表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

136/428

先生になった撲殺魔っ

「「「えんちょうせんせー! おはよーございます!」」」


「はぁい、おはようございます! 皆さんとってもお元気ねー!」


 な、何故……!


「そんな皆さんに、とっても素敵なお知らせがありまーす!」


「おー、なんだろー」

「どきどき」

「わくわく」


「それはですねぇ……新しい先生がいらっしゃいましたー!」


「「「わー、やったー!」」」


 わ、わたくしは、一体何故このような……!


「はーい、では皆さんでお呼びしましょう。園長先生と声を合わせて、大きな声で。いいですね?」

「「「はーい!」」」


 く……し、仕方ありませんわ! ここは覚悟を決めて……!


「では、せーの! リファリス先生ー!」

「「「リファリスせんせー!」」」


 じ、時間ですわ! 腹は括りました。さあ、この試練を乗り越えますわよ……!



「え、教会にですの?」

「にゃは。何か造ろうと思って」


 戦争が終わり、人々が再び平和な生活を取り戻し始めた頃、突然やって来たルディがそんな事を言ってきたのです。


「何か造るのは一向に構いませんが、そんなお金はこの教会には無くってよ?」


「にゃは~、そんなのは分かってるよ。元々ある建物を使うんだからそこまで費用はかからないし、お金はアタシが出すから」


 元々ある建物って……まさか。


「教会の空室を?」

「そう。無駄に広いからね、リファリスの教会……」


 ルディの仰る通り、わたくしが住む教会はとても広いです。実際、わたくしが生活の場で使用しているのは、全体の一割も満たしていないくらいなのですから。


「先程も言った通り、諸問題が解決できるのでしたら、わたくしは一向に構いませんわ」


「そう? なら良かった良かった。これでアタシも怒られないで済むよ、にゃは~♪」


 ……怒られる?


「どういう事ですの?」


「あー、うん。実はね、この教会に関しては、前から色々言われてて」


 ああ、成る程。


「当たり前です。だから言ったのです、立派すぎると」

「うっ」


 ルディは珍しく困り顔を晒していました。



 この聖リファリス礼拝堂はわたくしが聖女に認定された際に、わたくしが住まう場として建設されたわたくし専用の教会です。

 最初はやんわりとお断りしていたのですが。


「聖女が住まう場が無いのでは、我々の威信に傷が付く。ここはどうか大司教の私を立ててくれないだろうか」


 そうルドルフから説得をされまして、渋々受け入れたのです。


「但し、立派なのは御免ですわ。礼拝堂さえちゃんとしていれば、わたくしが最低限生活できる程度の広さがあれば」

「分かった。その辺りは我が半身に任せよう」


 ルディに任せる、と聞いた時点で嫌な予感がしていたのですが……。


「にゃは~、広さはバーンとこれくらいで」

「にゃは~、高さはこの町を見下ろせるくらい、バーンと、バーンと」

「にゃは~、礼拝堂はバーンと広くて、バーンと天井高めで」

「にゃは~、画家さんに壁画頼み込む♪ 窓はステンドグラス職人に頼み込む♪」


 ……わたくしが諸用で半年程離れていた隙に、ルディは私財を惜しげもなく注ぎ込み、計画も使用する土地も規模も際限無く膨らんでいき……。


「な、何ですの、これは!?」

「にゃ、にゃは~、やりすぎちゃった?」


 戻った時には、荘厳なお城を思わせる純白な巨大建造物が建っていたのです。


「こ、これのどこが質素なのですか!? これのどこにわたくしの要望が叶っているのですか!?」

「ニャハハハ…………ごめんなさい」



 結局わたくしは礼拝堂と、物置として使われる予定だった狭い部屋のみを使い、後は一切手をつけていません。


「あの時の公開撲殺はしんどかったなあ」

「当たり前です。あれでも加減しましたわよ」

「いやいや、五回は死んだからね!?」


 それ以来、ほぼ使われない九割の使い途については、散々議論を交わされていたようです。その間ルディはルドルフからも枢機卿様達からも、暴走した事を再三咎められていたようで。


「……これでアタシの苦行も一区切り。にゃは……」


 まあ、自業自得なのですが。


「しかしルディ。ほんの少しですが、役には立っていましたよ」

「え、何が?」

「町の観光名所にはなってましたわね」

「う……」

「それと、集合する目印にはうってつけでしたわね」

「うう……」

「それと、西日が遮られて涼しくなったと、裏のお婆ちゃんが」

「うわーーーーん! リファっちが苛めるぅぅぅ!」


 それはさておき、本題に戻りましょう。


「で、空いたスペースに何を造るつもりですの?」


「にゃは、それはね……託児所なのさっ」


 託児……所?


「何ですの、それは」


「え、託児所、分かんない?」


「子供を預かる場所なのは理解できます。しかし、何故その必要があるのか、理解に苦しみます」


 孤児院の方が良いのでは?


「……あー……リファっちには難しいか」


「?」


「あのさ、リファっちはこの教会ができてからずっと、あちこちの孤児を保護する活動を頑張ってたよね?」


 ええ。聖心教のシスターとしては、当然ですわ。


「その最初の孤児達は、今や子持ちなんだよ」


 時が過ぎるのは早いものです。


「そのお陰で、子供を昼間預けて外で働きたいって需要が急増しててね」


 成る程、働く女性を助ける為に必要なのですね。


「理解しましたわ。でしたら喜んで協力しますわ」


「本当に!? 良かったー、これで先生不足も解消されるぅ」


 ……はい?



 ……という訳で、冒頭に戻り。


「わ、わたくしがシスターリファリスでございます。よろしくお願いします」


 ……となったのです。ああ、主よ、これもわたくしへの試練なのですか?

リファリス、保育士に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=529740026&size=200 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[良い点] え?え?え?撲殺聖女リファリス様が託児所で保育士? ロード:バインバインでたゆんたゆんな紅月さんが? ま? [気になる点] 園児の生涯のトラウマにならなければ良いんだけど・・・ [一言] …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ