表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/428

動揺と撲殺魔っ

「ウフフフフ」

『こ、怖いよう』

「え、何が?」

『だって、君がアカホシだから』

「え、駄目なの?」

『だって、皆が君を怖がるんだもの』

「え、そんな筈無いよ」

『嘘じゃないよ、明るい方の子達は叫んでるよ、来ないでって』

「そんな筈無い。だってさ、暗い方の子達は、僕を待ち焦がれてるよ」

『そっちが嘘だよ。暗い方の子達だって、君が来る事を望んでいない。誰も滅びたがっては』



「…………誰が、滅びだって?」



「っ!?」

 ザバッ


 後ろを振り返って……誰も居ません。


「……誰かの声が聞こえた気がしたのですが……」


 沐浴中に、背後で起きた出来事でしたから、もしかしたら覗きか……とも思ったのですが。


「……気のせいだったみたいですわね……」


 わざと聞こえるように呟いてから。


 バシャアッ

「ぅひゃあっっ」

「冷たいぃぃっ」


 やっぱり、二人とも居るんじゃありませんかっ!


 パチャパチャパチャ

 カシャア!


 大量に水を含んだ布の音が近付いてきて、目隠し用のカーテンを開け放つ音。


 ドンッ

「わぶっ」


 最終防壁である魔力結界に阻まれ、顔面からぶつかるリジー。こちらからは丸見えですので、結構笑えて……クスッ。


「む、今リファリス笑ったな。だったら…………≪呪われ斬≫」

 ザキン! ザキン!


 あら。わたくしの結界を切り裂くなんて、やりますわね。


 ギギ……ビシビシビシビシッ


「壊れたのでしたら、修復するまでですわ…………『修復』」


 ビキビキビキッ!


 崩れかけていた結界が再構築され。


「え……あいだだだだだだだだっ!?」


 その構築に巻き込まれたリジーが、妙な格好で壁の一部となって宙に留まって……プッ。


「く……ふふふふ……あはははは、あははははははははは!」

「ちょ、笑ってないで助けていだだだだだだだだだ!!」



「……リファリスゥー、もう解放してよー」


「駄目です。覗こうとした罰ですわ」


「覗きじゃない!」


 法衣に腕を通しながら、結界による締め付けを少し強くします。


 メキメキメキメキ

「いだいいだいいだいいだいいだいいだい!」


「さて、リジー。急に盛った理由は分かりませんが、十回くらいは撲殺される覚悟はありまして?」


 メキメキボキボキ

「いだだだだだだだ覚悟無い無い無い無い無い無いいだいいだいいだい!」


「覚悟が無くわたくしの沐浴を覗いたと?」


「だから覗いたんじゃなくて」

 メキメキボキボキグキィ!

「…………あきゃ」


 あ。



「リジー、本当に申し訳ありませんでした……」

「ムスッ」

「クク……そうむくれないの、リジー……クスクス」


 腰を痛めて自力で歩けないリジーに、笑いを堪えながら肩を貸すリブラが恨めしいですわ。


「まさか本当に用事があっただなんて」


「覗き対策用に厳重に結界を張るのもいいけど、こういう急用の時は不便を通り越して邪魔だわね」

「うい。切り裂いてでも中に入らざるを得ない」


「本当に申し訳ありませんでした……が、緊張連絡用の術式は教えた筈ですわよ?」


「「……え?」」


 ……忘れてますわね。


「結界前で『緊急連絡』と言えば、声だけのやり取りはできる……と教えた筈でしたが?」


「「……あ」」


 全く、この二人は……。


「友人としては申し分ありませんが、弟子としては落第級ですわね……」


「「ら、落第……申し訳ございません……」」


 謝る前に、少しでも座学に身を入れて下さい。


「で、何の用件でしたの?」


 聞かれたリジーが、ポンと手を叩きました。


「忘れてた。リファリスにお客さんがぶごぉ!?」

「それを早く言いなさい!」



 バタバタバタバタッ!


「お待たせしました!」


「いや、構わぬ。急に訪ねて来たワシが悪いんじゃからの」


 それにしても、珍しいお客様です。


「聖リファリス礼拝堂へようこそ、獅子心公(ライオンハート)様」


「ライオット公爵で構わぬよ。じゃからワシも聖女殿の事はシスターと呼ばせてもらう」


「分かりました。では改めましてライオット公爵様、ようこそおいで下さいました」


「いやいや、急に押し掛けて済まんの。シスターの事じゃ、ワシが訪ねてきた理由も見当がついておるじゃろ?」


 ええ、まあ。『千里眼』『順風耳』という特殊能力をお持ちのライオット公爵様ですもの、既にご存知でしょうね。


「……彗星の事ですわね?」


「うむ。今回はどのように対処しようか、我が家でも話し合っておったのじゃ」


 やはり……。


「……公爵様は……どうお考えで?」


「ワシは……そうじゃな。自然な流れに任せるしか無いかと思うがの」


 傍観せよ、と?


「しかし、ただ手をこまねいて見ているだけでは……」


「分かっておる。今回はシスターを招待したのはワシじゃからの、何らかの対策を取らねば、とも思うておる」


 ……え?


「わたくしを、招いた?」


「む……? シスター、まさか、覚えておらぬ……のでは無かろうの?」


「申し訳ございません。何も心当たりが……」


「……はぁぁ……去年の夏に、我が領地で行われる彗星祭に是非とも出席して下さらんか……とワシから頼み込み、了承してくれたじゃろが」


 …………あ……ああああああああああっ!!


「本当に申し訳ございません! すぐに日程を調整しますわ!」


「……友人としては申し分ありませんが……」

「……師匠としては如何なものかと……」


 は、反論できません……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=529740026&size=200 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ