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大変愉快な撲殺魔っ

「リ、リファリス! 来た、来たよ!」


 敵と小競り合いしながらも、砦を守り続けていたわたくし達の前に、地平線を埋め尽くす影が現れました。


「……魔国連合軍本隊、ついに到着ですか」


 こちらの援軍が到着するのが先か、微妙なところではありましたが……やはり敵の動きの方が迅速でしたわね。


「ど、どうすんのよ!? 獣達ももう半分くらいしか居ないし、人間に至っては私とリファリスだけだよ!?」


 そう言われたわたくしは、少し首を傾げました。


「リブラ、そんな筈はありませんわ」

「え、何で!?」

「この砦にはハイエルフのわたくしと、デュラハーンのリブラのみが居ますのよ。人間は居ませんわ」

「あーはいはい確かにそうですね私が間違ってたわね!」


 ……わたくし、何か間違った事を言いましたかしら?


「……敵兵を残しておけば良かったかしら」


 兵糧が乏しいので、余計な食い扶持を減らす為に、捕虜は早々に解放したのです。


「だから止めたでしょ!? 捕虜が居るだけで相手との交渉材料にもなったんだから!」

「リブラ、いくら敵兵と言えども、人の命を盾にしてはいけませんわ」

「配下の獣を突撃させたり食べたりするリファリスだけには言われたくないわ!」


 あら、犠牲になった獣さん達を、そのままにしておくつもりはありませんわ。


「では参ります。『わたくしの為に捧げて頂いた貴重な命、今こそ大地に戻る時』」


 パアアア……

 ……ザザザッ!


 亡くなって砦前に埋葬されていた獣さん達が、次々と復活していきます。


 ザクザク、ザザザザッ


 何も居なかった砦前が地平線に広がる影同様に、黒々と染まっていきます。


「これで敵と同数ですわ」

「ま、待って。倒した敵兵まで復活してるじゃない!」

「大丈夫ですわ。人間に限っては意思を奪ってありますから」

「は? 今、物凄い事をサラッと言わなかった?」


 そうですか? 回復魔術の応用で、脳の血流を少し構っただけですが。


「本能的な動きしかしませんから、獣さん達と一種に突進してくれますわ」

「……やっぱり聖女じゃないよ、リファリスは」


 あら、出逢った時から言っていたではありませんか。


「そうですわ。わたくし、聖女ではありませんわよ」



「と、砦前に突然何かが現れました!」

「何かとは何だ! そんな漠然とした報告は要らん!」

「も、申し訳ありません! そ、その……獣と人間との混成部隊……のようなものが!」

「…………は?」



「あら、敵の動きが止まりましたわね」

「そりゃそうでしょ。こんな変な混成部隊見たら、敵だって戸惑うって」


 そうかもしれませんわね。まともな絵面なのは、馬に跨がっている騎士姿のリブラくらいですもの。


「ではリブラ、軍の指揮は任せましたわよ」

「軍じゃなくて群れね。ま、言う事聞いてくれるんなら何とかなるでしょ、はは」


 ……リブラが自棄気味になっているような気がしますが……まあ、何とかなるでしょう。


「では征きますわよ! ベアトリーチェ、進みなさい!」

 みゅううん


 わたくしを背に乗せた状態ど、ベアトリーチェが猛然と走り始めます。


「リファリスに……獣王に続けえええっ!」

 アオオオオン!

 ギャッギャッ!

 キィィィ!


 リブラの号令に従って、様々な動物達の声が響きます。


「敵を蹂躙するのだ! 進めえええっ!」


 ドドドドドドドドドドドド!


「ふ……ふふふ……あはははははははは! 今回は心置きなく撲殺できますわ! 待ちきれない、待ちきれないですわぁぁ…………あはは、あはははは、あははははははははははははっ!」



「……先頭部隊、敵と接触…………あああっ!?」

「どうした?」

「せ、先頭部隊……次々に宙に舞っています!」

「……は?」

「せ、先頭の熊に乗った……シ、シスターが」

「………………は?」

「で、ですから、先頭の熊とシスターが、味方をぶっ飛ばしていまして、その度に宙に舞っておりまして」

「…………おい、冗談にしては非現実的だぞ」

「い、いえ……現実です」



「あははは! あっははははははははは!」

 ボガッ!

「ぎゃぴっ!」

 バガッ!

「ぐげぇっ」

 メキャ!

「ひ、ひぎぃぃ!?」


 次々と頭を砕かれた敵兵さん達が倒れていきます。


 みゅううん!

 メキメキボキィ!

「があああああああっ!?」


 ベアトリーチェも負けていません。文字通りに千切っては投げています。


「な、何なんだ、あのシスターは!? 嗤いながら殴り殺してぐぎゃ」

「あの熊もおかしいだろ!? あんな可愛い見た目で、人間を引き千切りがはっ」


 横から狼さん達が襲い掛かります。次々に馬から落とされ、騎兵隊の皆さんは大混乱です。


「た、助け、ぐがぁっ」

「死にたくないごぼぉ」


 狼さんの牙が敵兵さんの喉を噛み砕き、息の根を止めていきます。


「ベアトリーチェ、まだまだ撲殺できますわよ。貴女も楽しみなさいな」

 みゅううん!

「よしよし、可愛い子ですわね」


 白い法衣が、白い髪が、敵さんの血で赤く染まっていきます。


「さあぁぁ、次に快感(いのち)を捧げて下さるのは、何方なのかしらぁぁ…………あっはははははははははははっ!」


「ひ、ひぃぃ! だ、駄目だああ、逃げろおお!」

「バ、バケモンだ、ありゃあ!」


「ま、待て! 逃げるな! 戦え、戦うんだ!」


 崩れ始めた軍を留めるのは不可能。恐怖は次々に伝染していき、それは本格的な潰走へと移行していきます。


「ここで我々が退いたら、魔国連合を守る盾が失われるのだぞ!」

「あらぁ、とっくに失われてましてよ?」

「え?」


 目の前に現れたわたくしを見て、呆けた表情をした貴方。この軍の指揮官ですわね?


「どちらにしても、天誅!」

 バギャ!

「ひぐぇ!?」

「天罰!」

 ゴギャ!

「ぶぎぃ!?」

「滅殺! 抹殺! 撲殺!!」

 ガスンガスンゴシャア!

 ……ドシャア


「敵将討ち取りましたわ! あっはははははははは、あはははははははははははははは!」

シスター、感無量。

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