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保育士見習いな首だけ令嬢とキツネ娘っ

「と言う訳で、次は貴女達に体験してきて頂きます」

「「何でっ!?」」


 わたくしの提案に、リブラとリジーが同時に噛みついてきました。


「私はリファリスの直弟子だよ!? 何で託児所の先生なんてしなくちゃならないのよ!」

「試練ですわ」

「大体託児所の話だって、大司教猊下の無茶ぶりじゃないの! 何でそれに私が巻き込まれなくちゃならないのよ!」

「試練ですわ」

「だ・か・ら……私に子供の世話なんて、どうやったって無理」

「でしたら、いつもの修行を特盛りサービスで三倍増」

「喜んで行かせて頂きます」


 はい、リブラは陥落しましたわ。


「それから、リジーは」

「嫌だ」

「貴女も弟子」

「嫌だ」

「あの、話を」

「嫌だ」

「……年は英語で」

「yearだ」

「耳は」

「earだ」

「……矢田さんがショッ○ーになったら」

「イー! 矢田」


 ……あら? 英語って何でしょう? 矢田さん? ショッ○ー?


「……オホン! では呪具を三つ進呈」

「喜んで行かせて頂きます」


 はい、リジーも陥落です。それにしても、何故意味の分からない事を言ってしまったのでしょうか……?



「はーい、今日は新しい先生をご紹介しまーす!」


 な、何で私がこんな目に……!


「リブラ、表情硬い」

「やかましいわ! ほぼ無表情なあんたに言われたくない!」


 思わず叫んでしまい、園長先生と子供達から注目の的……し、しまった。


「あー、えっと……は、初めまして! リ、リブラです! よろしくお願いします!」

「……リジーと思われ。よろしくお願い申し上げ候」

「「「………………」」」


 ………………は、拍手はおろか、何の反応も無い。空気が死んだ。


「あ、は、はい! では最初に、リブラ先生とリジー先生に、鬼ごっこの鬼役になってもらいましょう!」

「え、えええ……」

「お、鬼ごっこ……」


 修行じゃなくて苦行だわ……。



「はい、では……始め!」

「「「わあああっ!」」」


 要は、逃げた子供を全員捕まえればいいのよね。


「ふ……『進脚』」

 ぶぉん!

「わっ」

「はい、一人捕まえた」


 戦闘系スキルを使えば、あっという間だわ。


「む……スキル使用ありなら」


 リジーは禍々しい剣を取り出し。


 ザンッ!


 地面に突き立て。


「『呪われ斬』で呪縛」

 おろろ~~んん……

「う、うごけない……」

「にげられない……」


 呪縛されて動けなくなった子供達を、次々にタッチしていく。


「むぅ、負けてられないわね。『進脚』『進脚』『進脚』『進脚』!」

 パパパパパパパパッ!

「えっ」「わっ」「きゃっ」


 よーし、もう半分は捕まえたわよ!


「手早く終わらせよう! リジー、全体に呪縛を!」

「うい!」


 リジーの呪縛と私の『進脚』で一気にたたみかける!



「な、何をしてるんですか、貴女方はああああああっ!!」


 全員捕まえて意気揚々と報告したら、園長先生に特大の雷を落とされた。


「ちゃ、ちゃんと鬼ごっこしました!」

「右に同じ。左に居るけど」


「本気でやってどうするんですか! 子供達が泣いているじゃありませんか!」


 言われてみれば、私が早々に捕まえた子供達は、みんな俯いていた。


「ゆっくり追いかけて、わざと逃げられるくらいじゃないと駄目なんです!」


「そんな!? それじゃあ、いつまで経っても終わらないじゃないですか!」


「時間制限があるんですよ! 大半の子供達は逃げ切れるようにしてたんです!」


 あ、あらら。これは大失敗だったかな。


「甘い」


 そんな中、リジーはやっぱりリジーだった。


「園長先生、甘い」

「あ、甘いですって!?」

「こんなぬるま湯で育てられた子供達は、将来は世間の荒波に抗えなくなる」


 こ、こんな小さい頃から、世間慣れさせろと?


「うぐ、ひっく、せんせー」


 そんな中、私が一番最初に捕まえた子が、泣きながら職員室に入ってきた。


「どうしたの?」


「えんちょーせんせー、ぼく、ぼく……」

「うーん、悔しいのかなー」


 宥める園長先生を見ながら、再びリジーが。


「悔しいならば乗り越えろ」

「「……は?」」


 私と園長先生の視線を無視し、リジーが男の子の頭に手を置く。


「呪いは心の強さによって跳ね返せる。つまり、呪われたという事は、心が弱かった証」


 ……そうなの?


「鍛えよ、少年。強くなれ、少年。私は喜んで壁となろう」


 な、何を言ってるんだか。


「………………はいっ!」

「「えっ」」


 子供、乗った。


「ならば今から特訓。できるだけの事はしよう」

「はい! せんせー、よろしくおねがいします!」


 そう言ってリジーは男の子と隣の教室に籠もった。



 ……一週間後。


「……『呪われ斬』で呪縛」

 おろろ~~んん……

「くっ」「うっ」「わっ」


 再び呪縛で動けなくなる子達が居る中で。


「ぬぅぅぅ……はあ!」

 ぼふぅん!


 呪縛を打ち破った!?


「やったぜええ! リジーせんせーのじゅばくにかったー!」


 す、凄い……子供の成長って凄い……。


「よーし、これでにげきれるー!」


 だけど、やっぱり子供。


「『進脚』」

 ぱしっ

「あ」


 私に捕まってジ・エンドとなった。



「うぐ、ひっく、せんせー」


 ……このパターンは……。


「おねがい、しんきゃくっての、おしえて……」


 ……こうなるのかああ。


「抗え、少年。そして越えてみせよ」


 リジー! 煽るんじゃない!



 結果として、この託児所からは、呪いに異常な耐性を持った素早い子供達を沢山輩出する事になったのじゃが……全員軍に来んかのぅ。

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