表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

116/428

懺悔と蘇生と撲殺魔っ

「ああ主よわたくしは何という事をしてしまったのでしょう知り合いとはいえ肌を晒すような痴態をあああああっ聖職者にあるまじき破廉恥な行為をあああああっ」


「……何をブツブツ言っておるのじゃ、聖女殿は?」

「冷静になったんです」


「主よどうかお許し下さい罪無き者を沢山手に掛けてしまいましたあまつさえ獣さん達を食べるような下賤な真似をあああああっ聖職者としてあるまじき欲に駆られてあああああっ」


 みゅううんっ


「あああああっベアトリーチェ貴女にも多大な迷惑を掛けてしまいましたわ自然に生きている者を人間の勝手な思惑で愛玩しようとしているのですからでも貴女の毛はフッワフワで一緒に寝てみたいものですウフフフフフフあああああっわたくしったらまた欲望に駆られてあああああっ」

 みゅ~~ん


「ま、待つのじゃ。聖女殿はあの大熊を連れ帰るつもりなのか?」

「リファリスに言わせると、もう自然に帰せる状態では無くなってしまったとか」

「いやいやいやいや、それは無いと思うがの」


「それに主よわたくしはどうすれば宜しいのでしょうか」


「ま、まだ懺悔が続くのじゃな」

「一旦始まると長いです」


「リブラの事なのですが」


「え゛っ」

「ほほう、面白そうじゃのう」


「いくら寝所に侵入されて服の中に手を入れられたとはいえ友に杖を振り下ろしてしまい」


「っきゃあああああああっ!!」

「……リブラ侯爵夫人、何をしとるんじゃ」


「あまつさえ入浴中に押しかけてきて【ぴー】を【ぴぴー】してきたリブラを粉殺してしまいましたあああああっ罪深きわたくしは聖職者にあるまじきあああああっ」


「うっぎゃああああああっ!!」

「……リブラ侯爵夫人……同性でも許されぬ事があるのじゃぞ……」

 ……みゅううん?

「え、ベアトリーチェ? ちょ、何で急に」

 みゅううん!

 メキメキメキメキ!

「ぎぃああああああああああっ!!」

「……リブラ侯爵夫人、ワシはそこまで聖心教に熱心では無いがの……『己の悪行は己に返ってくる』という主の言葉は知っておるぞ」



 三日三晩に渡る懺悔を終えてから、再び罪滅ぼしに奔走致します。


「あああああっ主よお許し下さい……『意味無き戦いによって不幸にも命を落とされた方々に、再び生を謳歌する喜びを与えたまえ』」


 パアアア……


 ……ボコッ

 ザクザクッザザッ


「あ、あれ、確か、俺って死んだ筈じゃ……」

「確か邪教徒の女に殴られて……」


「では副団長、後はお願いします。わたくしは罪滅ぼし行脚を続けますので」

「分かりました…………囲め」


 ジャキジャキジャキィィン!


「うわっ!?」

「じゃ、邪教徒!?」


「魔国連合は敗退した。つまり、お前達は捕虜も同然の身だ。できればこのまま退いてくれないだろうか」


「く……殺せ! 邪教徒共に救われる命など無い!」

「そうだ! 我らは常に魔王様と共にある!」


「殺してもいいが、また生き返るぞ?」


「「……は?」」


「聖女様が『無意味な戦いの犠牲者なんて、一人も必要ありません』と仰りながら、敵味方関係無く蘇生して回っているのでな」


「そ、蘇生って……」

「そんな簡単なもんじゃ……」


「うちの聖女様はやってしまうんだよ。ほら」



「『迷える魂よ、再び生を謳歌しなさい』」

「…………っ……あ、あれ、俺は確か死んだ筈じゃ」



「マ、マジで生き返ってる……あいつは俺より先に死んでた筈だから」


「だから、だ。勝負は着いたんだ。一度死んだ者がもう一度死ぬ必要は無いだろう。だから、もう一度言おう。このまま退いてくれないだろうか」


「…………ま、まあ、せっかく助かった命だし」

「もう一回死にたいかって言われれば…………嫌だし」


「そうだろう。一度死ななければ分からないからな、この苦しみは」


「……あんたも死んだ事があるのか?」


「二回だね。正直、三回目があったら、そのまま本当に死にたいね」


「分かる。分かるよ」

「一回で充分だ。三回目なんて気が狂う……」


「そう考えると、命を懸けて戦うのも馬鹿馬鹿しくなってくるもんでね」


「……ああ。退くよ。俺も戦いたく無くなってきた」

「俺もだ」



 こうして、犠牲になった者を蟻一匹残さぬくらいに徹底的に復活させてから、シスターは戦場を後にしたのじゃ。


「まさか、本当に犠牲者を0にするとはのう」


「当たり前です。主は仰られました。『争う前に争う原因を無くすべし』と」


「まあ、道理じゃな。違う神を崇める者が分かり合えと言われても、それは土台無理な話じゃ。ならば住み分けできる仕組みを考えるべきなのじゃ」


「その通りですわ。ですが、それがどれだけ難しい事なのかは、聖心教と魔王教の争いの歴史が証明しているのでしょうね」


 そうじゃな……因果な生き物じゃよ、人間は。


 みゅううん

 ポンポンッ


「…………まさか〝獣王〟に肩を叩かれて慰められるとはのう」


 みゅううん!


「は?」


「え? 私は獣王では無い?」


 シスターが翻訳してくれておる……熊語も分かるのじゃな。


 みゅう、みゅううん


「え? 自分を倒したわたくしこそ〝獣王〟に相応しい? 待って下さいな、何故わたくしが〝獣王〟なのですかっ」


「……新しい肩書きが増えたのう」


「公爵様!?」


「聖女じゃろ、ロードじゃろ、自由騎士団(フリーダン)団長じゃろ、王女様のお姉様じゃろ、それに獣王。いやはや、豪華じゃのう」


「…………待って下さいな。フリーダン団長はまだ良いにしても、何故に王女様の件を知っているんですの?」


 あ、しもうた!


「公爵様……ご説明願いましょうか?」


「あは、あはは、あはははは……主よ、どうかお助け下されええっ!」



 ぎ、犠牲者は一名じゃったな……ぐふっ。

明日は閑話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=529740026&size=200 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ