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心霊なキツネ娘っ

「リジー。あの類の本は読み聞かせで使わないで下さい」

「うむ、申し訳無かった」


 厳しく注意しておいた事もあり、リジーは本の読み聞かせに怖い本を用いるのは止めたようです。


「凄いね、リジっち。アタシでも子供達に怖い本読み聞かせるって発想は無かったよ」

「えっへん」

「いや、誉めてないから」



 しかし、リジーの暴走は留まる事は無かったのです。


「はーい、間違い探しゲームをしまーす」

「「「はーい!」」」


 リジーが夜遅くまで何か作業していたのは知ってましたが、まさかこの為だったとは。


「はい、ジャジャーン」


 一枚の引き伸ばされた念写真がホワイトボードに貼ってあります。


「え、いちまい?」


 そうです。間違い探しならば、比較する為に二枚の念写真が必要になる筈なのです。


「では、この写真の中で決定的に間違って箇所を~……探せ」

「「「えー……」」」


 ホワイトボードに近付いて、必死に探す子供達。しかし相当難しいらしく、皆ウンウン悩んでいます。


「リジー、子供では難しいのではありませんの?」

「いや、分かる。明らかに不自然」


 明らかに……? ではわたくしも参加して……。


「……!? 『浄化』!」

 パアアア……

「ああ!? リファリス、何するの!?」


 わたくしの浄化魔術によって消えた異常箇所(・・・・)を確認してから、抗議するリジー。


「何するの、じゃありません! こんな怨念の籠もった写真を子供に見せるなんて、何事ですか!?」

「だから間違い探しんぶぎゃ!?」

「間違い探しに心霊写真を使う馬鹿がありますか!」


「せんせー、しんれーしゃしんってなーにー?」

「何でもありませんわよ~……皆はお外で遊んできましょうね」

「「「はーい!」」」


 ……子供達が元気に外へ駆けていくのを見送ってから、鳩尾を押さえてうずくまるリジーを引き摺って退場しました。



 また、ある日は。


「おもわれせんせー! おままごとしよー!」


「おままごと? いいよー」


 ままごとでしたら、心配する必要はありませんわね。


「じゃあせんせー、こどもやくねー」

「はーい」


 リジーが子供役ですか。ちゃんとできるでしょうか。


「はい、ごはんどーぞ」

「ありがとう」


 うん、大丈夫そうですわね。


「やさいをとんとん……」

「あ、待って!」

「え、なに?」


 ……?


「その包丁は……数多くの命を奪ってきた呪われた包ちょあびぎゃ!?」

「ままごとに呪いを持ち込まないで下さい!」


 昏倒したリジーを引き摺って、教室から退場します。


「あ、あのー、のろわれたほーちょーってなーに?」



 また、ある日は。


「皆、お人形さんで遊びましょぐびぃ!?」

「リジー。何故に髪が伸びる人形や夜な夜な動き回る人形、血の涙を流す人形なんですの?」


 これ、わたくしが解呪の為に預かった人形ばかりですわよね?


「か、構ってあげないと可哀想」

「ご心配無く。後でちゃあああんと構って差し上げますから……浄化しながら」

「浄化なんて可哀想ぶごしゃ!?」

 ゴト……ズルズルズル


「せ、せんせー?」



 また、あくる日は。


「おさんぽに行きましょう」

「「「はーい!」」」


 まさか……とは思いますが。


「最初に旧○○家、次に××病院跡、次に△△墓地んぎゃひぃ!?」

 ゴト……ズルズルズル



 そして、ついには。


「はーい、明日の遠足は行き先変更。○○峠の△△トンネルぐぎゃ!?」

 ゴト……ズルズルズル



「リジーさぁぁん? 貴女は何を考えてるんですのぉぉぉ?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ!」


 文字通り吊されているリジーを弄びながら、今後の対策を練ります。


「まー……リジーは外すべきなんじゃない?」

「そうだよそうだよ外して外して下ろしてえ!」

「あー、吊されてる状態から外すんじゃなくて、先生から外すべきじゃないかって」

「ええええええ!? せっかく無垢な子供達に呪いの素晴らしさを教える機会がんごふぉ!?」


 教えなくて宜しいっ。


「ん~……聖心教の教義的にも、呪いの賛美はアウトだよねぇ」


 聖心教じゃなくてもNGですわ!


「……やっぱ外すべきじゃない?」


 外すんですのね?


 ゴギィ

「んぎゃひぃぃぃぃぃぃ!?」


「違う違う! 関節じゃなくて、先生の地位から!」


「あら、そうですの……残念ですわ」

「リ、リファリス、残念なのは先生辞める方? 関節外せない方?」


 ……ん~……。


「……両方ですわね」

「関節嫌ああああああ!!」



「……と言う訳で、残念ながら退職される事になりまして……」


 結局苦情が止まなかったリジーは、子ども園の先生はクビになりました。


「えー、おもわれせんせー、やめちゃうのー!?」

「「「おつかれさまでした」」」


 ……残念がる子、一名。

整列して深々と頭を下げる子……残り全員。


「いやあ、見事な嫌われっ振りだねえ」

「にゃはにゃは、ある意味才能だよ」


「く……ちっくしょおおおおお、呪ってやるぅぅぅ!!」


 捨て台詞を吐いて去るリジー。大丈夫ですわ、わたくしが呪われても浄化しますから。



 穏やかな日々が戻ってきた、と思っていたのですが……。


「……リジーに懐いていた子、来なくなりましたわね……」


 どうしたのでしょうか……。


「リファリス、やほー」


 あら、噂をすればリジーが………………あら?


「リジー、どうして……その子を連れてますの?」


 先程言っていたリジーに懐いていた子は、当の本人と仲良く手を繋いでいるのです。


「この子の両親、夜逃げした。よって、私が預かり中」


 はい?


「おもわれせんせーだったらだいかんげー!」


 はいい?


「という訳だから……リファリス、呪い教信者一号、獲得……と思われ」

「おもわれー」


 …………はい?



 ……あの娘の将来が不安じゃのう……。

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