表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

198/428

ウットリと撲殺魔っ

 聖職者である筈のわたくしがこのような事では、示しがつかないとも思えなくは無いのです。ですが主は自由恋愛を謳っていますし、シスターでも恋愛・結婚している者は多いのです。


「ですから何の問題もありませんわ」


「も、問題ありありだと思うけど……」


 シーツに包まってわたくしと距離を取るリブラは、耳まで赤く染めてわたくしを睨んでいます。


「何故ですの? わたくしの事が嫌いなんですの?」


「き、嫌いじゃない! わ、私だって、愛して」

 ブゥン! バシィ!

「あら、受け止めましたわね」

「な、殴られるから嫌なんだって!」


 あら、失礼しました。


「でしたら、撲殺しないのでしたら大丈夫ですのね?」

「撲殺しないからって……きゃあ」


 そのままわたくしとリブラは、ベッドへと雪崩れ込んだのです。



「や、やっぱり、撲殺されなくても、無理よ……」


「な、何故ですの!?」


「そりゃ毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩押し倒される身にもなってよ! いっくら体力に自信があったって、身体が保たないわよ!」


「何を言ってるんですの! その為に回復魔術があるんですのよ!」


「私はまだ使えないわよ!」


「でしたら、わたくしが……『限界まで癒せ』」

 パアアアア……

「……はい、これで大丈夫ですね?」


「いや、だから私がその気が無いのなら」

「『艶やかに乱れよ』」

「う……リ、リファリス、な、何か魔術を!?」

「さあ、また交流を深めましょう!」

「い、いやああああああああああ!!」



 ……散々リファリスに哭かされ、身体的には魔術で回復してもらっても、精神的には……。


「も、保たない……」


「うふふふ。リブラっち、贅沢な悩みが聞こえてきたよ~」


 こ、この声は!


「だ、大司教代行!」


「んっふっふ、リブラっち、アタシはもう代行じゃないのよ」


 え?


「今は大司教補佐なの」


 ……微妙に降格したのね。


「じゃ、じゃあ、大司教補佐。ご無沙汰しておりました兼、私には全く得はありません」


「敬うつもりが全く無い挨拶をどうも。それよりリブラっち、リファっちからそれだけ愛されて、一体何が不満なの?」


「それは……リファリスの愛情表現に決まってます!」


「リファっちの愛情表現? それって普通に【いやん】をするんじゃないの?」


「ええ、ええ。普通はね。だけどリファリスは普通じゃないの」


「普通じゃないって?」


「……ベッドの近くには、必ず聖女の杖がスタンバイしていて……」


「え。そ、それって、まさか……」


「そうです! 撲殺されるか、ご臨終寸前まで殴られるか、どちらかなんです!」


「そ、それは~……」



 昨日の夜も。


「さあ、リブラも脱ぎなさいな」


「な、何で脱ぐ必要が」


「当たり前です! 血は洗濯しても落ちにくいのですわ!」


「血って!? やっぱり撲殺する気じゃない!」


「撲殺しませんと何回も言ってますわよ!」


「え、ええ~……ほ、本当に?」


「本当ですわ」


 そう言ってリファリスも脱ぎ……えええっ!?


「だから、撲殺するのに脱ぐ必要無いでしょ!?」


「ですから、血が付いたら洗濯では」

「やっぱ撲殺するんじゃないのよ!」

「ですから撲殺しませんわ! でしたら、今から証拠をお見せします!」


 そう言って聖女の杖を握り、私の前に立って……て!


「やっぱ撲殺じゃないの!」

「違いますったら違います! 行きますわよ、ソフト天誅!」

 ブン バギャ!

「ぐぎゃ!」

「あは、イージー天罰!」

 ブン バガア!

「がはっ!」

「あははは! スィート滅殺! ライト抹殺! ラブユー撲殺!」

 ゴッゴッゴッ!

「か、かは……」

「今です! 『完全に癒せ』」

 パアアアア……

「ぐふ……ふあああ!? あ、あれ、治ってる!」


 返り血を浴びたリファリスが、ニッコリと笑う。


「どうですか、撲殺してませんわよ?」

「い、いや、撲殺してるようなもんじゃない!」

「あら、ちゃんと加減してますし、死んでいませんわ。ですから撲殺じゃありません」

「いやいやいや、加減してるとは思えない!」

「ちゃんと加減してますわ。その証拠に、ソフトだったりイージーだったりライトだったりしてますわ」

「いや、愛が無いでしょ! 殺意しか感じなかったよ!?」

「あら、きちんと愛情も込めてましたわよ? スィートとかラブユーもありましてよ?」

「言葉にすればいいって訳じゃないわよ!」


 するとリファリスは妖しく笑い。


「でしたら、こうすればいいのでしょうか?」


 整った顔が近付いてきて……。


「んく……」


 ……甘美な時間が流れ……。


「……ぷはあ。愛、感じてくれましたか?」


「は、はい……」

「でしたら♪」


 再び杖を握り。


「え゛っ」

「愛情表現、再び参りますわ」

「待って待って待って! 参らなくていいから! ていうか、私はもう参ってるからああああ!」

「あははは、ソフト天誅!」

 ブン バギャ!

「うっぎゃあああああ!」



「……ていう感じで……」


「…………」


 流石の代行……じゃなくて補佐も、言葉が無いようで……。


「……リファっち、ズレてるとは思ってたけど、その辺りがズレてたのかあ……」


「で、そのズレ方が致命的なのよね……」


「「…………」」


「……何か手が無いか、考えてみるよ、にゃは……」


 ……ここまで困惑気味なにゃは、聞いた事が無い……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=529740026&size=200 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ