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解決と撲殺魔っ

「『彷徨える魂よ、再び肉体に戻れ』」


 全員撲殺してから、魔術で色々な物(・・・・)を綺麗に直し、辺りを漂っていた魂を戻して生き返らせます。


「…………ぅ……ふはっ!? はあ、はあ、はあああ、はあ」

「ゴホゴホゴホゴホ! ふぅーはぁ」

「あ、あれ? い、生きてる?」


「如何でしたか、死出の旅路から引き返してきた気分は」


「え……ひぃぃぃ!」

「だ、誰か助けてくれええっ!」


 涙ながらに逃げ出そうとしていた男達の目に、衛兵と似た格好をした部隊長様とリジーさんが映りました。


「あ、あんた、衛兵だろ!? あの殺人鬼をとっ捕まえてくれよ!」

「そ、そうだ! あいつが悪名高い連続殺人鬼・紅月だ!」


「……何故あの方が殺人鬼だと言えるんだい?」


「だ、だって、現に俺達は殺されたんだ!」

「そうだぜ! 俺以外にも目撃者は居る! だから早く捕まえてくれ!」


「そう言われてもねえ……」


 部隊長様は苦笑いしながら、わたくしをチラチラ見てきます。


「……あの、わたくしから貴方達に聞きますが」


「ひ、ひぃ!」

「ひ、人殺しぃぃ!」


「誰が死んでいますか?」


「だ、誰がって、俺達が……え?」


 泡を吹いて気絶している方もいらっしゃいますが、全員が生きています。


「こ、これは、シスターが魔術で俺達を生き返らせたから……あ、そうだ! あの杖で殴り殺してたから、杖に血が付着してるはずだ!」


 そう仰られても……。


「この聖女の杖の何処に血が着いてますの?」


 白い聖木に女神像が彫られている杖には、血どころか汚れてさえいません。


「な、何で……」

「あ、あれだけ血が飛び散ったんだから、何か痕跡は残ってる……はず……」


 部屋の中にも、肉片や骨の欠片も見当たりません。


「そ、そんな馬鹿な!」

「俺達は間違い無く殺されたんだ!」


「とは言っても、君達は生きていて、凶行が行われたという証拠が無いのではねぇ……」


 死体も無い、証拠も無い、では捕まえようがありませんわね。


「まあ、私としては、君達の方を捕まえるのが妥当だと思うが」


「な、何でだよ! 俺達が何をしたって言うんだよ!」

「そうだ! 俺達は真っ当に生きてるんだぜ!」


 真っ当、ですの。


「……どうしましょうか、シスター?」


「少しお待ち下さいね……貴方」

「は、はいぃ!?」

「自らの罪状を洗いざらい衛兵さんに話すつもりはありまして?」

「あ、あります! 全て話します! だからもうっ」


 はい、次の方。


「貴方は?」

「は、はい、俺も!」


「お、お前ら、裏切るつもりかよ!」


 わたくしを殺人鬼だと訴えた二人以外は、全ての罪を告白する事を誓約なさいました。


「さて、後は貴方達だけですが……どうなさいますか?」


「だ、だから何で俺達を捕まえるんだよ!」

「そうだ! 俺達を捕まえるんなら、この殺人鬼も捕まえろよ!」


 ……はぁぁぁ……仕方ありませんわね。


「部隊長様、宜しくて?」


「……分かりました。その二人以外は連行します」


 そう言って抗う二人を残し、部隊長様は引き上げて行かれました。


「リジーさんは?」


「私はその二人を連れて行く為に残ると思われ」


 そうですか…………ならば。


「まぁぁたわたくしに殺されたいだなんて、奇特な方々ですねぇぇぇぇぇ……」


「ひ、ひぃぃぃ!」

「お、おい! 見ただろ! こいつが紅月だ! 捕まえろ! 捕まえろよ!」


「あーあーあー、何も見えない聞こえないー」


「な、ふ、ふざけんな! 早く、早く捕まえ」

「『静寂なる壁よ』」

「…………」


 防音魔術によって、声すらも上げられなくなりました。さぁぁぁて……お楽しみの時間ですわよぉぉぉ♪


「まずはぁぁ、逃げられないように、足から♪」

 ブゥン! ボキャア!

「っっ!!」


 悲痛な表情を浮かべますが、声は全く響いてきません。


「右足と同じように、左足も潰しましょう♪」

 ブゥン! ゴシャア!

「っーーーーっ!!」


 凄まじい叫び声をあげているようですが、やはり防音魔術を破る事はできません。


「う~ん……声が聞こえないとつまらないですわね。少し防音の壁を広げましょう」


「…………ああああああ! いてええええええ!」


 あ、聞こえましたああ♪ 罪人が泣き叫ぶ、最高のオーケストラがああ!!


「まだまだ奏でて下さいねええ……次は腕ですわ♪」

「止め、止めてくれえええ!」

 ブゥン! ゴギャッ!

「ぎゃあああああああああああ!!」


 あはははは、最高の音ですわ、あはははははははははは!


「ですが、オーケストラは音が重なり合う事が真骨頂なのですから……」

「ひっ!」

「貴方も、音を奏でて下さいな♪」

 ブゥン! バキャア!

「ひぎゃあああああああああ!!」

「あはははは! 交差する罪人の悲鳴の二重奏! オーケストラには程遠いですが、最高に心地良いですわ! あははははははは!」


「も、もう止めてくれええ!」

「話す! 全部話すから!」


「あらぁ、楽章の途中で止まるオーケストラなんて、あり得なくてよぉ?」


「「ひぃぃぃ!」」


「最後の最後まで、ちゃあああんと奏でて下さいね。あはは、あはははは、あははははははは!」



「……リジーさん、もう宜しくてよ」


「え? ああ、終わった?」


「はい。あの二人も快く(・・)罪の告白をなさって下さいましたわ」


「快く……ねえ」


 わたくしの背後では、泡を吹いて白目を剥いた二人が横たわっていました。



 ノーラ一家を衛兵さん達にお預けして二日後、リジーさんが訪ねていらっしゃいました。


「シスター……いえ、リファリス、全て片付いたよ」


 あら。随分と早く解決しましたわね。


「ノーラ一家を足掛かりに、人身売買の闇組織を全て根絶やしにした」


「それはご苦労様でした。お茶は飲まれます?」


「うん、頂く」


 お客様用のカップにお茶を注ぎ、自分のコップには白湯を注ぎます。


「……で、奴隷印は?」


「全て押収した。あの二人に確認したから、間違い無いと思われ」


「あら、あの二人、そこまで協力されたんですのね」


「シスターを連れてくるって言うと、どんな事でも進んで協力してくれた」


「……わたくしを脅迫の材料にしないで下さいまし」


「まあまあ。お陰で早く解決したから」


 捕まっていた子供達も全員保護されたようですし、奴隷として売られた方々の追跡も順調だそうですし、わたくしの出る幕はもう無さそうですね。


「で、リファリス」


「はい?」


「例の、報酬♪」


 ああ、呪具ですわね。


「分かってますわ。ではこちらの部屋にいらして下さいな」

「はーい♪」


 やれやれ、呪具の何が良いのか、わたくしには分かりかねますわ。



 罪人の悲鳴をオーケストラに例えるシスターの方が、ワシには理解できんの。

シスターがちょっと笑えば、全ての罪人が黙り込む。そんかことわざが生まれたのは、この頃だとか。

できれば高評価・ブクマをお願いします。シスターが高らかに笑うエネルギー源になります。

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