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中央山地と撲殺魔っ

「ねえ、リファリス」

「はい?」


 旅の準備を整えていると、リジーがわたくしの部屋に現れました。


「荷物、沢山?」


「いえ、そこまでは必要ありませんわね。最低限のものを詰めていますわ」


「……そう」


 リジーはニンマリと笑い、わたくしの前で薄汚れた袋を広げました。


「……それは? 何やらうっすらと魔力めいたものを感じますが」


「ふっふっふ、これはね、超々々々ちょ超々便利なアイテムなのだよ、リファリー君」


 誰がリファリー君ですかっ。


「これはね、魔法の袋(アイテムバッグ)と言うのだよ」


「アイテムバッグ、ですの?」


「そうなのだよ、リファリー君」


「だから、誰がリファリーですのっ」


「で、だ。これが何なのか聞きたくないのかね」


「…………申し訳ありませんが、雑談している暇はありませんの。用件があるのでしたら手早くお願いします」


 そう言って纏めた荷物を持ち上げて。


 シュンッ


 持ち上げて…………あら?


「変ですわね、突然荷物が消えて……?」


「んっふっふっふ」


「……リジー、何をしましたの?」


 含み笑いを続けるリジーは、珍しく鎧を着用していません。


「んっふっふっふ、知りたい?」

「ええ、ええ。知りたいですわ知りたいですわ。ですから早く教えて下さいな」


 焦らしてくるリジーは、鎧を着用していない事が頭に無いようです。


「教えてほしいなら、それなりに誠意を見せてほしいかな~」


 誠意、ですのね。


「でしたら」


 薄着でしたのが災いしましたわね。


 ボグゥ!

「おぐぅふぉ!?」


 鳩尾がとっても狙い易いですわ。


「さて、この魔力は……空間魔術に似ていますわね」


 崩れ落ちたリジーから袋を拝借し、詳しく調べていますと……。


 バヂィ!


「っ!? これは……魔力波長照合ですわね」


 つまり、個人の魔力波長を登録する事で、他人が扱えないようにしているのです。指紋と同じように、魔力波長も個人個人で違いますから。


「……リジー、貴女の魔力が登録されてますのね?」

「うぐぅぅ! うげぇぇ!」


 まだお腹を押さえてゴロゴロしています。


「そんなに強く殴ってませんわよ?」

「うげぇぇ! うごぉぉ!」


 ……わざと、ですわね。


「でしたら……」


 転げ回る度に揺れる二つの双丘の先が、薄着でくっきりと表れています。その片方を、こう。


 キュッ

「はあああああああんっ!!」

「ふひっ!?」


 海老反りになって反応するリジーに、やったわたくしまで驚かされました。


「な、な、何をするかっ!!」

「で、ですから、何度も呼んでいるではありませんか!」

「……ふんっ!」


 リジーはわたくしから袋を奪うと、中に手を突っ込み。


 ブワッ ジャキジャキガチャアン!


 一瞬で真っ黒い全身鎧で身を包んでしまいました。


「リ、リジー?」

「もうリファリスの前では、薄着にならないと思われ!」


 べ、別に構いませんけど……。


「それより、その袋は何なんですの?」


「…………これはあらゆる物を詰め込める、魔法の袋」


 魔法の、袋。


「つまり、空間魔術を応用して作られた、簡易的なアイテムボックスのようなものですわね?」


「そう!」


 アイテムボックスは失われた技術。もしもリジーが言う事が本当でしたら、この袋はとんでもない代物ですわ。


「……で、それがどうかしまして?」


「え…………す、凄いと思わない?」


「ええ、凄いですわね……で?」


「え、あ、いや、その、何だったら、向こうまで荷物持ちしようかって」

「あら、助かりますわ。でしたらもう少し多めでも大丈夫ですわね」


 長旅ではありませんが、必要最低限に絞っていましたので、できれば着替えはもう少し欲しいところでしたの。


「う、うん、どんどん預けちゃって」

「ええ、どんどん預けますわ」


 助かりますわ。


「…………ふっふっふ、これでリファリスに同行する理由ができたと思われ」


「はい? 何か仰いまして?」


「何でも無い無い、な無い無い」


 ……?



 そして、翌日。


「では後はお願いしますわ、ラブリさん」

「はい、お任せ下さい……それと聖女様、最終確認ですが」

「……何度も言いますが、リブラとは別行動ですわよ」


 何度も確認されますので、最後まで聞かれる前に返答できてしまいます。


「そうですか、それを聞いて安心しました……リジー」

「うむ、任されよ」

「うん、頑張って」

「「うん」」


 何を頑張るつもりなのでしょうか?


「では出発します!」


「あ、はい……ではラブリさん、行って参ります」

「ラブリ、バイバイ」


「はい、お気を付けて。御武運をお祈りしております」



 ……そして、馬車に揺られて三時間後。


「着きましたわ」

「…………え?」


 中央山地の麓にある、小さな村にある祠。それが今回の目的地です。


「では順番に行きます。まずは先見隊から!」


「……?」

「あら、リジーは知りませんでしたか? この村には、中央山地の反対側へ抜けられる『遠出の回廊』が設置されているのです」


「と、遠出の、回廊?」


「ええ。空間魔術の一種で、遠い場所へ一瞬で移動できるのです」


「…………何よ、そのオーバーテクノロジー」


「貴女の持っているアイテムバッグと同じですわよ。ですが『遠出の回廊』は決まった場所にしか移動できないという欠点はありますが」


「いやいや、何処にでも移動できるんだったら、戦争する必要ナッシング」


 確かにそうですわね。


「次は聖女様!」


「あら、わたくし達の出番ですわね」

「うい」


「後がつかえてますので、お急ぎ下さい」


「はい、分かりましたわ……ではリジー、行きますわよ」

「うい」


「では行きます……主の祝福(・・)を、今ここに!」

「……え゛」



 パアアアア……



「……さて、着きましたわ……あら、リジー? リジーは何処ですの?」

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