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手回しと撲殺魔っ

 いやはや、シスターの肩書きの多さには驚かされるのう。聖女はまあ理解できるのじゃが、まさかロードと貴族院議員まで兼ねておったとは。

 あんた達の世界にも選挙はあるじゃろ? 何、選挙なんて有って当たり前? そうかそうか。

 逆にこの世界では、選挙制度を導入している国の方が珍しいのじゃよ。あんた達は幸せな社会で暮らしておるのじゃのう……。

 む、話が逸れたわい。兎に角じゃ、まだ選挙制度ができて日が浅いこの国で、根強く残る新旧貴族の軋轢がどのような悲劇……いや、撲殺劇を生むのか、見て行く事にしようかの。



「聖女様、誠に申し訳ございませんでした」


 リジーさんと別れてすぐに町長様に面会を申し込みましたが、逆に町長様の方がわたくしの元へ馳せ参じて下さいました。


「頭を上げて下さいな。町長様に罪はございませんわ」


「は、はい……そう言って頂ければ幸いです、はい……」


 額の汗を拭われながら、町長様はペコペコ頭を下げられます。


「しかしシスター、警備隊長代行ですが、いつものようには……」


「いつものよう……とは?」


「あ、いえ、ですから」


「いつものよう……とは、何を言いたいんですの?」


「あ、いや、ですから、その」


「なぁぁぁにが言いたいんですのぉぉ?」


 顔に陰がかかり、三つの紅い月が浮かび……。


「ひ、ひぃぃ!!」


「……うふふ、冗談ですわよ」


「え? あ、あはは、そ、そうですか。はははは、シスターもお人が悪い……」


「うふふふふ」


 ……町長様がわざわざわたくしに釘を刺しにいらしたと言う事は……やはり旧貴族側が圧力を掛けてきているのですわね。

 でしたらわたくしは、新貴族……シスターとしての立場を使わせて頂くだけですわ。


「っ……それより町長様……わたくし、あの男に素肌を晒してしまいました……っ」


「シ、シスター?」


「っ……主に捧げたわたくしの身体を、獣が如き卑しき輩に……耐え難き屈辱ですわ……っ」


「シスター……お気持ちは分かりますので……」


「っ……ですので、穢れた我が身を清める為、本日より暫く教会に籠もりますっ」


「え?」


「っ……心穏やかに祈りを捧げ、穢れが清められるまで……わたくし、籠もりますっ」


「な、ちょっ、シスター!?」


 そのまま席を立ち、わたくしは町役場を後にしました。



 それから数日、本当に教会を締め切り、中に籠もっているのですが……。


「おっはよー、リファリス」


「……毎回毎回、何処から入ってくるんですの、リジーさんは」


 一日に一度はリジーさんが侵入してきます。


「こんな古い教会、忍び込むのは容易いと思われ」


「……由緒ある教会なのですから、廃屋みたいな言い方は止めて頂けません?」


「すまそすまそ」


 全く……。


「それよりリファリス、これで何か状況が変わるの?」


「はい?」


「教会に籠もってるの、どう考えてもショックを受けたから、じゃないと思われ」


「あら、でしたらわたくしは平然としていると言いたいんですの?」


「……昼間っからそれだけ寛いでる人が、ショックで打ちひしがれてるとは思えない」


 確かに、今のわたくしは過ごしやすい格好で、ベッドに寝転がったりしていますが。


「それはまあ……殿方に素肌を晒すのは初めてではありませんし、今更恥ずかしがる年齢でもありませんし」


「…………リファリス、いくつなの?」


「あら、リジーさん、女性に年齢を問うなんて、失礼ですわよ」


「女性同士なら無問題」


 またその……もうまんたい、ですの? 異世界の言語は難しいですわ。


「まあ、リジーさんなら知られて困る事はありませんわね……わたくしは今年で千百二十三ですわ」


「…………は?」


「あら、違いましたわ。千百二十四だったかしら。いえ、千百二十六? 確かそれくらいですわ」


「ままま待って。リファリス、四桁?」


「四桁ですわ」


「に、人間じゃないの?」


「わたくしはハイエルフィン族ですわ、ほら」


 普段は隠している耳を見せますと、リジーさんは納得したようでした。


「成る程、エルフだったんだ」


「エルフではありませんわ、ハイエルフィンです」


「どっちでもいいけど……獣人は居ないのに、エルフは居るの?」


「ですからエルフではなくハイエルフィンです……まあ、人間に比べれば少ないですわね。実際にシスターをしているハイエルフィン族は、わたくしくらいですし」


「……因みに、その事は秘密なの?」


「別に隠してはいませんわ。実際に司教様や親しい方には打ち明けていますし」


「なら、一般の信者には?」


「敢えて隠していません。但し、ハイエルフィン族をあまり良く思っていらっしゃらない方が多いのも事実ですから」


「成る程、公にはにしてないんだ」


「まあ、わざわざ知らせる必要もありませんので」


 この辺りは割り切るしかありませんわよ。異種族間の諍いなんて、嫌になるくらい目にしてきましたから。


「それよりリジーさん、外の様子は如何でして?」


「ああ、そろそろ町役場は大変な事になってるよ」


 そうですか。ならば、もう少しで出られるようになりますわね。



「町長を出せえ!」

「直談判させろ!」


「ですから、アポイントメントが無い方の面会は、お断りさせ」

「だったら警備隊長代行を出せええ!」

「シスターに狼藉を働くなんて、不届き千万!」

「袋叩きにしてやる!」

「も、もう私の権限を逸脱しています! もう限界ですぅぅ!」



「警備隊長代行を出せええ!」

「「「警備隊長代行を出せええ!」」」

「聖女様に狼藉を働いた愚か者を許すなああ!」

「「「聖女様に狼藉を働いた愚か者を許すなああ!」」」


「ううう……シスターは、シスターはまだ籠もっておられるのかああ!」

「ちょ、町長、もう市民はいつ暴発してもおかしくありません!」

「そうなったら、町の機能は……!」



 大人気じゃのう、聖女様は。さーて、何を企んでおるのやら。

シスターが教会に籠もってしまってお困りの方は、高評価・ブクマを頂ければ出てくるかもしれませんのでよろしくお願いします。

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