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経済的な撲殺魔っ

「きょ、凶暴なところはリファリス様とソックリだと思われ……」


 こ、殺す気満々で撲ったのに……たんこぶができるだけですの?


「丈夫ですわね、貴女……」


「そんな感心のされ方、これっぽっちも嬉しくないと思われ!」


 ……と思われ、が口癖なのでしょうか……あ、それより重要な事がありましたわ。


「それより貴女、わたくしに協力して下さるのですわね?」


「うむ」


「……でしたら急いで探ってほしい事がありますの」


「話は聞いてる。奴隷印だね?」


「そうですわ。わたくしが指定した場所に潜入し、敵の有無を確認してもらいたいのです」


「それだけでいいの? ついでに全滅させてきてもいいけど」


「いえ、聞き出さねばならない事もありますので、何人かは生け捕りにしなくてはなりませんから」


「オケりました」


 お、おけ?


「だけどリファリス、何故に自ら動く?」


「はい?」


「普通のシスターは回復魔術で味方を癒やすのが役割。自ら前線には出ない」


「わたくし、前線に出た事はありませんわよ?」


「あ、えーっと、戦闘の前線って意味じゃなくて、色々な意味での前線と言うか、えーっと」


 ……ああ、そういう事ですの。


「つまりわたくし自身が動いて事件解決を図ろうとする事がおかしい、と言いたいんですのね?」


「そう、それ」


 リジーさんは言葉にするのが苦手なのですわね。


「でしたら問題ありませんわ。わたくし、いつも自分で動いておりますもの」


「いや、だから、それがおかしいと思われ。そういうのは衛兵に任せておけば」

「衛兵さんに何かあったら、大変ではありませんか」

「いやいや、何かあったとしても、それが衛兵の仕事だから」

「わたくし、衛兵さんに被害が出るのは耐えられませんの」

「…………うん。やっぱりリファリス様とは似ても似つかないわ、うん」


 ……わたくしにソックリだというリファリスについては、聞かずにおきます。


「それに、リジーさん。わたくしじゃないと対処できない事件も多くてよ?」


「いや、だから、シスターであるリファリスの身に何かあったら」

「あら、それは心配要りませんわ。こう見えてわたくし、この町では最強ですのよ?」


 そこまで言われたら何も言い返せないらしく、リジーさんは黙り込んでしまいました。



「『遠視・奴隷印・追尾』」


 魔術を用いて、鉄ゴテから追跡を試みます。


「隊長、あの魔術は?」

「奴隷印を刻み込める程の鉄ゴテなら、残留魔力が残っている可能性が高い。それを聖女様は追尾なさっているのだろう」


 長らくお待たせてしまった部隊長様には申し訳無い事をしてしまいました。


「成る程、リファ……聖女様の魔力は万のうがきょっ!」


 あ。


「せ、聖女様!? 何故急にリジーを!?」


 な、何故でしょうか。リジーさんが全てを言い終える前に、一撃(つっこみ)を入れたくなる衝動に駆られて。


「あ、あの、主よりの啓示です!」


 主よ、申し訳ございません!


「それより部隊長様、何度も何度も言っていますが、わたくしは聖女ではございませんので」

「は、はい……」


 では魔術の続きを。


「……大丈夫か、リジー?」


 部隊長の呼び掛けに反応は無さげでしたが、丈夫なリジーさんなら一二発は問題無いでしょう。


「……見えました」


 わたくしは事前に準備されていた地図に、ペンで印をしていきます。


「ほう、もう掴みましたか」


 部隊長様が覗き込み、わたくしが記した場所を確認していきます。


「ふむふむ、何処も彼処もノーラ一家の関係箇所ばかりですなぁ」


「ノーラ、一家ですの?」


「最近勢力を拡大している、隣町の傭兵崩れ共です。最近この町にもちょっかいを出してきてましてな」


 この町にちょっかいを、ねえ……。


「どのような犯罪に加担していますの?」


「主に薬物関連ですな。まあ、この町にシスターがいらっしゃる以上、麻薬では儲けられんでしょうなぁ」


 その通りですわ。


「でしたら、何故それを理解した上でこの町にちょっかいを?」


「まあ……何も知らないのか、シスターを侮っているのか……」


 成る程。


「そのノーラ一家さん、少ぉし痛い目に合わせて差し上げなくてはいけませんねぇ?」


 聖女の杖を手にし、歩き出し……。

「待って!」

「待って下さいぃ!」

 ……何故か二人に止められました。


「何故止めるんですの?」

「シスター、絶対に撲殺しに行くつもりだったでしょ!」

「ヤバい空気プンプンと思われ!」


 あら。


「お見通しでしたの?」


「分かりますよ! 私の時も(・・・・)そうだったでしょ!?」


 ああ、そうでしたわね。


「でしたら……シスターらしい方法で今回はいきましょう」



「アニキ、ヤクの搬送終わりやしたぜ」


「ご苦労……ふふふ、この町を薬漬けにするには充分な量だな」


「聖女だか何だか知りやせんが、タップリとオレ達の食い物にさせてもらいやしょう」


「ふふふ、儲かるな……だからヤクは止められな」

 バァン!

「アニキ! 大変だあ!」


「何だ何だ騒々しいなぁ」

「どうしたんだ」


「ま、窓の、窓の外を見て下せえ!」


「窓の外だぁ? 一体何が………………おい、何だあれ」

「光が……広がって……」


 パアアアアア……

「うわ、眩しい……!」



「……っち、何だったんだ、今のは……」


「ア、アニキィィィ!」


「五月蝿いな、今度は何だ!?」


「ヤ、ヤクが……」


「あん?」


「ヤクが……全部小麦粉になってやすぅぅ!」


「はあ? そんな訳あるかっ!」


「ちょ、な、舐めてみて下せえ!」


「んな馬鹿な……」

 ペロッ

「っ…………!!」


「マ、マジなんすよ! 全部全部小麦粉なんすよぉぉぉ!」


「ふ、ふざけんなあああ! 町に持ち込んだヤク、全財産注ぎ込んでるんだぞおおお!」



「……はい、終了しましたわ」


「あ、あの、シスター?」


「『毒物浄化』の魔術で、町全体を覆ったのです。これで麻薬も無害ですわ」


「そ、そんなアホな……」

「いや、このシスターならやる。肉体的にも、精神的にも、経済的にも撲殺するからな」

「……そう言えば部隊長も、シスターに?」

「まあ…………私は元アサシンでな……町に侵入した途端に撲殺された」

「……それで今は更正したと思われ?」

「まあ……そうなるかな」

部隊長さんも被害者の一人でした。

高評価・ブクマをお願いできれば、部隊長さんの苦労も報われますのでお願い致します。

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