事件の顛末と撲殺魔っ
警備隊長様の捕縛により、他の様々な悪事が明るみになりました。
「ラブリの話だと、隊長以外にも関わってた人はいたみたいね」
リジーが探りを入れてくれてますから、ボロを出す人がいると思いますが……。
ガタタッ
っ!? や、屋根裏?
「……鼠にしては……音が大きいですわね」
「あはは、ジャイアントオオネズミかな?」
……そんなの居るんですの?
ゴトト……バキャア!
「「っ!?」」
天板を鎧の足が踏み抜いて…………鎧の足、ですわね。
「リジー、何をしてるんですの? さっさと降りてきなさいな」
バキ、メキメキメキッ
「とうっ!」
バリバリバリ ズダアアアアアン!
「あ゛あ゛あ゛あ゛……」
「……その高さから、鎧で着地すれば、さぞ全身に響くでしょうねえ……」
それよりも、天井をちゃんと弁償して下さいよ。
「結果として、警備隊の上層部は真っ黒」
上層部全体の犯行でしたの。
「警備隊長の素行が悪いのは元々。今回の一件にはあまり関係無い」
「元々ですのね……」
ハラ、という言葉のほとんどを網羅していたらしいです……ある意味凄いですわね。
「で、その警備隊長の囁きに乗っちゃったのが、全小隊のうち、八割の小隊長」
本当に真っ黒ですわね!
「……まさかとは思うけど、警備隊長と対立してた若い隊員も?」
「ビンゴ。と言うより、今回の一件のNo.2」
えええっ!?
「実技大会と剣術大会のどちらに力を入れるか、揉めていたのは本当。だけど日程を過大申告して、遊び回っていたのは共通」
……まさか、同じ穴の狢だったとは……。
「……共通の悪巧みをしていたから、表向きは余計に対立していたのかもしれないわね」
誤魔化す為、ですか……。
「リファリス、話を聞いてみたい?」
「そう……ですわね。現在の警備隊は信用0ですから、わたくしが詰問するしかありませんし」
「オッケー、なら連れてくる」
「連れてくるって……どこに居ますの?」
「押し込めておく部屋が無かったから、仮でリファリスの部屋に」
バギャ!
「ぐふぁ!?」
メキャ!
「げひぃ!?」
ボカボカボカボカボカボカボカボカボカ
「し、死ぬぅ! 誰か助けてあべしぃ!」
「あ、あばば……」
ボコボコなったリジーは放置しまして、早速若い隊員さんに問います。
「貴方は隊長様が許せなかったのでしょう? 何故組んで悪さをしようと思ったんですの?」
「…………別に組んでいた訳じゃない。たまたま同じような事をしていただけだ。あいつと一緒にしないでくれ」
「しかし、隊長様の協力無しでは、今回の一件は成り立ちませんわよ?」
「…………」
「そこはどうなんですの?」
「…………」
……しばらく沈黙が続きました。そろそろ撲殺しようかと思い始めた頃、若い隊員さんはおもむろに口を開きました。
「活力を……与えてやりたかったんです」
「え?」
取り出しかけていた聖女の杖を片付け、続きを聞きます。
「警備隊は……この町の平和を守る為の組織です。ですが、実際の業務は地味な事ばかり。犯罪者を捕らえて華々しい瞬間を見せられるのは、本当にごく一部なのです」
確かに、大半は書類仕事だと聞き及んでいます。
「警備隊の華々しい面だけを見て、憧れる子供達は多い。大きくなって憧れの警備隊に入り……そして大半は絶望します」
絶望する程の書類仕事なのでしょうか。
「そんな若い隊員達の捌け口となるのが、私は剣術大会だと思っています」
「剣術大会が?」
「はい。剣の腕は、訓練で確実に伸びます。努力は嘘をつかない、というのは本当です」
それはそうですわね。
「そして、それを実際に試せて、己の強さを証明する事ができる剣術大会は……必要不可欠なのです」
「言いたい事は分かりました。ですが、それと今回の悪事は別ですわよ?」
「…………はい」
「隊長様達は花街で遊んでいたらしいですが、貴方達も似たようなものでしょう?」
「な……い、一緒にしないでくれ?」
あら?
「俺はできた時間を利用して、剣術道場の体験入門に行かせていたんだ!」
体験入門?
「……ですがリジーは、隊長様達と同様に遊び回っていたと……」
「……全てが全て、剣術に関わる事をしていた訳じゃない。多少息抜きを兼ねて、遊ばせた事は認めるさ……」
一から十まで遊び回っていた隊長様達とは、かなり事情が異なりますわね。
「……分かりました。ロードの権限で、町議会に対して提言しておきましょう」
「え?」
「警備隊の大変さは、わたくしも身を以て体感しました。ですから年に一回の慰労旅行と、希望者には剣術道場へ通う為の補助を出してもらいます」
「え…………い、いいのか?」
「普段身を削って町の為に働いて下さってるんですもの。これくらいは許されますわ」
「……あ、ありがとう……ありがとう……」
「……ですが、罪を犯した事には間違いありません。なので……」
日の光を背後に、顔が真っ黒に陰り。
「……撲殺は……させて頂きますわ♪」
「え゛」
「はい、天誅!」
バガッ!
「ぐぎゃ!」
「天罰!」
ゴシャ!
「ぶべっ!」
「あははは! 滅殺! 抹殺! 撲殺!」
メキャブシャバチャア!
……ゴト
「あはははははは! 部下想いの真面目な小隊長様を撲殺! これはこれでとっっても快感ですわぁ……あははは! あはははははは! あっはははははははは!」
「……結局そうなるのね……」




