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政治のお勉強と撲殺魔っ

 何故か自身が襲われたかのように演じて捕縛する、という面倒な真似をしたシスターじゃが、らしくないとは思わぬか? いつものシスターじゃったら、有無を言わせず撲殺するじゃろ。

 実はシスターがこのようなお芝居をせねばならぬ程に、難しい事情があるのじゃよ。

 さて、ではシスターの様子を見てみるとしようかの……。



 コンコンッ


「はい」


「入って無問題?」


 も、もーまん?


「あ、ごめん。入って大丈夫?」


「え、ええ。大丈夫ですわ」


 ガチャ


 町役場で貸して頂いた部屋で休んでいたところに、リジーさんが訪ねてきてくれました。


「リファリス、襲わ()たんだって?」


「待って下さい。そこは襲わ()た、と聞くべきですよ?」


「リファリスが黙って襲われる筈が無い。撃退しない方がおかしい、と思われ」


 それはまあ……否定致しません。


「よくお分かりですのね、わたくしの事を」


「元の世界に似た人が居たって言ったでしょ? その人ならどうするか、と考えただけ」


 またわたくしと同じ名前の方ですの?


「それより、どうして撲殺しなかったの?」


「それはですね、あのブタさんが旧貴族だからですよ」


「旧……貴族?」


「リジーさん、この国については何も学習してないんですの?」


「この世界について調べたのは、呪われアイテムの有無のみ」


 徹底してますわね。


「宜しくてよ。でしたらこの国が抱える複雑な事情について、詳しく教えて差し上げますわ」


「うむ、苦しゅうない」


「…………」


 たまに撲殺したくなりますわね、リジーさん。



 まずはこの国の政治についてですわね。


「リジーさん、現在の政治形態は分かりますわね?」


「うい。王様と議会がバトルしてる」


「ま、まあ、強ち間違ってはいませんが……つまり議会王政ですね」


 絶対王政と違い、議会の決定が王の命令を覆す事が有り得るのです。


「うむ。その議会も二つあった気が」


「はい。衆議院と貴族院ですわね。衆議院を構成しているのが、選挙に拠って選ばれた市民です」


「なら、貴族院は貴族が?」


「そうなりますが、その貴族院も一枚岩では無いのです」


「うい?」


「リジーさん、宗教革命はご存知ですか?」


「宗教……革命?」


 知らないのですね。


「これは流石に常識ですわ。知っておかないと、色々と不味いですわよ?」


「う。い、今勉強します」


 ならばわたくしが解説致しますわ。


「かつてこの国は、議会王政と言う名の絶対王政でした」


「え?」


「つまり、議会の発言力が、今よりずっと弱かったのですわ」


「ああ、形骸化してた?」


「そうです。選挙は行われていましたが、不正が横行していて王や貴族の都合の良い人材ばかりが当選する始末。議会は王の命令に頷くだけの機関と化していたのです」


「うむうむ、よくあるよくある」


「当然ながら、民衆は快く思っている筈も無く、現状の打開を度々訴えていました」


「うむうむ、よくあるよくある」


「……リジーさん、聞いてますの?」


「聞いてます。結局王と貴族によって弾圧されていたでオーケー?」


「お、おけ?」


「良かったか、という意味」


「そ、そうですわ。秘密警察による言論弾圧は目に余るものがありました」


「……何となく分かってきた。それを聖心教が良く思わなかった?」


「その通りですわ。その当時から広く信仰されていた聖心教の教義とは相容れなかったのです」


「あらら。そこからお決まりの宗教弾圧?」


「それは無理でしたわね。何しろ、国教が聖心教であり、王も熱心な信者ですから」


「……ならどうしたの?」


「この辺りが曖昧な記述しか無いのですが……当時の聖女様に調伏されて王が改心なさったとか」


「は?」


「王は選挙制度を改正し、成人ならば誰でも投票できるようにし、厳格なルールを設けたのです。現在、不正は殆ど行われていませんわね?」


「確かに。私達も何度か不正の摘発に関わったけど、ごく少数」


「それと、貴族院の半数を新たに興した貴族によって占めさせ、古くから在る貴族と対抗させたのです」


「あー、それで完全に理解した。古くからある貴族と新しい貴族は常に対立してるのか」


「そうですわ。それが旧貴族です」


「つまり、旧貴族に下手に手を出して、軋轢を生むのは良くない、と?」


「ええ、まあ。わたくしの場合は特に、ですわね」


「あ、ロードだから?」


「そうですわ。旧貴族と新貴族(ロード)の対立を激化させるのは、賢明とは言えませんから」


「え。ロードが新貴族なの?」


「それも知らなかったんですのね。そうですわ、わたくしも貴族院に名を連ねています」


「も、もしかしたら、リファリスって超偉い人?」


「そんな事はありませんわよ……わたくしはただの監視役に過ぎませんわ」


「監視役?」


「新貴族……ロードは聖心教の神父やシスターです。つまり、聖心教の教徒によって構成されています」


「……再び王や貴族が暴走しないように、聖心教が監視してるのね」


「そうなります。ですから、下手な軋轢を生む訳にはいかないのです」


「成る程ねえ……軋轢が燃え上がって全面戦争になったら大変だ」


「そうならない為に、わたくしは恥を忍んだのですわ」


 そこでリジーさんは何かを思い出したらしく、袋を探り始めます。


「あー、そうだった。はい、新しい法衣」


「あら、ありがとうございます」


 わざわざ教会に行って取ってきて下さったのですね。


「でもさ、リファリスは、あのブタさんを許す気は無いんでしょ?」


「当たり前ですわ」


「撲殺するんでしょ?」


「当たり前ですわ」


「でも、軋轢を生むかもしれない、と思われ」


「ええ。ですから、軋轢を生まないように、堂々と撲殺できるようにするのですわ」


「……うわあ……撲殺の為の執念半端ない」


「さて、久々に貴族院議員として、立ち回る事になりますわ」



 ……本当に撲殺への執念が半端ないのう。

足りない政治知識にツッコミどころ満載でしたら、高評価・ブクマで突っ込んで頂ければ幸いです。

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