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ついに始まった災いっ

「ほうら」

『止めてっ』

「ほうら……うふふ、今、君に届いたよ」

『お願いだから止めてっ』

「うふふふ……広がっていくよ。どんどん広がっていくよ」

『止めて! 止めて止めて止めてえ!』

「うふふふ……」



「誰が止めるもんか」



「…………え?」


「え?」

「リファっち?」


 あ……。


「な、何でもありませんわ」


 今の声は……まさか……。

 星の囀り?


「……ルディ、頼みたい事があります」


「にゃは~、何ー?」


「ルドルフ……大司教猊下に掛け合って、大陸全土の調査を行ってほしいのです」


「………………は?」


「大陸全土を隈無く、と言う訳ではありません。各教会に、何か異常が起きていないか、確認するように通達してほしいのです」


「各教会に通達……くらいなら、アタシの名前でもいけるよ?」


「でしたら今すぐにお願いします。今は一秒すらも惜しいのです」


 そう言われたルディは頷くと、スッと目を閉じて。


「……『大司教代行たる我が問う。各教会の長よ、汝等が周りで起きているであろう異変を、事細かに報告せよ。繰り返す、大司教代行たる我が問う……』」


 音声魔術を大陸全土に拡散させているようです。わたくしにはできない芸当ですわ……流石はルドルフの半身です。


「……まあ、すぐに返事が来るって事は無いから……半日は様子見だね」


 でしょうね。ただでさえ彗星の事であれやこれやと騒ぎになっているのですから、そちらへの対応で精一杯でしょう。


「でしたら午前中は奉仕に勤しんで、向こうからの返事を待ちましょう」

「にゃは~、そだね~」

「奉仕作業って……道行く人を撲殺して回るんぎゃはあ!?」

「そこまで撲殺好きではありません!」



 太陽が頂点に差し掛かった頃。


「……にゃは」


 ルディが独り言を呟き始めました。


「……にゃは、にゃはにゃは」


「どうしたんですの?」


「んー、相手からの返信がくるとにゃは、つい反応しちゃってにゃはにゃは、声に出ちゃにゃはうんだ」


 何ですの、それ。


「……つまりメールの着信音みたいな?」


「「めーるの……ちゃくしんおん??」


「あ、何でも無い何でも無い」」


 ……リジーはたまに意味不明な事を言いますわ。


「にゃは、にゃはにゃは……リファっち、多分各地の教会からにゃはの返信だにゃはよ」


 それだけにゃはにゃは反応しているのですから、かなりの返信が来ているのですね。


「ルディ、どのような反応が来ているか、読み上げて頂けませんか?」


 そう言われたルディは頷くと、目を閉じて集中し始めました。


「……っ……っ……!? ……!!!?」


 ですが。


「う、うわああああああ!?」


「ル、ルディ!?」


 突然頭を抱えて、しゃがみ込んでしまったのです。


「どうしたんですの、魔力切れですか?」


 人によっては、魔力切れで体調不良を訴える事があるのです。


「ち、違う…………な、何よこれ……本当なの!?」


「っ!! ま、まさか、各地で異変が?」


「異変なんてレベルじゃない……こ、これは……!」



 ある地方都市では。


「く、苦しい……苦しいよぅ……」

「い、息が出来ない……」


「先生、これは……」

「どの治療魔術を用いても、全く効果が無い……」


「先生、子供を助けて!」

「お父さんを、お父さんを治して下さい!」


「く……も、もう魔力が……」

「せ、先生、しっかりして下さい!」



 また、ある都市では。


「せ、先生、た、助けて……」

「う、うぅ、く、苦しい……」


「わ、私達にも、似た症状が……」

「うぐぅ……ま、魔術が、使えない……」



 また、ある都市では。


「…………」

「…………」


「…………」

「…………」


 その後、治療魔術院内で、魔術士を含めた患者全員が死亡しているのが確認されたそうです。



「……こんな感じの報告ばかりだよ、にゃは……」


 これが……〝災い〟なのですか。


「……セントリファリスには?」


「今のところ、被害は出ていないようだよ。聖地サルバドルも」


「……リブラに『しばらく外出するな』と伝えて下さいますか?」


「にゃは~、分かったよ…………で、リファっち、これって……疫病だよね?」


 ええ、間違いありませんわ。


「おそらく、これが彗星がもたらした災いなのでしょうね」


「す、彗星が疫病をもたらした? そんな事、あり得るの?」


 リジーの疑問は尤もです。


「わたくしが言っている事は、あくまで仮説でしかありません。ですが、過去に流行した疫病も彗星……紅星が現れた時期に発生しているのも間違いありません」


 魔王熱、血塗れ風邪、黒色病。突然発生し、瞬く間に大流行していったこれらの疫病は、人間達に多大な犠牲者を出した後に収束していきました。


「過去にも彗星と疫病との因果関係は、議題に上がった事はありました。しかし彗星は聖なるものとされていた為、それ以上の調査はなされなかったのです」


「うん、確かリファっちも彗星の災いを疑ってたよね」


「ええ。あの時はまだ枢機卿だった頃のルドルフに諭されて、矛を収めるしかなかったのですが……」


「こうなった以上、彗星説は濃厚になってきたね」


 やはり破壊せねばなりませんか……紅星は。



「あははは、皆苦しんでる、あははは」

『止めて! じゃないと、君が』

「僕が、何だい?」

『君が、危ない』

「は? 何で僕が危ないんだい?」

『僕の中にいる、危険な人が君を……』

「は?」


 ……ブゥン


「な…………があああああああああああああ!?」

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