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再び旅立つ撲殺魔っ

「あ、あの、聖女様」

「はい?」


 懺悔の奉仕の途中、相談にいらしていた方が、今回の騒動の発端となる話をわたくしに聞かせて下さいました。


「あの…………少し宜しいですか?」


「あ、はい。何でしょうか?」


「聖女様は……もう一人いらっしゃるのですか?」


「はい? どういう事でしょうか?」


「あ、いえ、その…………アルターシャはご存知ですよね?」


「あ、はい。南の観光地ですわね」


 海沿いの街で、綺麗なビーチが有名です。


「そちらに、新たな聖女様が現れたんだとか」


 アルターシャに? 聖女?


「……あり得ませんわね、普通に考えたら」


「はい。私でもそう思えるくらいですから、もしかしたら……と思いまして」


「…………大変失礼な事をお聞きしますね。事実ですの?」


「間違い無いと思います。私の妹がアルターシャのカジノで働いておりまして、先日帰省してきた折、興奮しながら私に語ってくれましたから」


「興奮しながら、という事は」


「はい、妹はすっかりアルターシャの聖女様に夢中になっておりまして……その……」


 ……わたくしに言い難そうにしていますわね。


「……わたくしの事を非難されたのですか?」


「……嘆かわしい事ですが……その通りです」


「成る程。まあ、個人の思いはそれぞれですから」


 この町でも、わたくしを毛嫌いしている方は結構いらっしゃいます。ですからわたくし個人の好き嫌いについて、とやかく言うつもりはありませんが……。


「聖女……となりますと、話は別ですわね」



「にゃは~、もう一人の聖女?」


 次の日、遊びに来ていたルディに昨日の聖女の話をしてみました。


「しかもアルターシャに? 絶対にあり得ないね」


 ……ですわよね。


「大体聖心教が認定する聖女は、世界に一人だけ。リファリスだけだよ?」


「何度も言いますが、わたくしは聖女の器では無いのですが」


「まーた始まったあ。聖女認定式の時に、ルドルフに直接説き伏せられたでしょ?」


「直接説き伏せられた、と言うより、無理矢理納得させられた、というのが正確なのですが」


「どちらにしても受けたんでしょ? だったら聖心教認定の聖女はリファっち一人だけだよ」


 ……ならば。


「アルターシャの聖女は……偽者と言う事に?」


「そうなるねぇ。早速ルドルフと話して、調査隊を派遣するよ」



 ですが、これで話は終わらなかったのです。



 調査隊が派遣されてから一ヶ月後、聖地サルバドルに悪い知らせがもたらされたのです。


「……消息不明、ですの?」


「うん。アルターシャの教会に問い合わせてみたんだけど、反応無し。勿論だけど、追加の調査隊が編成される事になった」


「……ご無事だと良いのですが……」


「うん。だからさ、もし最初の調査隊や教会の人達に何かあったらさ、リファっちお願いね」


「お願いって復活ですか? それは構いませんが」


「うん。だから、ね」


「……?」


「直接、ね」


 直接って、まさか。


「その調査隊にわたくしも加われと言いたいんですの!?」


「ご名答~♪ 偽者退治ならやっぱり本物が最適だよね、にゃは~♪」


「お断りですわ。この教会の事もありますっ」


「大丈夫大丈夫。今回は長期の留守になるだろうからって、しばらく教会に枢機卿の方が来て下さるから」


「枢機卿って……まさか」


「そ。魔王の奥さんだよ~ん♪」


 あの方でしたら、教会をお願いしても何ら問題ありませんわ。


「だからと言って、わたくしは行くとは一言も」

「その偽者がリフター姓を名乗ってるとしたら?」

「っ!!!?」


 リ、リフター姓を……。


「ここまで言えば分かるよね。リファっち自らが行かなくてはならない理由」


「……分かりましたわ。その姓を出されては、わたくしが黙っている理由はありません」


「オッケー。なら枢機卿には、アタシから連絡入れとくね」


「よろしくお願いします」


 ……それにしても……リフターの名が出てきた事が、偶然であってくれれば良いのですが……。



「あれ、リファリス?」


 旅の準備をしていると、リブラとリジーが部屋を覗きました。


「二人とも、申し訳ありませんがすぐに準備して下さい」


「……何の?」


「明後日にアルターシャに向かいます。突然ですが、二人にも同行して頂きたいのです」


「ア、アルターシャに?」

「リファリスが?」


 二人は顔を見合わせ、おずおずと。


「「い、一獲千金は夢のまた夢かと」」


「カジノ目的ではありませんわ! れっきとした教会公務です!!」


「あ、そうなんだ……あはは、なら良かった」

「そこまでこの教会が資金難なのかと」


 カジノで一発逆転を狙う程、落ちぶれていません!


「でも……リファリスが一番行きたがらない所じゃない、アルターシャって」


「そうですわね。わたくし、一生行きたくなかったですわ」


「だよねえ。リファリス、賭け事嫌いだもんねえ」



 聖心教では賭け事は禁止されておるからのう…………さてさて、最近めっきり出番が無くなっておったが、再び解説の時間じゃ。

 シスターがアルターシャを毛嫌いしている理由は既に言った通り、聖心教が賭け事を禁止しておるからじゃ。何せカジノで有名な町じゃからの。

 それと大司教補佐が言っておられた、リフターという姓についてじゃがぼぐしゃあ!?



「ど、どうしたの、リファリス。急に杖を振り回して」


「いえ。ちょっと遠距離撲殺がしたくなりまして」


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