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獣の群れと撲殺魔っ

「…………なあ、リブラ侯爵夫人」


「はい?」


「何やら……鳥が多いと思わぬか?」


 鳥?


 バサバサ

 ピィ ピピピピピ

 クワーッ クワーッ

 ギャギャギャギャ!


「……確かに……鳥、多いですね」


 カラスやスズメみたいな普通によくいる鳥だけじゃなく、カンチュウツバメやユキワシみたいな珍しい鳥もいる。


「って、ユキワシが獲物になる鳥と一緒に飛んでる!?」

「……言われてみればそうじゃのう。む、イワワシもおるぞ」


 猛禽類が隊列を組んで飛行してる!?


「こ、これは……何か起きておるようじゃな。用心せねばなるまい」


 ……はあ。リファリスが来ないから攻め込めないし、鳥が沢山集まってくるし、一体何だってのよ……。



 ズズゥゥン……



 ……ん?


「今……地響きが……」

「む?」

「地響き、ですと?」


 ライオット公爵様と副団長さんが耳を澄ませる。



 ……ズズゥン……



「む、確かに聞こえるの」

「この方角は…………中央山地ですな」


 中央山地?


「ま、まさかリファ……聖女様の身に何か?」

「いや、そういう事は……」


 すると、その中央山地の方角から、一騎の馬影が近付いてきた。


「む、あれは伝令じゃの」


 伝令……まさか本当にリファリスの身に何かあったんじゃ!?


「公爵様、公爵様ああああああ!」


「あれはワシの配下じゃな。おそらく後詰めに置いていった部隊じゃろ」


「公爵様は居わすか!?」


「おう、ここじゃここじゃ。誰か、あの者をここまで連れて参れ」


 命を受けた騎士が二人、伝令に向かって馬を走らせる。


 ズズゥン……ズズズゥン……


 その合間にも、謎の震動は間隔が短くなっていく。


「はあ、はあ、こ、公爵様、良かった、間に合った……!」


 二人の騎士に連れられた伝令が、公爵様の前に跪く。一体何があったんだろう。


「ご苦労じゃったな。で、何用じゃ?」


「そ、それが……中央山地で」


 中央山地!?


「まさか、本当にリファリスに何か!?」


「え? あ、いえ、聖女様はご無事ですよ」


 へ?


「いえ、ご無事すぎて大変な事になっているのです!」


 は?


「詳しく話すのじゃ」

「は、はい、実は、聖女様が中央山地から……」


 ……ごくりっ。


「……中央山地から、数多くの手勢を連れてこちらに向かっているのです!」


 ……は?


「手勢? 援軍かの?」


「い、いえ、それが…………数多くの動物達を連れて……」


 …………どーぶつ?



 ギャッギャッ!

 ブルヒィィィン!


「イワワシさん、偵察ご苦労様です。どうでしたか?」


 クワーッ


「あら、やはり腐食砂漠を越えていったのですわね……もう宜しくてよ」


 クワーッ


 任務を終えたイワワシさんは、配下の鳥を連れて山へ飛び去っていきました。


「さて、大熊さんに狼さん、出番ですわよ」

 

 グルルッ

 アオーン!


 わたくしに貴重なお肉や毛皮を提供して下さった皆さん。何かと協力して下さって助かりますわ。


 ギャギャギャギャ!

 キキキキィ!


 あら、前に展開しているお猿さん達が喧嘩を始めたようですわね。


「喧嘩はお止めなさいな」

 キキキキィ!

 ギャギャ!

「止めて下さい」

 ギャギャ! 

 ギャアア!

「……まああた撲殺しても宜しいのかしら?」


 ビビクゥ!


 キィキィキィ!

 ウキキキキ!


 お猿さん達、涙目でわたくしに土下座してきました。


「はい、分かれば宜しいんですのよ」


 ギャインギャイン!

 グ、グルルル……


 ……何故大熊さんや狼さん達が、一斉にお腹を見せてきたのでしょうか。


「皆さん、先を急ぎますわよ」

 キキィ!

 グルルル!

 アオーン!

 ブヒィ!

 チュウウ!


 ……何故か猪さんやら鼠さんまで合流してきましたが……一体何故なのでしょうか?



「……あー……確かに近付いてますね」


 ……ドドドドドドドド……


 地平線を埋める黒い影……それはどんどんと広がっていきます。


「あれ、全部獣?」

「は、はい。熊とか、狼とか、狼とか、狼とか」


 狼ばっかなの?


「あ、猿に犬に雉に」


 オーガ退治で有名な勇者のお供?


「ああ、鼠に鼠に鼠に鼠に鼠に」

「う、うむ、分かった。もう良い」


 いや、あの数、私達の軍勢を遥かに超えてるよ?


 ドドドドドドドドドドッ!


「せ、先頭の大熊の背中に、誰か乗っています!」


 ……この状況下、あの人しかあり得ないでしょ。


「どのような外見じゃ?」


「え、えーっと、身体中に動物の毛皮を巻き…………あ、手に白い杖を握っています」


 白い杖。聖女の杖も、真っ白だった筈。


「それと……腰まで伸びた白い髪が。あ、毛先が赤いですね」


 リファリスも腰まで伸ばしてるし、毛先は赤い。


「そ、それと…………デカいっ」


 ……何がとは聞かないわ。


「そして、何より……笑ってます」


「笑ってる?」


「はい。目と口が三日月のように……紅く……紅く!」


 ああ、間違い無くリファリスだわ。



「あっははははは! 征きなさい征きなさい! 魔国連合の連中を、一人残らず踏み潰してあげましょう!」


 ドドドドドドドドドドッ!


 クワーッ!


「あら、イワワシさん……そうですか、もうすぐ腐食砂漠ですの…………でも心配は無用ですわ! わたくしが全て浄化してさしあげますわ!」


 ドドドドドドドドドドドドッ!


「例え殺されても心配無用ですわ! わたくしが責任もって生き返らせてみせましょう!」


 ドドドドドドドドドドドドドドッ!


「あら、リブラに副団長に……どこぞのお爺様! 先に征きますわよ、あっはははははは!」


 …………リファリス……何があったの?


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