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邪な撲殺魔っ

100話目突入。まだまだビキ殺には及びませんが、これからもよろしくお願いします。

 警備隊が到着する頃には、屋敷内の怪しい者は全て捕らえました。


「せ、聖女様、それは事実なのですか?」


「わたくしも最初はまさかと思いましたが……ご本人にお聞きになって下さい」


「ご本人とは……まさかブランドール会長にですか!?」


「ええ……向こうで神に祈ってますわよ…………いえ、神ではなく王でしょうか」


「え、王?」


 そう警備兵さんを促すと同時に、わたくしもブランドール様の譫言に耳を傾けました。



「おお、我らが偉大なる魔の王よ、生を貪りし下賤な輩に懲罰を加えたまえ……」



「あ、あれは……魔王教の!?」


「はい、どうやらブランドール様は魔王教を信仰していらっしゃるようですわね」


「そ、そんな!? 毎週毎週お祈りを欠かさず、しかも教会に対して多額の寄付を行っていたのに!?」


「……それはわたくしも聞いてみたのですが……言葉は悪いですが、胸糞悪くなりましたわ」


「え、胸糞って……」


「……どこを見ていらっしゃるんですの?」


「え、あ、い、いえ、失礼しました!」


 ……こういう時ほど、無意味に大きいものに対して、腹立たしい気分になります。


「はあぁぁ……まあいいですわ」


「た、大変申し訳ありませんでした……で、その……」


「ああ、ブランドール様でしたわね。あの方は毎週お祈りに来ているように見せかけて、毎週教会内を穢していたのですわ」


「け、穢す?」


「……主の居わす台座に唾を吐きかけたり、教会内に汚物を撒き散らしたり……」


「なっ!?」


「毎朝の習慣で、礼拝堂内部を丸ごと浄化していましたのて、皆様の目に触れる事はありませんでしたが」


「な、何と罰当たりな……! あ、で、ですが、多額の寄付に関しては……?」


 ああ、それはですね……。


「……ブランドール様は……いえ、ブランドールは、教会への寄付に、奴隷売買によって得たお金を当てていたのです」


「なっ!?」


 つまり、ブランドールによって寄付された穢れたお金によって、様々な奉仕や救済が行われていたのです。


「く……き、貴様ぁぁ! 主への冒涜は許されんぞ!」


 熱心な聖心教徒であられる警備兵さんは、ブランドールの襟首を掴んで怒鳴りつけます。


「ヒ、ヒヒヒ、ヒャハハハハハ!」


 するとブランドールは、狂ったように笑い始めたのです。


「ヒャハハハハハ! ざまあみろ! 邪神なんぞを敬うような邪教徒には、あの穢れた礼拝堂がお似合いだよ……ヒャッハハハハハハ!」


「き、貴様……貴様あああ!」

 ガッ!


 我慢できなくなった警備兵さんがブランドールを殴り倒しますが、狂気の笑いは止まりません。


「ヒャッハハハハハハハハハ! 傑作だ、傑作だあ! ヒャッハハハハハハ!」


「お待ち下さい。穢れた礼拝堂と仰いましたか?」


「そうだ。礼拝堂の修繕費用も俺が出してやっただろう? あれはお前らが禁じている奴隷売買で得た金なんだぜ」


「…………」


「聖女だなんてもてはやされてる勘違い女には、穢れた礼拝堂がお似合いだぜ……ヒャハハハハハ!」


 ……ふ……ふふふ。


「……ふふふふ……あは、あははは、あはははははは!」


「シ、シスター?」

「何だ何だ? ついに狂いやがったか?」


「あはははははは! お、可笑しいったらありゃしない……あはははははは!」


「な、何がだよ。自分自身が滑稽だってのか?」


 お、お腹が痛い……! わ、笑えますわ……!


「あははは、あはははははは! あ、貴方、自分がした事が……分かっていらっしゃらないのですね!」


「は、はあ? 何がだよ?」


 はあ、はあ、あ~、可笑しかったですわ……。


「……ふふ、貴方が礼拝堂の修繕費を寄付して下さいましたのは、いつでしたかしら?」


「そ、そりゃあ、去年の秋頃だったな」


「それから、礼拝堂は修繕されましたか?」


 それを聞いていらした警備兵さんが、首を横に振られます。


「修繕しようにも、大工の親方が怪我をしてしまい、ずっと延び延びになっていますね」


「その通りですわ。まだ修繕する前、設計の段階にすら至っていません」


「……だから、何だってんだ」


「つまり貴方が仰る『穢れたお金』は、まだ使われてませんわ」


「だ、だから何だってんだよ!」


「無論、使い道を変更させて頂きますわ。他の皆様にお窺いを立ててからにはなりますが、おそらく何方も反対なさいません」


「な、何に使うつもりだ?」


 わたくしは極上の紅い笑みを、ブランドールに向けました。


「それは勿論…………貴方のお仲間を駆逐する為の費用の足しにして頂くのですわ」


 つまり、貴方が必死になって稼いだお金で、貴方のお仲間が倒されていくのですわ!


「な……!」


「あー、滑稽ですわ! 敵に弓引く為にばら撒いたお金が、自らの首を絞める結果になるんですわわ。これが可笑しくなくて、何が可笑しいんでしょうね……あはははははは!」


「や、止めろ! 同志を傷付けるような真似は、絶対に許さんぞ!」


「あはははははは! その体たらくで、どのように許さないんですの? 止められますの? 妨害できますのぉぉ?」


「く、糞があああ!」


「という訳ですから、早速手続きを開始しましょう」

「はい、喜んで!」


 警備兵さんも溜飲が下がった様子で、ニヤニヤしながら敬礼されます。


「さああ、貴方様は、汚い牢屋の中で、同志とやらが駆逐されていくのを見ていなさいいい……あはははははは!」


「ち、畜生! 畜生があああ!」


 あはははははは、撲殺するより面白いですわ、あっはははははははははははは!

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[一言] もう100話突破ですか? 早いですね? 羨ましいです。
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