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処刑人の撲殺魔っ

「では奴隷さん、ご主人様へのお別れは宜しいかしらぁぁぁ?」

「…………はい」


 名残惜しそうにアルフリーデをチラ見しますが、最後にはニッコリと笑ってわたくしに向かい合いました。


「ではいきますわよ」

「いやぁぁぁぁ! 止めてえええ!」


 リジー羽交い締めされて動けないアルフリーデは、涙を流しながら必死に叫んでいます。


「もう遅いですわ……天誅!」

 ブゥン! ボガッ!

「がふっ」

「天罰!」

 ブゥン! ガスッ!

「ぐうっ」

「滅殺! 抹殺! 撲殺!」

 ゴガッ! グチャ! ゴシャア!

 ……バシャアン


「いやああああああああああああああっ!!!!」


「あははははははははははは! 見ましたか、忠誠心溢れる真っ赤な花火! 砕け散った頭から広がった真っ赤な真っ赤な花火…………あはははははははは!」


「……リ……リファリスゥゥ……!」


「あら、何か言いたいのでしたら、ご自由にどうぞ。花火のご感想でしたら大歓迎ですわぁ♪」


「こ、殺してやる! 絶対に、殺してやるぅぅ!」


「あはははは! 魔王教の魔女と恐れられた貴女が、なんて情けない顔をしているんでしょうか! あはははは、あはははははははは!」


「殺す! 絶対に、絶対に殺してやる!」


「あは、でもね、アルフリーデ。そんな反抗的な態度が、まぁた犠牲者を出してしまうんですよぉぉぉ?」


 その一言を聞いたアルフリーデは、怒りによって赤く染めていた顔色を、今度は真っ青に塗り替えたのです。


「だ、駄目! も、もうこれ以上……!」

「あらぁぁ、一人だけ逝って、他の方々は助かるなんて、不公平にも程がありますわよねぇぇぇぇ」

「あああっ!?」


 返り血で真っ赤に染まった法衣に、紅い毛先が一層目立つ白い髪。

 そして、灯りを背にした事で黒く染まった顔に浮かぶ、三つの紅い三日月。


「さあ、続きを始めましょう……楽しい楽しい刑の執行(花火大会)の続きを! あはははははははははは!」


 ……アルフリーデの表情は、もはや生気すら伴っていませんでした。



「滅殺! 必殺! 撲殺!」

 ガゴグシャゴパァァン!

 ……ドシャア


「はい、これで最後の花火でしたぁ♪」


「……………………」


 叫ぶ元気も無くなったようで、アルフリーデは死人を思わせるくらいに無表情でした。


「それでは魔女様、貴女の代わりに忠誠心溢れる奴隷達が死んでくれましたので、無罪放免となりますよぅ♪」


「………………して」


「はぁい?」


「…………殺して」


「はぁぁい?」


「ウチも……殺して」


 何故に、そうなるのでしょうか?


「せっかく五人が文字通り命を懸けて、貴女を助けたんですよ?」


「……あの五人が居ない世界なんて、ウチが生きてる意味が無い……」


「ですからぁ、あの五人の犠牲を無駄に」

「あの娘達が居ないのなら、こんな世界に居る意味なんて一欠片も無いって言ってるの!」


 …………。


「リファリスには分からないかもしれないけど……あの五人を幸せにする事が、ウチの生き甲斐だった。それが叶わないのなら……」


「……あの五人は奴隷ですのよ? それは分かってますの?」


「分かってる! だからウチ直属の奴隷にしてたのよ!」


 ……いまいち理解できませんわね。


「五人には幸せになってほしかったのでしょう?」

「そう」

「なのに、幸せになりようがない奴隷という立場に置いているのですね」

「……そう」

「それが理解できません。さっぱり理解できませんわ」


 わたくしのコメントを聞いた途端、消えかけていた意思の炎が漆黒の瞳に燃え上がったのが分かりました。


「あんたに……何が分かるってのよ……!」


「何が分かる、とは?」


「魔王教内で奴隷に身を堕とした者達が、どれだけ救われない運命を辿るのか……!」


「…………」


「貴族が通る前を横切った子供。病気の母の薬代の為に夜遅くまで働いていた子供。両親の虐待に耐えかねて家出した子供。魔王様に敬称をつけ忘れた子供。怪我が原因で片足を少し引き摺る子供」


「…………」


「これがあんたが殺した奴隷の出自だよ。あんたが喜び勇んで、高笑いしながら撲殺したあの娘達の半生だよ!!」


「…………」


「一旦奴隷になっちゃうと、ほぼ平民には戻れない。どんな運命を辿るかは、買った主次第。生きるのも死ぬのも、ご主人様次第なの」


「…………」


「ウチはたまたま巡り会ったあの娘達を、あの娘達だけでも、幸せにしてあげたかった。魔女だなんて大層な二つ名があるくせに何もできないウチが、唯一できる償いだった」


「…………りなさい』」


「その償いの思いすら超え、大切な大切な存在となったあの娘達が居ない世界に、ウチが生きている意味なんてある筈が無い!」


「……だそうですわよ。愛されていますわね、貴女方は」

「「「「「魔女様……」」」」」


「…………………………へ?」


「わたくし、命を奪う以上に、命を戻す方が得意ですの」


「魔女様、そんなに私達の事を……」

「魔女様……貴女にお会いできて良かったです……」


「う、うあああああああああっ!」


 ツンデレ属性のアルフリーデには、これは地獄でしょうね。

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