事情を聞くおっぱい神様っ
「……で、何故に隊長様がいらっしゃるんですの?」
「「「いやっほおおおおおおおぅ!!」」」
わたくしのビキニアーマー姿に、隊長様を含めた警備隊の皆様がフィーバー中です。
「あの、隊長様?」
「ビキニアーマーで」
「「「いっちゃってええええっ!!」」」
「聞こえてらっしゃいます?」
「おっぱい神様に」
「「「なっちゃってええええっ!!」」」
「あの……聞こえてらっしゃいます、と聞いてるのですが」
「ビキニアーマーで」
「「「いっちゃってええええっ!!」」」
バギャバギャバギャバギャッ!
「物理的に逝っちゃいます?」
「「「ぶ、物理的はご勘弁……がくっ」」」
「……で、何故ここに警備隊長様が?」
生き返らせてから全員を正座させ、詳しく事情を聞く事にします。
「いやあ、部下から聖女様が再びおっぱい神様になったと」
バギャッ!
「がふぅっ!?」
「『彷徨いし魂よ、肉体に戻れ』」
パアアア……
「……ごふっ!? は、はあ、はあ、はあ……」
「もう一度聞きます。何をしにここへ?」
「は、はい! 立て籠もっている若い連中の説得を試みに来ました!」
はい、分かりました。最初から素直に答えていれば、無駄に死ぬ事は無かったのです。
「で、貴方達は何故に立て籠もっていたのです?」
「それは無論、我々の要求を隊長に聞いて頂く為っ」
「ですから、その要求とは何なのか、と聞いているのです」
「そ、それは」
「ビキニアーマー」
「いっちゃってええええっ!!」
バギャッ!
「ぐぎゃあっ!」
「リジー! 余計な合いの手を入れないで下さい!」
「いやぁ、だって楽しいし」
「……貴女も逝っちゃいたいですか?」
「すんませんしたっ」
全く……リジーにも困ったものです。
「ふう……『彷徨いし魂よ、肉体に戻れ』」
パアアア……
「……ひ、ぐ、ふはぁ!? は、はあ、はあ、はあ……」
「さて……先程の質問、答えて頂けますわね?」
しっかりと目を見て問い掛けます。
「え……あ、はい」
しかし若い警備兵さんは、視線を逸らしてしまいます。
「ちゃんと目を見て話さないと駄目です」
「えっ、いや、その」
顔を真っ赤にして、視線を合わせようとしません。
「リファリス、前屈みになってるからだって」
リブラの指摘に、自らの体勢を想像で鑑みてみると…………あらやだ。
「申し訳ありません。ビキニアーマーだったのを忘れてましたわ」
若い方には刺激が強いものが、視界に入ってましたのね。
「い、いえ、大歓迎ゲフンゲフン」
……何やら本音を口走ったように聞こえましたが、今回は見逃して差し上げましょう。
「で、理由は何ですの?」
「あ、はい……実は俺達は、実技大会の参加に反対しているのです」
ああ、そう言えば警備隊長様がぼやいてましたわね。
「どうして参加したくないんですの?」
「……意味が無い、と思えまして」
「またその話か! 何度言えば分かるんだ!」
「何度言われても分かりません! あんな型通りの動きの繰り返し、実戦で役に立つ筈がありません!」
「そういう問題では無いのだ! 実技大会の練習を通して、仲間同士の結束をだな」
「ですから、それを実技大会に求める必要性が」
「申し訳ありませんが、その方と会話をしているのはわたくしでしてよ?」
「あ…………も、申し訳ありませんでした」
急に割り込んできた隊長様が黙り込みます。
「……で、実技大会を否定なさる理由は、実戦に役に立たないから、という事ですの?」
「はい。ですが、それだけではありません」
「はい。全て告発なさって下さい」
「ありがとうございます。実は実技大会の練習にこそ、我々が立て籠もった真の理由があるのです」
そこからは告発に次ぐ告発でした。
「厳しい指導に関しては、パワハラとまでは言わずにおきます。まあ、他の者はパワハラだと訴えてましたが」
最近よく耳にする「~ハラ」という言葉が沢山出てきました。
「その後の飲み会ですよ、問題なのは! 飲めないと言う者に無理矢理酒を飲ませたり」
アルハラ、というものらしいです。
「暴力はありませんが、聞くに耐えない罵声を浴びせて、精神的に追い詰めたり」
モラハラ、というものらしいです。
「女性隊員にまで参加を強制し、意味も無く身体を触って指導したり」
セクハラですわね。それはわたくしも知っています。
「一番酷かったのは、妊娠中の女性隊員に参加を強要した事です!」
マタハラまで!?
「……隊長様、どういう事ですの?」
「返す言葉もございません」
つまり、認めますのね?
「…………流石に見逃せませんわねえ、それらは」
「はい。自覚はあったのですが、つい」
つい、ですって?
「でしたら『つい』人を殺しました、が通用しますの?」
「しません。本当に申し訳ありませんでした」
……はぁぁぁ。
「皆様。ここはわたくしに任せて頂けますか?」
「「「よろしくお願いします」」」
「隊長さんを」
「「「殺っちゃってええええっ!!」」」
「……リジーも殺っちゃっていいですか?」
「すんませんしたっ」
「……隊員さん達も殺っちゃっていいですか?」
「「「すんませんしたっ」」」
「さて、隊長様。三回は死んで頂きますわよ」
「さ、三回!?」
「モラハラまでは、一回で済ますつもりでした。が、セクハラとマタハラで一回ずつ追加です」
「…………っ」
顔面が真っ青な隊長様。大丈夫ですわ、違う意味で真っ青になりますから。
少なくとも、三回は。




