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爛々と撲殺魔っ

 シスターめ、意外と頑固じゃの。あれから二週間も立て籠もりよった。

 その間にもシスターを慕う人々の心配は募るばかり。そして、町長や例の警備隊長代行への風当たりは増すばかり。

 これを計算しておったのかは分からぬが、ついに相手が動くのじゃが……さてさて、また見て行ってみようかの。



「やほー、リファリス」


 そろそろ退屈に感じ始めて来た今日この頃、リジーさんの訪問は大変ありがたいです。


「はい、頼まれていた食料」


 本当に、大変ありがたいです。


「いつもありがとうございます。リジーさんも食べていかれます?」


「えー……リファリスの料理、精進料理みたいだから要らない」


 しょーじん料理?


「あぁ、要は肉が無いから」


 成る程。わたくしは肉を好んで食べませんから、どうしても野菜中心の生活になってしまいがちですわ。


「何で野菜ばっか食べて生活できるのか疑問と思われ」


「わたくしから言わせてもらえれば、肉ばかり食べるリジーさんが何故太らないのか疑問ですわ」


 それを聞いたリジーさん、ニヤリと笑い。


「私、真の栄養源の摂取に気を付ければ、太らない体質」


 な、何ですって……!?


「あ、貴女、わたくしを含めた全人類の半数を敵に回しましたわよ……!」


「……スリムなリファリスが言っても、説得力皆無と思われ」


 スリム? わたくしが?


「最近下着が合わなくなって、買い直さなくてはならなくなったんですのよ!?」


 ……上から下までマジマジとわたくしの身体を見たリジーさんは、ある箇所で目が止まります。


「……買い直した下着って、トップ?」


「そうです」


 リジーさん、自分のそれを持ち上げて、次にわたくしのそれを持ち上げて……。


「……負けた」


 いえ、逆にわたくしには必要無いものですから、勝ったも負けたも無いのですが。


「それよりリジーさん、もう一つ頼んでいた件はどうでしたの?」


「調べてほしいって言ってた話? もう分かってるよ」


 そう言ってから窓まで移動したリジーさんは、地上を指差し。


「もうすぐ来ると思われ」


 はい?


「何方が、ですの?」


「だから、リファリスが調べてほしいと言っていた、警備隊長代行のお父様」


 は、伯爵自身が、ですの!?


「あ、ほーら、悪趣味な馬車が来た」


「は、早く言って下さいな! わたくし、寝間着のままですのよ!?」


 急いで寝間着を脱ぎ捨て、いつもの法衣を取り出します。


「あーあ、伯爵本人が降りてきた」


 ま、間に合いません! 如何に女性の敵の父親とは言え、相手を待たせるなんて無礼は許されません!


「あーあ、伯爵本人がドアの前に」


 くぅぅ……! 胸が邪魔して法衣が通らないですわ……!


「……立ってない」


「…………へ?」


「ぶっ。くくく……リファリス慌てすぎ。ぶくくく……」


「な、ならば、伯爵様は……」


「くくく……向かってるのは事実だけど、まだ到着してない……ぶぷぷぷぷ」


 …………そうですか。


「わたくし、リジーさんの口車に乗せられたらのですね……」


 ……顔が逆光で隠れ、紅い月が三つ浮かび上がり……。


「え、何でまだ昼前なのに西日が?」


「何故でしょうねぇぇぇ……おそらくは」


 聖女の杖を握り直し。


「リジーさんへの断罪を、天もお認めになられたのですわ」


「だ、断罪って……スキンシップくらいの悪乗りなのに!?」


「これが悪乗りで済まされるのでしたら、わたくしのこれもスキンシップですわよ?」


「いやいやいや、死ぬまで殴られるのがスキンシップだったら、世の中死人だらけと思われ!」


「大丈夫ですわ、全員まとめて蘇生して差し上げますから」


「リファリス、本気度MAXと思われ!」


「もうすぐ伯爵様もいらっしゃる事ですから、簡潔に済ませますわよ。はい、天誅天罰滅殺抹殺撲殺」

 ボカッボカッボカッボカッバキャア!

「ごめんなさいいいいいっ!!」



 ドンドンドンッ


「聖女様! 聖女様はいらっしゃいませんか!」


 ……ギィィ……


「……何方様でしょうか……」


「おお、聖女様ですな! 儂はブルタスの父親で」

「ブルタス……け、警備隊長代行の!? ひぃっ」

 バタンッ!


「聖女様! 開けて下さい! 愚息は連れて来ておりませんので!」


 ……もう少し待ってから開けましょうか。これで伯爵様は、わたくしが怯えていると勘違いするはずですわ。


 ドンドンドンッ


「聖女様! どうか儂に謝罪する機会を与えて下され! 愚息の代わりに謝りますので!」


 へええ……親が責任を取る、と仰るのですわね。ならば、そろそろ頃合いでしょうか。


 ガチャ……ギィィ


「……分かりました。ではどうぞ……っ!?」


 バタァン!


 顔だけ覗かせていた扉を、伯爵様は無理矢理こじ開けました。


「聖女様、どうか愚息を許してやって下さらんか! お陰で外を歩く事も儘ならぬようでの」


「あ、あの?」


「聖女様が許した、となれば愚息も再び警備隊長代行に返り咲けましょう! ほれ、早く許して下され!」


「あ、あの、謝罪は……」


「謝罪? ああ、愚息が悪かった……これで良かろう!」


 …………はい?


「それが、謝罪ですの?」


「伯爵の儂が直々に頭を下げに来たのだぞ! すぐに許すのが道理ではないか!」


 ……この方、道理という言葉の意味が分からないのでしょうか?


「もう一度お聞きします。それが、謝罪ですの?」


「何度も言わせるな! 伯爵の儂が直々に頭を下げに来ておるのだぞ! 聖女か何か知らぬが、さっさと許しの証を出さぬか!」


 ……この親にして、あの子供あり、ですわね。


「……伯爵様、わたくしに許しを求めるのでしたら、些か手順が違いましてよ?」


「はあ? 何を言うか、この小娘が!」


新貴族(ロード)であり、シスターであり、畏れ多くも聖女の名を冠する事を許されているわたくしに対して、このような口だけの謝罪がまかり通ると思いますの?」


「ぐ……な、何を言うか!」


 そう言って伯爵……様は、わたくしに手を振り上げたのでした。

この伯爵殺っちまえ、と思われる方は、高評価・ブクマを頂ければシスターが念入りに殺っちまいますので、よろしくお願いします。

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