の魂が天に召された気がしまして」


「は?」


「いえ、どうでも良さそうですので、そのまま逝かせましょう」


「よ、よく分かんないけど、リファリスが良いんなら良いんじゃい?」


 さて、それよりも。


「先程の足音の件はファンシーベアという理由で説明できますわ」


「…………七不思議の一つ、ファンシー化現象か……」


 色々な理由が重なった時に起きる現象、ファンシー化。動物が異様に可愛らしくなるのですが、それは実際にはあり得ない事象まで起こします。可愛らしい鳴き声や足音もそれなのでしょう。


「詳しい条件は分かってないんだよね?」


「ええ。ベアトリーチェの場合は汚れを徹底的に洗い流した後に起きましたから、その辺りにファンシー化のきっかけがあったのでしょう」


「ああ、中央山地でリファリスが臭くなった時に」

 がしぃ!

「……わたくしが臭いんですの? 臭かったんですの?」

「い、いえ、そのような出来事はございませんでした。忘れました」

「なら宜しくてよ」


 リブラを離し、再びベアトリーチェの話題に戻ります。


「ファンシー化……不思議ですわね」


「ね、ねえ、リファリス。もしかしたら名前も影響してるかもよ?」


 名前?


「もしベアトリーチェの名前が熊八だったりしたら……」

「熊八なんて名付けたりしませんわよ!」

 グガア!?


 ほらああ、リブラが熊八だなんて言うから、ベアトリーチェがグガアって………………グガア?


 ゴアア?


「べ……ベアトリーチェ!?」


 ファ、ファンシー化が解けてるぅぅぅ!!


「リブラ! 貴女が熊八だなんて言うから……!」

「私!? 私のせいなの!?」


 ……プゥゥゥン

「うっ」「うっ」


 風に乗って匂ってきたのは、ベアトリーチェの体臭…………ま、まさか!?


「ファンシー化が解けたのは、洗っていなかったから、ですの!?」

「リファリス、洗ってないの?」

「…………一ヶ月くらい、ですわね」



「汚いですわ汚いですわ、臭い臭い臭いですわ、ああああああっ」

 ゴシゴシゴシゴシゴシジャブジャブジャブジャブ

 グガアアアア!?



「さあ、洗い終わりましたわ」

 フワフワ、サラサラ……

 ……みゅうううん


「あ、戻った」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=529740026&size=200 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ