赤月と紅月っ
ボコボコにして差し上げた後、無事に捕らえました。
「く、くそ、まさかこの赤月が……!」
「大した事ありませんでしたわね」
「そ、それは、リファリスは最後に戦っただけだから……!」
「お、俺達、何回死んだか、もう覚えてない……」
「もう嫌だ……おっぱい神様の為とは言え、もう死にたくない……!」
「私も辛かったと思われ」
「「「お前は一回も死んでないだろう!」」」
あらあら、賑やかですわね、うふふ。
「それよりリファリス、こいつはどうするの?」
「然るべき裁きを受けて頂くべきでしょうね。まあ、この場でわたくしが処断しても宜しいのですが」
処断、の下り辺りから赤月の様子が変わりました。
「ふざけるなああ! 私は赤月だ! 何故警備兵如きに裁かれなくてはならないのだ!」
「……あの、警備兵如きって……貴方ねえ」
「私は赤月だぞ! 稀代の殺人鬼なんだぞ! それがこんなチンケな場所で警備兵如きに処断されるなんて、あってはならない事なんだぞ!」
「……つまり、どうしたいんですの?」
「……そうだな。私を処刑するに相応しい人材を用意しろ。それに納得したら、私は大人しく地獄へと堕ちようではないか」
……これは、とどのつまり……。
「……自殺願望者ですの?」
「いや、単に注目されたいだけじゃない?」
「つまり、目立ちたがりだと思われ」
「「「それですね」」」
目立ちたがり、というレッテルを貼られた赤月さん、仮面をしていても分かるくらいに怒っています。
「目立ちたがりじゃないいっ! そんな理由で撲殺魔なんかしてないわああっ!」
……撲殺魔?
「……貴方……まさか……」
ブンッ パキッ
メイスで仮面を軽く叩き、真っ二つにします。
パキパキパキ……パカッ
割れた仮面から出てきた顔は……。
「……女性なの?」
「……んん……どっちだ?」
女性とも男性とも受け取れる、中性的な顔立ち。そして……顔に刻まれた、特徴的なタトゥー。
「あ、貴方、まさか…………煉獄の森の……」
「っ!? き、貴様、何故その事を知っている!」
「……まだ生き残っていたのですね……分かりませんか、わたくしが」
「な…………まさか、お前は!?」
急な展開に戸惑うリブラ達を放置したまま、わたくし自身も戸惑いの再会を果たす事になったのです。
「お久しぶりですわね……お父様」
「「「お、お父様って…………えええっ!?」」」
とりあえず教会に場所を移し、詳しく説明する事にします。
「さて、もう一度ご紹介しますが、わたくしの父でございます」
「お前、リファリスか!? リファリスなのか!?」
「そうですわ、煉獄の森の長老、灼熱のクルートゥさん」
「「「しゃ、灼熱のクルートゥって……」」」
「い、言うなあ! 捨て去った過去の呼び名を口にしないでくれええ!」
「……それはどうでもいいんだけどさ、結局どういう事よ?」
「ええっと、簡単に言ってしまいますと、お父様は元祖紅月です」
「「「…………は?」」」
「元々の紅月は『紅い月の撲殺魔』が縮められた呼び名だったのです」
「つ、つまり、リファリスよりも古い……大量殺人鬼?」
「そうなりますわね」
「待て。その言いようだと、リファリスまで殺人鬼をしているようなニュアンスに捉えられるが……?」
「そのままズバリ、この街の紅月はリファリスです」
「な……何だとおおおおおっ!?」
ああ……一番知られたくない相手に知られてしまいましたわ……。
「お、お前! どうして殺人鬼なんかに身を落としたのだ!?」
「「「……え?」」」
「そんな娘に育てた覚えは無いぞ!」
「「「……お前が言うな、お前が」」」
「リファリス、何なの、こいつ?」
「……居ますでしょ。自らの行いは一切省みず、子供に要求ばかりする親って……」
「ああ、つまり……これ」
「そう、これ」
「……あれ? リファリス、口調」
あら?
「ご免あそばせ、つい地が出てしまいましたわ」
「リファリスの……地、ねえ」
「……何ですの?」
「リファリスの地って、撲殺する時のアレじゃないの?」
「……アレは単にハイになってるだけですわ」
「……さいですか」
ま、まあ、それはどうでもいいのですが。
「それよりどうしますか? お父様は一応テロリストなのですが」
「「「……テロリスト?」」」
「はい。『煉獄の森』というのは、ハイエルフ内の過激派なのです」
「ハイエルフの過激派って……」
「自らを超自然派と称していまして、自然破壊を繰り返す他の生物を粛清すべき、という団体ですわ」
「自然破壊を繰り返してる他の生物って……つまり、人間?」
「はい。当時の活動方針が変わっていなければ、煉獄の森構成員の活動内容は……人間を対象とした無差別殺人です」
「何それ怖い」
「とは言え、構成員はお父様とお爺様のみですから」
「「「たった二人かよ!」」」
「二人が殺した方々は、一人残らずわたくしが生き返らせましたし」
「ま、待って。リファリス、いつから復活魔術を使ってたの?」
「……幼少の頃から、でしょうか」
「「「そりゃ復活魔術が上手くなる道理だわ」」」
「ま、待て! 復活させていたとはどういう事だ!?」
「当たり前でしょう。自然破壊しているとはいえ、現在のところは自然の回復力の方が勝っているのですから、わざわざ人間を減らす意味がありませんわ」
「お、お前、父親が決めた事に逆らうのか!?」
「と言うより、お父様とお爺様の二人が毎日一生懸命殺人に精を出したとして、人間の増える数に勝れますの?」
「そ、それは……」
「つまり『煉獄の森』の活動自体が無意味なのです」
「ぐふぅ……がくっ」
あら? お父様、何故倒れてますの?
「精神的撲殺、乙」
「……確かに精神的撲殺だわねえ」




