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聖女様の閑話

「はっはっ、ふっふっ、はっはっ、ふっふぅぅ……」


 わたくしの前で、極度の緊張に全身を捕らわれたリブラが居ます。呼吸が奇妙なのですが……。


「……落ち着きなさいな。初めてでは無いでしょう?」


「二回目!! だから!! 余計に!! 緊張!! する!!」


「分かりました、分かりましたわ」


 話し方まで奇妙なのですが……教えたら余計に混乱するだけでしょうね。


「はああ……ひっひっふぅぅ、ひっひっふぅぅ」


「……出産ですか?」


「出産!? 私とリファリスの!?」


 天地がひっくり返っても、あり得ませんわよ!


「わたくしも貴女も女性ですわよ! どうしたら子供ができますの!?」


「え、だって、リファリスがそう言ったから」


 それは、貴女が奇妙な呼吸をするからであって……!


「……じゃなくて、明日の導き役に集中しないと……!」


 …………はぁ。ここで余計な事を言って、リブラの集中を切らしてはいけませんわね。


「ではリブラ、わたくしは沐浴をしてから先に寝ますわね」


「ブツブツブツブツ、ひっひっふぅぅ、ブツブツブツブツ」


 ……もう放っておくしかありませんわね。



「ブツブツブツブツ……新郎は誓いますか……ブツブツブツブツ」


 ギィッ


「リブラ、わたくしの下着を知りませんか?」


「ブツブツ、下着ってぴぎゃああああああああ!!」


 何ですの、その叫び声は。


「何度呼んでも誰も反応してくれないんですから、仕方無くですわよ」


 今週の洗濯の担当はリブラですから、着替えを準備しておいてくれる筈だったのですが。


「だ、だ、だからって、バスタオル一枚で」


「ですから、何度も呼んだんですわ」


「は、はぅわぅはぅわぅ……」


 リブラの目が渦巻き状になってるような……いや、あり得ませんわね。


「……ありましたわ。リブラ、ちゃんとしてくれないと困りますわよ」


「はぅわぅはぅわぅひっひっふぅぅ」


「……リブラ?」


 ……これは……危ないですわね。意識がこちらに向いてない今のうちに、着替えてしまいましょう。



「はぅあ!?」


「気が付きましたか、リブラ?」


「リリリリファリス……あれ?」


 ふう、間に合いましたわ。


「あ、あれ? リファリス、バスタオル巻いただけの格好で……?」


「何の事でしょうか? わたくし、この部屋に来た時から、寝間着姿でしたわよ?」


「え? あれえ??」


「……リブラ、疲れているのですわ。早く休んで明日に備えなさいな」


「えー、あー、うん。そうだね、疲れてるのかも……」


 そう言ってリブラはフラつきながら、自分の部屋へ戻っていきました。


「さあ、わたくしも寝ましょう…………あふぁあ」


 どうにか誤魔化せましたし……眠っ。



 ……ガチャ


 …………ん?


 ス……ス……


 ……誰か……部屋に忍び込んできましたわね……。


 ス……ス……


 足音を立てずに近付いてきます……これは、相当な手練れ……。


 ス……


 ……ベッドの横に来ました。間違い無く、目当てはわたくしですわね。


 …………ス……

 サワッ


 っ!?


「不届き千万!」


 胸に触れてきた手を掴み、一気に捻り上げて組み倒します!


 クルン……ザッ


 ですが敵も只者ではありません。それを予想していたかのように、空中で身体を反転させて受け身を取ります。


「聖女の戒『茨』!」


 ビシュ シュルルッ


 あちこちから『茨』が襲い、敵の動きを制限していきます。


「魔力集中……聖女の杖、解放」


 杖の先に球体が現れ、それは徐々に大きくなっていきます。


 ビキビキビキビキッ


 わたくしと同じくらいの直径に達した球体には、棘が生えていき……。


「聖女の杖・最終形態『完殺』……受けてみなさい」


 それを難なく振り上げ、敵に思いっきり叩きつけ……!

「ま、待ってリファ」

 ……あら、今の声は……。


 ズゴオオオオオン!

「みぎゃあああああああああああ!!!!」


「……リブラ?」



「『微妙に癒せ』」

「痛い! 痛いい!」


 わざと痛みを感じるように、徐々に治療していきます。


「で、何故わたくしの部屋に忍び込んだんですの?」


「痛いって! ちゃんと言うから、ちゃんと治してえ!」


 ……でしたら、一時的に痛みを遮断して……。


「いたた……ふう。やっと楽になった」

「で、何故このような真似を?」

「あ、えっと…………そう! 極度の緊張を解す為、リファリスの寝顔を見て和もうと」

「『痛み倍増』」

「ひぎゃあああああ……痛い痛い痛いい!」


 のたうち回るリブラに冷たい視線を向けます。


「でしたら、何故にわたくしの胸に触れたのです?」

「うぐっ!? く、暗くて、よく見えなくていたたたたたた痛い痛い痛い!」

「暗くて見えない割に、わたくしの正確な位置は分かったのですね」

「痛い痛い痛いごめんなさい白状しますしますから痛いの止めてえええ!」


 ……再び痛覚麻痺。


「ふはぁ、はあ、はあ、はあ」


「さて、吐いてもらいますわよ」


「は、はい……その……緊張を解そうと……」


「はい」


「その……リブラの寝顔を見に来て……」


「……はい」


「ついムラッときて、襲おうと」

「『完殺』」

 ドッガアアアアアアアン!

「ふぎゃああああああああああああ!!!!」



「え?」

「あら、聖女様?」


「申し訳ありません。本日担当する予定でした弟子が……その……体調を崩しまして」


 ……やり過ぎましたわ。


明日から新章です。

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