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ビフォーアフターな撲殺魔っ

 それからもマメに託児所の体験奉仕を実施し、町内全で出禁……では無く研修を終了させました。


「リファリスはどうだったの?」

「子供達の音楽スキルが上がったと、保護者の方々からは好評でしたわ……そちらは?」

「うん……体力向上したって誉められた」

「精神面が鍛えられたって高評価」

「そうですの。それは良かったですわね」

「うん、リファリスも流石だね」

「皆凄い凄い」


(((ただ、保育士の皆さんから不評だっただけで……)))



 あの調子で全託児所を制覇したようじゃな……保育士が不憫でならんわい。

 それにしても大司教猊下がゴリ押ししてきた託児所構想に、シスターがここまで一生懸命になるとはのう……何やら思惑でもあるのじゃろうか。



「……あのさ、リファリス」


 使っていない部屋の掃除をしながら、リブラが不意にわたくしに尋ねてきました。


「何ですか、急に」


 奉仕中は基本的に私語禁止なのですが……まあ、たまには良いでしょう。


「何でさ、ルディの無茶ぶりをリファリスは真面目に受け止めてるの?」


 え?


「何ですの、急に」


「いやさ、決してやる気になってるんじゃないよね……と思って」


 あら、そう見えますの?


「心外ですわ。わたくし、心の底から今回の事業に真剣に取り組んでますのよ?」


「え? そうなの?」


「大体わたくしは貴女方と出逢う前から、子供達と触れ合って来ましたのよ」


「ああ、確かに孤児院にはしょっちゅう通ってたわね」


「ええ。わたくし、子供が大好きですもの」


 それを聞いたリブラが、わたくしから徐々に離れていきます。


「……何ですの?」


「いやああ…………流石にそれは、ねえ……」


 ……?


「リファリス、今までは相手が相手だったから目を瞑ってたけど……流石に子供は駄目だよ?」


「ですから、何が言いたいんですの?」


「だからー、子供を撲殺するのは流石に」

 ぶぅん! ぼぐぉ!

「ぎゃぴぃ!?」


「子供を撲殺したりしませんわよ! 貴女はわたくしを何だと思ってらっしゃるんですの!?」


 そのタイミングで現れたリジーが。


「……リファリス、子供達を預かる場所を、リブラの血で穢れてもいいの?」


 ……ああああああああっ!!


「『浄化』!『浄化』!『清めよ』!『清めよ』!」

「そ、それより、私の治療を……」

「寝るなー寝たら死ぬぞー」

「ね、寝たら永眠しそう……がくっ」



 掃除が終わってから、リブラがポツリと呟きました。


「ここだけじゃ、手狭よね」


「え? 手狭?」


「うん。託児所ってさ、子供が思いっきり遊ぶだけの広さが必要じゃない」


 それはまあ……確かに。


「この部屋の二倍は欲しくない?」


「二倍……」


 確かに二倍の広さがあれば、雨の日でも子供達が走り回って遊べますわね。


「……二倍にしましょう」

「うん、そうしよう」



 ま、待つのじゃ。そんなに気軽に二倍にはできぬぞ、普通は?



「ではリブラ、リジー、お願いします」

「任せて」

「ういー」


 作業着姿で大剣を持ったリブラ、同じく血塗れの作業着姿で呪剣を握るリジー。二人が息を合わせて。


「はあああっ!」

「たーっ」


 ザンザンザン!


「……よし、柱は斬ったわ」

「梁も斬り捨てたと思われ」


 二人と同じように作業着を着て口を布で覆ったわたくしが、聖女の杖を振りかざして突進。


「一撃撲殺! はああっ!」

 ぶぅん! どがぁぁぁん!

 めきめきめきめき……ずざぁぁぁん!


「ケホケホ……壁のぶち抜き、終了ね」


 舞い上がった埃を魔術で拡散し、リブラとリジーが剣をホウキに持ち替えてゴミを掃き出していきます。


「これで広くできましたわね」

「でもさ、柱とか斬っちゃって大丈夫なの?」

「この教会は魔力伝導式ですから、問題ありませんわ」

「げ、そうなの?」



 ほっほ、久々の解説コーナーじゃの。

 魔力伝導式とは建築工法の一つでの、柱や梁を極限まで減らす代わりに、中に居る人間から放出された魔力を吸収し強度に転換する魔方陣を組み込まれた建材を使用する事で強度を補うんじゃ。それによって通常ではあり得ない室内の広さを実現できるのじゃよ。

 欠点は二つ。魔方陣入りの建材が高額な事、もう一つは室内の人間から際限無く魔力を奪う事じゃな。



「……リファリスの規格外の魔力が無ければ、とっくに崩れてるって事か……」

「まさにリファリス専用の教会」


 そうですわ。ですから、おちおち離れられないんですの。


「それより、後はどうするの?」

「無論、大工さん達の出番ですわ」

「でも大工さん雇うお金ある?」


 わたくしは不敵に微笑んで見せます。


「大丈夫ですわ。今回は強力なスポンサーが付いてますもの」



「リファっちぃぃぃぃぃぃ!?」


 後日、ルディが半泣きで飛び込んできました。


「どうかしまして?」


「な、何なのよ、この信じられない額の見積もりは!?」


 ああ、昨日届けた見積もりですわね。


「適正ですわよ。わたくしとリブラで、徹底的に調べましたから」


「いや、適正とかいう問題じゃなくて! 何なの、この信じられない額!」


「必要経費ですわ」


「必要経費って……この教会建てた時並みの金額だよ!?」


「そうですか。ですが、わたくし達でできる事はした上での、その金額ですわ。本当ならもっと高いですわよ」


「いやいやいやいや、あり得ないって!」


「あり得ないと言われましても、子供達の笑顔には変えられませんわ」


「のおおおおおおおおおおおっ!!」



 ……シスター、これが仕返しじゃったのかのう……。

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