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災厄の撲滅魔っ

「魔女様! 魔女様!」


「ふんふふーん……何よ、五月蝿いわね。もうすぐ紅星が見えてくる筈なのにさ」


「た、大変、大変です! 魔王様から……」

「魔王様から!? 何、何があったの!?」

「す、彗星が……」

「彗星が!?」

「……消えたそうです」

「…………は?」

「文字通り、彗星そのものが、消滅したそうですっ」

「……はああああああああ!?」



「大司教猊下!」


「分かっておる。彗星が消えた件であろう?」


「は、はい! それもなのですが……」


「……まだ何か起きているのか?」


「は、はい。各地で拡大していた謎の疫病が、急に収束し出しまして」


「……おそらく聖女であろうな。もう対抗魔術を考えたか」


「そ、それと……その疫病によって命を落とされた方々が……」


「…………まさかとは思うが……聖女がやってくれたのか?」


「その……全員生き返ってきたそうで」


「く……! 一度死んだ者を生き返らせる時は、我に相談しろとあれ程言ってあるのに……!」


「ご加護である、奇跡である、と各地の教会に信者の方々が押し寄せ、祈りを捧げているようです」


「む……皆が祈りを……か」


「はい。口々に『聖女様万歳』『聖女様に一生ついていきます』と呟きながら」


「聖女教では無く聖心教なのだが!?」



 ……どうやら、わたくし、またやり過ぎてしまったようで……。


『聖女様、ばんざーい!』

『『『ばんざーい!』』』

『聖女様、ばんざーい!』

『『『ばんざーい!』』』


 外からわたくしを讃える声が一日中……!


「ふぁぁ……お、おはよぅぅぅ……」


「ルディ、もしかして」


「うん、まっっったく眠れなかった……」


 そうでしょうね。一晩中外で万歳三唱を繰り返されては、誰でも眠れませんわよね。


「何だか申し訳ありません……」


「いや、皆は喜び勇んでやってるだけだから……ま、悪い事じゃないんだしね、にゃは……」


 にゃは、にも元気がありませんわね……。


「むぅぅ……五月蝿過ぎて、全員呪ってやりたい……」


 あら、リジーもですの。


「おはようございます。やっぱり眠れませんでしたの?」


「あんな騒ぎの中、眠れる筈が無いと思わりぇい……」


 思われ、にも切れがありませんわね。


「これは……本格的に何とかしなくては……」


 ドンドンドン!

『聖女様に会わせて下さい!』

『聖女様にお目通りを!』

『聖女様ー! 我らの聖女様ー!』


「にゃは!? ま、不味いよ、どんどんヒートアップしてる!」

「眠れない上に、揉みくちゃにされるのはご勘弁!」


 わたくしだって嫌ですわよ!


「こ、こうなったら、迎え撃つしか無いね」


 え?


「うむ。この館に入って来た者、全て斬り捨てる」


 ま、待って下さいな!


「斬り捨て御免は流石に不味いですわ!」

「はっ!? ね、寝不足でつい」

「むぅ、斬り捨て御免が不味ければ、撲殺御免で」

「だから迎え撃つのは駄目ですから!」


 ドォン! ドォン!

『『『聖女様あ! かむひあああ!』』』


 ああああ、集団で意味不明な雄叫びを上げてますぅぅ!


「こうなったら、ライオット公爵様!」


「公爵様なら昨日のうちに消えた」


 公爵様ああああ!?



『皆の者! 落ち着くのじゃ! 静まれええい!』



「いや待って。外で諌めようとして下さってるの、公爵様?」


 た、確かに、あの声は……。


「だけど、これだけ興奮状態の群集相手だと」



『五月蝿い、変態ジジイ!』

『そうよ、覗いてばっかでまともに働きもしない エロジジイ!』

『あっち行ってろ、老害ジジイ!』


『え…………うわーーーーん! ワシ、傷付いたああああ!!』



「…………あれ、しばらく立ち直れないと思われ」


 ご愁傷様です、ライオット公爵様。諌めようとした勇気にだけは、敬意を表しますわ。


 ドォン! ドォン! バアアアン!

「「「聖女様ああああ!!」」」


「うわ、扉が破られたと思われ!」


 思う間も無く現実ですわ!


「「「聖女様ああああ!」」」


「ひあああ、あっという間に囲まれて」

「逃げ場が無いいい!」


「聖騎士、邪魔!」

「代行、邪魔!」


 ポイポポイ

「「あひゃあああああ!?」」


 リジーとルディが窓から捨てられましたわ!


「「「聖女様ああああ!」」」

「あひゃあああああ!」


 つ、捕まって……!


 ムニュ!


「ちょ、どこを触って」


 ムニュムニュ!


「ま、待って下さい、そこは」


 ムニュ! ムニュムニュ!


「触らないで下さい!」


 モミモミモミモミ


「で、ですから、触らないで……」


 モミムニュモミムニュ


「触らないでって……」

 

 ムニュモミムニュモミムニュモミ


「触らないでって言ってますでしょう……?」


 ゾクリッ

「「「ひいっ!?」」」


「……わたくしにお触りしたお馬鹿さんはぁぁ……どこの何方さんかしらぁぁぁ?」


「お、俺じゃありません!」

「わ、私、知らない!」

「ワシでも無いぞ!」


「……うふふふ……容疑者多過ぎで分かりませんわぁぁぁ……ですから」

「「「で、ですから?」」」


 胸の谷間から、聖女の杖を取り出し。


「全員、撲殺すれば済む話ですわね♪」

「「「え゛っ」」」

「これだけ多ければ、振れば当たりますわね! さあさあ、楽しい楽しい撲殺タイムですわあああああ!」

「「「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」」」

「あはははははははは! 待ちなさい、あっははははははははは!」



「……大司教猊下」


「何だ」


「ライオット公爵領にて、疫病を遥かに超える惨劇が起きているようですが」


「我は知らぬ。放っておけ」

明日は閑話です。

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