変態ジジイとおっぱい神様っ
ギィィィィッ
「誰だ、ライオット公爵領領都の入口で騒いでいるのは!?」
あら、声を掛ける前にアッサリと開門。
「ワシじゃよ、ライオット公爵本人じゃ」
「え…………こ、これはこれは変態ジジ……じゃなくて公爵様、お帰りなさいませ!」
「うむ。早速じゃが中に入ってもいいかのぅ?」
「はい、是非…………あ、少しお待ち下さい」
「何がじゃ?」
「早速住民達にも警告……いえ、知らせておかねばなりません。それに監視……いえ、歓迎のレセプションの準備もせねば」
警告? 監視?
「いやはや、公爵様がお帰りになっと知れれば、領都をあげての大警戒……いえ、大歓迎ですからなあ。申し訳ありませんがお待ちを……………………エマージェンシー! エマージェンシーィィィィ!」
……な、何の騒ぎなのでしょうか?
「変態ジジ……公爵様、お帰りなさいませ!」
「変態ジジ……公爵様、お待ちしておりましたぞ!」
「変態ジジ……公爵様、心から警戒……歓迎致します!」
「どうじゃ、我ながら凄い人気じゃろが」
……人気……あるんでしょうか?
「にゃは~、アタシもそろそろ鎧に着替えようかな」
この馬車の中で、唯一鎧を装着していなかったルディが立ち上がり。
パチンッ
ブゥンッ
指を鳴らして一瞬で装着完了…………えええっ!?
「い、今、何をしたんですの!?」
「え? 空間魔術の応用だけど?」
お、応用で早着替えができますの!?
「ど、どうやって!?」
「どうやってって、アタシは右手の指先を空間魔術の基点に設定してるから……」
パチンッ
ゴトッ
「やり方次第でどこにでも出せるんだよ」
「どこにでも!?」
「それで、鎧を自分の身体周りに出現するよう設定して、あとはパチンッてね」
パ、パチン、パチンが重要ですのね。
「むむむ……えいっ」
ベチッ
「難しいですわね……えいっ」
ベチンッ
「あら、音は鳴りますわね。でしたら」
「待って。リファっちは何をしてるの?」
「え、貴女と同じ事ですわ」
「だからって、何で胸をムギュッとしてるの?」
「ええ、パチンと鳴らして、任意の位置に物を出せるように……」
「リファっち、それは無茶だから」
「いや、何とかなりそうで」
「そうじゃなくて、ビキニアーマー姿でそれは駄目だから」
「え、何故ですの?」
「駄目だからっ」
「ですから、何故…………あ」
わたくし達のやり取りを聞いていたであろう公爵様の目尻が、下がりに下がっているのをルディに示され、挑戦は後日に持ち越す事にしました。
「……大浴場で挑戦しましょう」
「それも駄目。アタシを始めとして、女性陣全員が自信喪失するから」
それも駄目なんですの!?
町で一番の館に入り、そこで馬車から降ります。
ガチャガチャ
「変態ジジ……旦那様、お帰りなさいませ」
「「「お帰りなさいませ」」」
執事らしき壮年の男性を中心に、メイドさん達がズラリと並び、わたくし達を出迎えて下さいます。
「うむ……セバスチャン、留守中異常は無かったかの?」
「はい、変態ジジ……旦那様。魔国連合も大人しいものでした」
何故に執事の方には、セバスチャンという名の方が多いのでしょうか?
「それと客人じゃ。もてなすように」
「畏まりました」
そう言ってわたくし達の前でセバスチャンさんが腰を曲げます。
「ようこそ、変態ジジ……ライオット公爵邸へ。私めは屋敷の留守をお預かりしております、セバスチャンと申します。ご用向きがございましたら、何なりとお申し付け下さい」
「丁寧な挨拶ありがとうございます。わたくしはシスターリファリスでございます」
「シスターリファリス……聖女様でいらっしゃいますね。ご高名な聖女様のお目にかかれまして、光栄でございます」
「おほん。アタシはルーディアだよ~ん、にゃは~」
「ルーディア……様、でいらっしゃいますか?」
「大司教代行で在らせられますわ」
「だ、大司教猊下の……大変失礼致しました!」
「い~よい~よ、にゃっはっは~ん♪」
「ルディ、もう少し代行らしい所作をなさいな。貴女みたいな幼女がにゃはにゃは入ってきたら、誰でも大司教代行とは思いませんよ?」
「リファっち、何気に幼女キャラだとかってディスらないでよ!?」
「ディスられたくなければ、ちゃんと代行の職責を果たすのですわね」
大司教猊下から、ルディの監視を頼まれていますから。
「わかったよぅ、ブーブー」
口応え、マイナス三点っと。
「それはそうとセバスチャンさん」
「セバスチャンで結構でございます……何か?」
部屋に案内される道すがら、気になっていた事をお聞きしましょう。
「公爵様には何故か妙な冠詞が付いていませんか?」
「……変態ジジイ……でございますか?」
「はい、それです」
「…………旦那様の特殊能力はご存知でいらっしゃいますね?」
「ええ、『千里眼』と『順風耳』ですわね」
「問題は『千里眼』の方でございまして……」
「……と仰いますと?」
「要は悪用するのです」
……はい?
「悪用?」
「はい。本人はバレていないと思っているようですが、ああも本人しか知り得ない黒子や痣を言い当てられては……」
「ま、まさか、その対象は……」
「はい、女性限定でございます」
ジャキン!
「セバスチャンさん、公爵様の部屋へ案内して下さる? 撲殺します」
「畏まりました」
「うん、アタシも便乗するよ。刺殺もいいよね?」
「結構でございます」
二三日、ライオット公爵様が部屋に籠もりっぱなしになったそうですが……理由は存じません。
ジジイを殺っちゃった。




