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聖女様の閑話

 戦争は驚く程に短期間で終結したから、犠牲者は驚くくらい少なくて済んだ。


「あああ、ダーリン……戦死したと聞いていたのよ」

「おう、ハニー……聖女様が復活させてくれたのさ、ベイビー」


 犠牲者と言っても、あくまで一回以上死んだ人(・・・・・・・・)だけどね。実際はリファリスが軒並み蘇生させたので、死者は皆無だ。


「さあハニー、感謝の思いを込めて、これから聖女様の教会にお祈りに行こうじゃないか、ベイビー」

「ああダーリン、主に私達の永遠の愛を認めてもらいましょうよ」

「ああハニー、愛してるぜベイビー」

「ああダーリン、私もよ」


 ……つーかさ……後ろのバカップル、私と行き先が一緒な訳よね……!


「……鬱陶しい……」


「ダーリン、前を歩いてるシスターさん、がに股じゃない?」

「ハニー、がに股にはがに股の良さがあるのさ、多分ね」


 …………二人揃って主に直々に会わせてやろうかな。



「ようこそお出で下さいました」


「おお、聖女様が眩しいぜ、ハニー」

「ああ、聖女様が眩しいわ、ダーリン」


「……それとリブラ。苦々しい顔をして、どうかしましたか?」


「……何でも無い」


 ……?


「聖女様、私の大切なダーリンをお救い頂いて、本当に本当にありがとうございます」


「え? あ、いえ。主に仕える者として当然の行いですわ」


「ヘイ、聖女様、ハニーと再び引き合わせてくれて、とってもとっても感謝していますでベイビー」


「い、いますでベイビー?」


「聖女様……感謝の思いを、この唇に込めて」


 そう言うと男性はわたくしの手を取り、甲に口付けを……「おっと滑ったああ」

 ドズゥゥゥン!

「きゃ!?」

「うわあ!?」


「申し訳ござーませーん、うっかり手が滑ってー」


「ああああぶあぶ危ないじゃないかベイビー!」

「ダーリンに何かあったらどうするんですか!」


「…………お二人共、お祈りされるのでしたら、どうぞこちらへ」


「あ、そうだったベイビー、ハニーとの永遠の愛を誓うんだったよ」

「ダーリン、あんながに股女の事は忘れて、私達の未来を祈りましょう」


 そう言って礼拝に向かう二人を見送ってから、リブラを睨みます。


「もう少しで当たるところでしたわよ?」

「えー、だってー、こんなに脆い柱だとは思わなかったしー」


 リブラが倒したのは、主が奉られている祭壇の両脇に立てられた、飾り柱の片方でした。


「リブラ……」


「つーかさ、リファリス、結構嫌がってたでしょ」


「何を、ですか?」


 リブラは自分の手の甲を指し示します。


「あの挨拶よ。手を握られた瞬間、杖に手が伸びかけたでしょ?」


 ……………………よく見てますわね。


「わたくし、殿方に触られるのが基本的に苦手ですから」

「あー、やっぱりそうだったんだ。前々からそんな気はしてたんだ」


 あら、そんなに分かり易かったでしょうか。


「だって、男と女じゃ距離感がまるで違うじゃない」


「そう……なのですか?」


「そうよ。とは言っても、気付いてるのは私くらいだろうけど」


「……他の方にバレないように、気を付けなくてはなりませんわね」


「え、何で?」


「教会には男性も女性も同じくらいいらっしゃいます。選り好みだなんて以ての外ですわ」


「まあ……確かにそうなんだけどさあ」


 そんな事を話していると。


 バァン!

「「ぎぃあああああっ!!」」


 凄まじい悲鳴を上げながら、先程のお二人が礼拝堂から飛び出してきました。


「どうされたのです?」


「モ、モモモモンスターがああ!」

「デッカいぬいぐるみのモンスターがああ!」


 みゅううん


「「で、出たあああああっ!!」」


 そのまま這々の体で教会から飛び出して行かれました。


 みゅん?


 小首を傾げる巨大ぬいぐるみ……ファンシーベアのベアトリーチェが、礼拝堂から出てきたのです。成る程、ご対面してしまったのですね……。



「ベアトリーチェ、宜しいですか? 確かに貴女の見た目は可愛らしいです。ですが、それを全ての方が受け入れられる訳ではありませんわ」


 みゅうん……


「教会のお手伝いをしたい、と仰られましても……本来ならば貴女は町には居られないのですよ」


 みゅううん


「ええ、貴女がわたくしの役に立ちたいのは分かります。ですが」


「……何気にベアトリーチェと会話してるし」


「あら、気持ちが通じ合えば、言葉の壁なんて簡単に乗り越えられますわよ」


「いや、言葉の壁じゃなくて、種の壁なんだけど」


 ……? 何かおかしいでしょうか。


「それよりベアトリーチェに何かさせるんだったら、やっぱり力仕事でしょ。熊は熊なんだし」


 みゅうんっ!


 ベアトリーチェ、力こぶを見せなくていいですわよ。


「それか護衛よ、護衛。リジーよりか迫力も段違いじゃん」


 みゅうんっ!


 ですからベアトリーチェ、力こぶを見せなくていいですわ。


「……ん? 護衛? そうだわ、護衛だわ」


「リブラ?」



「おう、ここだな」

「ああ、間違い無い。巨乳でバインバインのシスターがいる教会!」


「いらっしゃいませ。教会にようこそお出で下さいました」


「おふ、マジでバインバイン……」

「これは想像以上に……」


 みゅううん!


「え、みゅううんって」


 みゅううん?


「「……ぎゃ、ぎぃあああああっ! 熊だあああああっ!!」」

 バヒュン!


「……ね、効果抜群でしょ?」

「確かに、良からぬ企みを抱くような方には、ベアトリーチェは覿面ですわね」


 みゅううんっ!


「ですからベアトリーチェ、力こぶは見せなくていいですわ。淑女のする事では無くってよ」

「淑女って……ベアトリーチェって雌!?」

「そうですわ」


明日から新章です。

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