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序章と撲殺魔っ

 むかーしむかーし、ワシらが暮らすこの世界からは遠く離れた異世界に、剣と魔法が存在する大陸があったそうな。

 その大陸は二つに分かれており「北大陸」「南大陸」と呼ばれておった。

 その南大陸には多数の国があり「聖心教」と呼ばれる宗教が信仰されており、大陸に住む住民達は熱心にお祈りしておったそうな。


 カーーン……カーーン……


 その聖心教の聖地サルバドルの南、海に面した港町には大層立派な教会が建っており。


 カーーン……カーーン……


 荘厳な鐘の音が、朝昼晩と海の彼方まで響いておった。


 カーーン……カーーン……ギャアア……


 じゃが、稀に奇妙な音が響いてきよる。


 カーーン……ギャアア……カーーン……ギャアア……


 決まって鐘が鳴る時間と同じ時に聞こえる音は、人の声にも、動物の鳴き声にも聞こえ。


 ギャアア……ウギャアア……


 町の住民は「何だろう、何だろう」と噂しておったそうな。


 ギャアア……カーーン……グチャ……ギャアア……


 そうそう、話は変わるのじゃが、この教会には大層美人なシスターが住んでおっての。ワシもチラッと見た事があるのじゃが、それはそれはもう……。


 カーーン……グチャ……ドチャ……カーーン……カーーン……


 む? ギャアア、とかいう音が止んだの。

 と言うより、妙に鐘を鳴らす時間が長いのぅ、今日は。


 カーーン……カーーン……


 ……ふむ。一度中を覗いてみようかね。またあの美人さんを拝んでみたいしの。



 ふう、ふう、や、やはりあの教会までは道が長いのう。


 ……はははは……


 む? あの声は……どうやら美人シスターさんのようじゃの。


 ……はははは、あはははは……


 これは珍しい。普段は物静かで、こんなに大声で笑うようなお人じゃないのじゃが……。


 あはははは! うふふ、うふふ、あはははは!


 余程可笑しい事があったのじゃろうか。静寂を好まれる聖心教では、このような大笑いはあまり良く思われんはずなのじゃが……。


 ドンッ グチャ ゴスッ ドチャ


 その笑い声と同じくして、何かを潰す音が響いてきよる。


 あはははは、もう終わりなの、あはははは!


 むぅ、この部屋のようじゃの。さて、それでは失礼して……。


 キィィ……


「ふぐぅ! ふぐーぅ!」


「あはははは! そんなに焦っちゃって、情けないったらありゃしませんわね!」


 ブゥン! ゴキャ!


「ふぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


「あは、あははは、あはははははは! 何ですか、その醜態は? 多数の罪無き少女を泣かせてきた連続婦女暴行犯が、この程度で大泣きするんですの?」


 ……な……何と……。


「ほぅら、次は右手の肘ですわよ……えいっ」


 ブゥン ゴキャア!


「ふぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「あっはははは! 何ですの、その情けない顔! 連続婦女暴行犯の名が泣きますわよ?」


 ブゥン グチャ

「ふぐぅ!」

 ブゥン グチャ

「ふぐぁ!」

 ブゥン ブチィ

「ふぐぅぅぅぅぅ!」


「あぁら、あら。これで右腕も千切れちゃいましたねえ」


 お、おおお……か、神よ。これは……このような事が……。


「どうですか、断罪される気分は?」

「ふ、ふぐぅ……」

「あら、わたくしとした事が、猿ぐつわしたままで喋れるはずがありませんわね」


 ズルッ


「ぶはぁ!」


「はい、話したい事がありましたら、いくらでもどうぞ」


「ひ、ひぃぃ! もう嫌だ! 助けて、助けて! 助けて下さあああい!」


「あら。あらあらあらぁ。貴方、そうやって許しを乞う女性を、助けた事があるんですの?」


「え!? あ、あります、あります!」


「本当ですのぉ?」


「はい、本当です!」


「そうですか、なら調べてみますね」


 シ、シスターの手のひらから、魔術の光が。


「……『真実探求』」

「え!? ええっ!?」


 その光が男の頭に降り注ぐと……な、何と言う事じゃろう。


「な、何だ、この赤い光は!?」


 男の髪の毛が赤く発光しだしおった。


「あらぁ、ざーんねん。その魔術光はねぇ……真実だと青く、虚偽だと赤く光るんですのよ」


「なっ!?」


「つまり、貴方は嘘吐きさんという事ですわねぇぇぇ」


「ち、違う! 違うんだ!」


「何も違いませんわね。貴方の罪には、嘘吐きも加算されたんですのよ?」


 ガッ


「ひぃ!」


「知ってますかぁ? 余所の国の伝説では、嘘吐きは死んでから地獄で舌を抜かれるですってよ?」


「や、止めて! 止めてくれえええ!」


 シ、シスターはヤットコを持ち出すと…………ま、まさか。


「はーい、お口を大きく開けましてぇ♪」

「ふぉぶ!?」

「あーら、開けない悪い子はぁ、お耳は片方要らないですわね」

 ブチィ

「ぎゃああああああ!」

「あーら、大きく口が開きましたねぇ。なら、ヤットコで舌を」

 ガッ

「ぶぶっ!」


 ほ、本当にやるのか!?


「はぁい、ではカウントダウン開始。三、二、一」

「ふぎぃぃぃぃぃ!」

「ゼロォォォォォォ!」



 ブチンッ



「あばあああああああああああ!!」


 や、やりおった! 本当にやりおった!


「あっははははははははは! 何て情けない顔! 何て情けない悲鳴! 笑えちゃうわ、ねええ?」


「ばふぁあああああ!!」


「さて、断罪はここまでにして……そろそろ地獄門のケルベロスが大口を開けて待ってますわよ?」


「あぶぁ! ぶふぁぁぁ!」


 そ、そう言うとシスターは、普段から持ち歩いておられる杖を……うぶっ。


「では婦女暴行犯さん」

「ふぐぁぁぁ!」

「天誅」

 ブゥン

 ゴキャ!

「ごふぇ」


 杖が振り下ろされ、お、男の頭に……お、おえええ!


「天罰」

 ブゥン

 グチャ!

「ぶぶっ!」


 おえええ! うげえええ!


「滅殺。抹殺。撲殺」

 グチャ! グチャ! バチャアン!

「……っ……」


 おえええ! げふ、げふぅ! うげえええ!


「……主よ。また罪深き魂を地の底に叩き落としました。願わくば、永久に罪が赦される事が無き事を」


 ……カーーン……カーーン……


 げええ……い、嫌じゃあ! ワシ、こんな物語の語り役なんてやりたくない! もう嫌じゃあああ!

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[良い点] この章をありがとう [一言] >げええ……い、嫌じゃあ! ワシ、こんな物語の語り役なんてやりたくない! もう嫌じゃあああ! 草
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