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みゅううんな獣王っ

「…………あれ、リファリスって」


「……何ですの?」


「肉、食べれたんだ」


「前にも言いませんでしたか? 教義的にも食べて問題はありませんが、あまり好きではなかっただけですわ」


「……あまり好きではない……ねえ。今食べてる肉、狼一匹分くらいの量はあるよね」


「ありますわね。当に狼さん一匹ですもの」


 先の戦いで負傷し、瀕死の状態だった狼さんを苦しまれないように逝かせて、調理したのが目の前の料理です。


「……いや、八割くらいリファリスが食べてるよね」


「そう言うリブラは、あまり食べませんわね」


「そりゃあ……ねえ」


 ……?


「言っちゃ悪いかとは思ってたけど…………リファリス、臭い」


 んなっ!?


「獣の匂いに汚れた法衣の匂いに…………それと、リファリス自身の体臭」


 なああっ!?


「中央山地を越えて来たんだから、それは仕方無いんだろうけど…………リファリス、お風呂入ってないよね?」


「……うぅ」


「それだけ強烈な匂いが漂ってるんだから……食欲も湧かないよ」


 バサァ!


「え、リファリス?」


「入浴して参ります! 洗濯して参ります!」


 ダダダダダダ……


「……いってらっしゃ~い」



 最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪ですわっ。


「まさかリブラにリブラにリブラに臭いだなんて言われるなんてっっ」


 お風呂を沸かす時間はありませんので、空の湯船に『聖水』を大量にぶち込み、それで徹底、徹底的に身体を洗浄しますっ。


「言われてみれば全身ネチャネチャで埃っぽくてあああああっ」


 ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシッ


「法衣も白い筈ですのにいつの間にか薄茶色になってあああああっ」


 ジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブッ


「髪の毛までネチャネチャギトギトあああああっ」


 グワシグワシグワシグワシグワシグワシッ


「洗い流す水まで少し汚れていますわねそうですわねわたくしそこまで汚れていてあああああっ」


 ガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシッ



「……お待たせしました」


 フワッ……


「うわぁ……リファリスの髪の毛が風に揺れてる……さっきまでベトベトでネチャアだったのに」

「言わないで下さいまし忘れて下さいましあああああっ死にたいぃあああああっもう死ぬしかっ」


 頭を抱えてうずくまるわたくしにベアトリーチェが近付き、肩をポンポンと叩いて下さいます。


「ベアトリーチェ、貴女…………」

 グルルッ

「…………臭い、ですわね」

 グオオ!?


「そりゃあ、獣の王様なんだし」


「臭いですわね……先程のわたくしより臭いですわね…………ベアトリーチェ!」

 ガゥ?

「付いて来なさい」


「リ、リファリス、まさか……」



「な、何て事ですの!? 汚れだけでは飽き足らず、ノミやらダニやらシラミやら! これは徹底的に洗わなくては、あああああっ」

 グガアアッ!?

「毛の間、毛の間から匂いが虫がっ! 毛玉がこんなに絡まって、あああああっ」

 ゴグアアアッ!?

「一旦洗い流しますわよ…………な、流した水が茶色いですわ、ネチャネチャですわ、ギトギトですわ、あああああっ」

 ギャアアアアッ!

「細かい虫は一気に片付けますわ。『殺虫』『殺菌』『清潔』、あああああっ」

 フギャアアアッ!



「べ、ベアトリーチェ、鳴き声が微妙に変化してるような……?」



「……よし、綺麗になりましたわね。ついでですから、伸びすぎた毛は切ってしまいましょう」

 ……みゅううん


「みゅううん!? 熊がみゅううん!?」


「お待たせしました」


 みゅうう


「べ、べ、ベアトリーチェ!? 何で〝獣王〟がそんなに可愛らしくなっちゃってるの!?」


「この子、どうやらファンシーベアの一種らしいですわ」



 ファンシーベアとはの、熊なのに妙に可愛らしい外見の熊の種じゃ。じゃが熊は熊、可愛いからと言って近付くと、一撃で仕留められるので要注意じゃ。



「ベアトリーチェ、すっかりわたくしに懐きましたわ」

 みゅううん


「く、熊がそこまで懐くなんて…………べ、ベアトリーチェ、よしよし」

 グガアアッ!

「ひゃい!?」


「あら、わたくし以外には触ってほしくないそうですわよ?」


「…………こ、殺されたくないから、もう触りません」


 わたくしだけに懐くなんて、可愛いですわね。


 みゅううん


「…………あら、また匂いが…………」

「ああ、ちょうど通った狼だね」


 お、狼……そうですわ、狼からも匂いがしますわ!


「ベアトリーチェ、狼を全員呼び寄せて下さいな」

 みゅううん…………グガアアッ!


 ……アォーーン!


 ……ドドドドドド!


「全部集まったようですわね。それでは、洗浄開始ですわ!」

 みゅうう!

「リブラも手伝いなさいな!」

「わ、私も!?」



 ジャブジャブゴシゴシギャインギャイングワシグワシギャンギャンギャンギャンガブッ「いてええっ!」バシャアバシャアウォッシュウォッシュウォッシュッ!



「……はい、終わりましたわ」

 くぅぅぅん


「う、うわ、狼達が子犬みたいに」


 きゅーん きゅーん


「か、可愛い……」


「あら、この狼さん達、どうやらファンシーウルフの一種でしたのね」



 ファンシーウルフとはの……まあ、ファンシーベアと似たようなもんじゃ。



「む……まだ匂いますわね。鳥さんですの? お猿さんですの? 鼠さんですの?」


「……これ……どんどんファンシー○○が増えていくだけなんじゃ……」


 くぅぅぅん きゅーん


「な、慰めてくれるんだ……あはは、狼達は私に懐いてくれたみたいね」



 ……それ以前に、籠城戦をしている雰囲気がまるで無いの。

ファンシーベアは、要はリアルリラッ○マ。

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