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頭が痛い撲殺魔っ

 一晩のうちに悪人が掃討されたセントリファリスは、何故か誇らしげに町を闊歩する野良犬と野良猫が見かけられたそうです。


「きゃああああああ、鼠ぃぃぃ!!」

 チュウ……

「うぎゃあああああ、蝙蝠だあ!!」

 キキキ……


 同じように振る舞い、悲しい思いをする方も居たようですが。



「ベアトリーチェ、貴女ですわね?」


 みゅうん?


「さて、何の事やら……じゃありませんわよ。あの悪人さん達、何人かは貴女の爪の痕がありましたわ」


 みゅ、みゅうん


「く、バレたか……じゃありませんわ。危ない事は駄目ですわよ」


 みゅううん!


「え、わたくしが無理をするのも良くない? 大丈夫ですわよ、いざとなったら回復魔術で無理にでも」

 みゅううん!

「え、それも良くない、と仰ってますの?」

 みゅううん!


 今日のベアトリーチェ、いつも以上に語りますわね。


 みゅん、みゅん、みゅみゅううん!


「え? そこまでわたくしが治安維持に心を砕くのでしたら、ベアトリーチェも協力するって……」


 みゅん!


「ま、待って下さいな。貴女、自分が熊だという自覚がありますの?」


 ……みゅん?


「ですから、町中を熊が歩いていたら、大騒ぎになりますわよ?」


 みゅみゅん!?


 ……貴女、気が付いてませんでしたの?


 …………みゅうん!


「え、だったらベアトリーチェはわたくしの陰になるって……ベアトリーチェ、ちょっと!?」



「へっへっへ、ねーちゃん、俺らと遊ぼうよ」

「や、止めて下さい!」

「あ、俺らから逃げられると思ってんの?」


 ンニャアアア!


「ん? 何だよ、この野良猫……しっしっ」


 ニャアアア!

 アオオオオン!

 ……アオオオオン……

 ……アオオオオン……

 ……みゅぅぅぅん……


「何だ、今日は妙に犬の遠吠えが……」


 …………ダダダダダ!

 みゅうん!


「っ!?」

「く、くくくく熊ぁ!?」


 みゅうん!

 バゴ! ベシ!

「「へぶぅ!?」」


「え、え?」

 みゅううん

 ……ペロ

「ひゃっ、くすぐったい」

 みゅううん!

 ドドドドドド…………


「い、今のって……聖女様のとこの、ベアトリーチェちゃん……?」



「いやああ! ひったくりよおおお!」

「へへへ、いっただきぃ!」

「誰かぁ、捕まえてええええっ!」

「へへ、俊足のオレは捕まえられねえよ!」


 チュチュッ


「あ、鼠か? 足元をチョロチョロと」


 チュチュウウウッ!

 ウニャアアアアッ!

 アオオオオオンッ!

 ……アオオオオン……

 ……アオオオオン……

 ……みゅぅぅぅん……


「な、何だ何だ?」


 …………ダダダダダ!

 みゅううん!


「え、何で熊が」

 ズドムッ! ゴゲシッ!

「んぶぐわぁ!?」


「え、え?」

 みゅん

「あ、私の財布……ありがとう」

 みゅん

 ペロッ

「きゃっ、くすぐったい」


 みゅううん!

 ドドドドドド…………


「……教会の……ベアトリーチェちゃんよね?」



 みゅんみゅんみゅううん!


「ええ、ええ…………貴女が大活躍なのはよーく分かりました」


 あ、頭が痛いですわ……あれで「陰ながら応援している」つもりですの……。


 みゅみゅううん!


「はい、貴女達が悪人を捕まえてくれたおかげで、確かにわたくしはゆっくり休めましたわ……」


 みゅうん?


「はい、元気になりました。なりましたから、大人しくしていて下さいまし……」


 みゅうん?


 ベアトリーチェの活躍は町中で持ち切りとなり、その話が狩猟ギルドに伝わり……。


『聖女様、町中に熊を放すとは如何なものか』

『可愛いと言う者が居る半面、怖がる者も居るのです』


『大変申し訳ありませんでした……』


 かなり厳しめのお叱りを頂いたのです。


「…………ベアトリーチェ、次からはわたくしも一緒に行きますわ」


 みゅうん?


「い、いろいろあるんです、いろいろ」


 みゅん、みゅみゅん


 わたくしが付いていれば、ベアトリーチェの散歩だと言えます。せっかくわたくしを助けようとしてくれている心意気を、無下にはできません。



 翌日、ベアトリーチェに首輪を付け、散歩という名目でパトロールに出ます。今回はリブラとリジーに昼間にしっかり休んでもらい、夜の見回りをお願いしています。


 みゅんみゅんみゅん♪


「ご機嫌ですわね、ベアトリーチェ」


 みゅん♪


 わたくしが付いていますから、町の方々もあまり恐れている様子はありません。ふふ、これなら大丈夫そうですわね。


 みゅーん


「はい?」


 みゅんみゅん


「背中に……乗れと?」


 みゅん♪


 ……今日は法衣ですから、乗りにくいのですが……。


 みゅんみゅーん


 ……ふふ、こんな可愛らしい仕草を見せられたら、嫌とは言えませんわね。


「分かりましたわ、よろしくお願いします」

 みゅうん


 スカートを気にしながらも、ベアトリーチェに跨がった……。

 その時。


「いやああ! 痴漢よおおお!」


 え、痴漢!?

 みゅううん!


 ダダッ

「え、ちょっ」

 グイィッ


 急に走り出したベアトリーチェの前足が、スカートの裾を……!


「ベアトリーチェ、待って、待って下さ」

 グイィッ ビリィィ!


 えええっ!?


 みゅん、みゅん、みゅん!

 ドドドドドドドドッ!


「べ、ベアトリーチェ、一旦止まって! お願いですから止まってえ!」


 ビリビリビリィィ!

 みゅううん!


「い、いやあああああああああ!」



 みゅん!


「はい……ちゃんと捕まえて下さいましたわね……」


 ……みゅん?


「……何故半裸なのか、ですって……?」


 みゅ、みゅん?


「……ベアトリーチェ……当分散歩は禁止します」


 みゅうううううううん!?


 

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