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籠の中の撲殺魔っ

「…………」


 ど、どうしましょう。


「…………う、うぅん」


 びくっ!


「…………」


 …………ホッ、どうやら寝言のようですね。


「……う、うぅん」


 びくっ!


「ぐふぅ……げはあ!」


「きゃああああ、血を、血を吐きましたわ! 治療、治療しなくては!」


 リジー、一切手加減しなかったのですね!?



 大幅に制限されてしまっている魔術は、ほんの少しずつしか使用できませんでした。


「本来は籠を破る為に必要なのですが、今はそんな事を言っていられませんわ」


 命に関わってそうな傷を重点的に治していきます。


「リブラ、しっかり」

 パアアアア……

「うぐぅ、ううぅ」


 徐々に徐々に傷が塞がっていき、リブラの顔色も目に見えてよくなっていきます。


「どうやら身体が傷付き過ぎて、溜めていた魔力が逃げていってしまったのですね」


 残っていた魔力を本体である頭が吸い上げ、朦朧としていた意識が覚醒していきます。


「ぅ……ぅ……リ……リファ……」

 ひぅぅ!? い、今はリブラの声だけで、全身が反応してしまうぅ……。


「命に関わる傷は塞ぎました。後は魔力が回れば動けるようになる筈ですわ」


「ま、魔力…………そうだわ、リジーの奴が、急に襲ってきて……!」


「わたくしも似たようなものです。結局この呪縛の檻に閉じ込められてしまいました」


「呪縛の檻って……あああっ!?」


 わたくしの言葉で己の現状を理解したリブラは、大剣を手にして檻に切りかかります。

 ……が。


 バギィィン!


「そ、そんな!? リブラ家に伝わる聖属性の大剣が!?」


 この檻、どうやら対聖属性の制限が、かなり強力に付与されているようです。


「制限を超える聖属性を一気に叩きつけないと、破れない仕組みなのでしょうね」


「聖属性以外の魔力をぶつければいいんじゃない?」


 聖属性以外……ですか。試しに生活魔術の『発火』を檻に向けてみます。

 が。


 ィィン!


「駄目ですわね。おそらく聖属性以外は、完全な耐性を付与されているようですわ」

「完全耐性……な、何て高度な対魔術性能……」


 リジーは呪いの分野に関しては、マスタークラスに匹敵してますわね。


「どちらにしても、早くここから脱出しなくてはいけませんわ」


 リジーが設定した時間より前に、この檻から脱出しなくては。

 じゃないと……。


「り、理性が保ちませんわ……」

「え、理性?」

「ななな何でもありませんわ!」


 ほ、本当に心臓に悪い……! こんなに近くにリブラが居るだけでも限界なのに、そ、その。


「あーあ、修道着がボロボロだわ」


 あ、あちこちから肌が覗いていて! し、しかも胸は片方……!


「あー、まあリファリスの前だったらいいか」

 スルッ


 はぅああああああああああっ!?


「全部脱いじゃえ……よっと」

「ひぃあああああああああっ!!」

 ガタガタン!

「ちょ、リファリス、動かないで!」

 たぷんっ


 リブラの動きに合わせて、豊満な胸が揺れ…………ひぃああああああ!!


 ガタガタン、ゴトン!

「あ」

 ゴトゴトガタン! ガッシャアアアン!

「「きぃあああああああああああ!!」」

 固定されていなかった檻は簡単に浮き上がり、そのまま半回転したのです。



「い、いたたた……リファリス、大丈夫?」

「わ、わたくしは平気……!!!?」


 わ、わたくしの手のひらが、リブラの胸に……!


「あふぁぁ! も、もう……!」


「リファリス、落ち着いて。一旦深呼吸」


「あ、は、はい。すぅぅぅ……はぁぁ」


 脳内に新鮮な空気を送り込み、熱くなりかけていた情欲を冷却します。


「……はぁぁ、す、少し落ち着きましたわ」


「良かった……だけどさぁ、どうしようか、この現状?」


 ひっくり返った檻に、全裸のリブラとわたくしだけ。唯一中にあった寝具は、ひっくり返った時にグチャグチャになっています。


「とりあえず敷き布団を直しましょう」


 横倒しになった檻では、腰を下ろせる場所すらありません。布団がクッションになれば、座るくらいはでき「リファリス」ひぃあああ!?


 ギュッ

「!!!!!!!?」


 す、素っ裸のリブラが、背中に抱き着いてきて……!?


「リファリス、ごめんなさい。身体に残っていた魔力がもう……」


 そう言ってわたくしの法衣を剥ぎ、背中に直接肌を密着させ……!


「く、う、あ」

「素肌同士でなら、魔力を直接やり取りできる。緊急事態だから、許して」

「あ、う、あ、あ、ああ」


 も、もう、理性が…………!


「はぁぁ……リファリスの魔力、温かい」


 も、もう……!



 プチィン



 ガバッ!

「リファリス!?」


 リブラを布団に組み敷いたわたくしは、もはや邪魔物でしか無い法衣を。


 ビリビリビリィ!


 下着ごと破り捨てます。


「リファリス?」

「リブラ……もう我慢の限界ですわ!」


 そのまま舌をリブラの肌に這わせ。


「はあああああん!?」

「リブラ」


 今まで必死に閉じ込めていたものを、口から吐き出します。


「リブラ、愛してますわ! グチャグチャに壊してしまいたいくらい、頭を木っ端微塵にしてしまいたいくらい、もう気持ちが止められませんの!」

「え、リ、リファ、リス、ひあああ!」


 急速に燃え上がった情欲は、体内で阻害していた呪いを一気に燃やし尽くし、封印状態だった魔力を溢れさせます!


「あああ、魔力が」


 肌から肌へ魔力を受け取ったリブラが急速に回復していきます。


「これでしたら、リブラの身体も耐えられますわね」

「リ、リファリスゥ……優しくして」

「いえ、無理ですわ。だって」


 わたくしの右手には、既に聖女の杖が握られています。


「わたくし、大好きな大好きなリブラを、撲殺したくてたまりませんもの」

「………………え?」

「受け取って下さいな、わたくしの愛情表現を!」

「ええ!?」

「愛してます!」

 ブゥン バガッ!

「ひぎゃあ!」

「愛してます!」

 ブゥン ガゴッ!

「あぎゃあ!」

「愛してる愛してる大好き大好き愛してる大好き大好き愛してるぅぅぅぅ!」

 ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!

「ぎゃあああああああああああああああああ!!」

死亡確定の愛情表現。

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