再びおっぱい神様っ
結局のところ、あれだけ真摯に頭を下げられては、断るなんてできる筈もありません。
「結局引き受けちゃった?」
「仕方ありませんわ。第一『いえ、聖女様が引き受けて下さらない限り、頭を上げる事はできません』を延々とやられたら、流石にわたくしでも我慢の限界がありますもの」
「撲殺できるチャンスだったと思われ」
「…………リジー、貴女わたくしを何だと思ってますの?」
「撲殺大好き、僕らのおっぱい神様おぐふぉ!?」
あらあら、こんなところに撲殺チャンスが転がってましたわ。
『巡回路は警備隊詰所にある地図をご参照下さい』
警備隊長様に言われた通り、まずは詰所へと向かいます。
「…………何ですの、あれは」
「何だと言われても……詰所じゃないの?」
「随分派手派手しくなってる」
リジーの言う通り、派手派手しくなっていました。
「と言うより、中に入れませんわね」
扉は固く閉ざされ、そこには「要求貫徹」「絶対勝利」と赤い塗料で書かれていました。
「本当に機能不全に陥っているのですね」
ガタッガタッ
中から棒を噛ませてあるようで、ビクともしません。
ドンドンドン!
「誰かいらっしゃいませんの?」
強めに扉を叩きますと、中に誰かが居る気配がしました。
ドンドンドン!
「わたくしですわ、リファリスですわ」
ガタタッ
『え、リファリスって……聖女様じゃないか!?』
『そうだ、聖女様だ!』
『おっぱい神様が俺達の元に降臨されたんだ!』
またおっぱい神様ですの!?
「おっぱい神様の登場ー、開けなさーい」
『え、今のはおっぱい神様の御声じゃ無かったぞ!?』
『ま、まさか偽者?』
『そうだそうだ! どうせ警備隊長の差し金に決まってる!』
「警備隊長なんて関係無いよー、何も頼まれて無いよー、『いえ、聖女様が引き受けて下さらない限り、頭を上げる事はできません』なんて言われて無いぶごひゃ!?」
余計な事を言わないで下さい!
『……今のヤツ、隊長お得意のだろ?』
『ああ。わざと人前で土下座して、断れなくするんだよな』
『隊長め、まさかおっぱい神様まで巻き込むなんて』
「……つまりあの土下座は、警備隊長の常套手段だった訳か。やられたわね~」
確かに、躊躇ありませんでしたし、やり慣れてらっしゃいましたわね。
「リファリス、どうするの? 警備隊長絡みってバレちゃった以上、おっぱい神様の説得でも開けそうに無いよ、これは」
確かに……説得は不可能そうですわね。
「待ってリファリス、手はある」
リジー?
「リファリスが再びビキニアーマーを着れば、言う事を聞くのは間違い無し」
はああああああっ!?
『ま、まさか、おっぱい神様降臨!?』
『ビキニアーマーの奇跡、再び!?』
『『『うおおおおおおおおお!!』』』
「ま、待って下さい! あんな破廉恥な物、二度と着ませんわよ!?」
『『『……え~……』』』
「あああっ!? 開きかけた天岩戸が再び閉じられようとしている!」
「あまの、いわと? 何ですの、それ?」
「何でもありません。それよりリファリス、更に頑なになっちゃうよ?」
『要求貫徹!』
『ビキニアーマーよ、再び!』
『真おっぱい神様降臨を望む!』
「……要求が変わっちゃったね」
「うーん……だったら、真おっぱい神様のお願いだったら、聞いてくれる?」
『『『聞く聞く、聞いちゃう!』』』
「と言う訳で、リファリス。お覚悟を」
「何故わたくしがビキニアーマーを着る事が、確定事項になっているんですの!?」
「人類の平和の為」
「血を流さない為」
『悲劇を起こさない為』
わたくしにとっては、ビキニアーマーを着なくてはならない事自体が悲劇ですわよ!
「いくぞー、そーれそれそれ♪」
『おっぱい神!』
『おっぱい神!』
『おっぱい神!』
「そーれそれそれ♪」
『おっぱい神!』
『おっぱい神!』
『おっぱい神!』
「そーれそれそごぶへぃ!?」
「煽らないで下さい!」
リジーが煽ったせいで、中はおっぱい神様祭りです……。
『『『おっぱい神になっちゃってええええっ!!!!』』』
「あははは、リファリス、なってあげたら?」
「リ、リブラまで、何を言い出すんですの!?」
「だって、ここまで来たら、強行突破か懐柔策かの二つに一つじゃん」
「まあ……確かに」
「リファリス的には血を見たいのかもしれないけど」
「血、血を見たい訳ではありませんわ」
「あ、そう。だったら懐柔策しか無いよね」
懐柔策……つ、つまり。
「ビキニアーマー着るのよ」
『『『ビキニアーマーいっちゃってええええっ!!!!』』』
だ、だから、何でそうなるんですの!?
「いえ、聖女様がビキニアーマーを着て下さらない限り、頭を上げる事はできません」
どこから出てきましたの警備隊長様!?
「いえ、聖女様がビキニアーマーを着て下さらない限り、頭を上げる事はできません」
『『『おっぱい神になっちゃってええええっ!!!!』』』
「いえ、聖女様がビキニアーマーを着て下さらない限り、頭を上げる事はできません」
『『『ビキニアーマーいっちゃってええええっ!!!!』』』
そ、そこまで盛り上がる事ですの!?
「…………はぁぁぁぁ」
「さあさあ、リファリス、御披露目よ」
……結局こうなってしまうのですね……ああ、主よ、どうかお許し下さい……。
「ビキニアーマーいっちゃってえぶぎゃあ!?」
「元を辿れば貴女のせいですわよ!?」
ボカボカボギャア!
「ぎゃああああっ!」
『『『血塗れ聖女になっちゃってええええっ!!!!』』』
やかましいですわよっ!
ビキニアーマーいっちゃってええええっ!!




